広州:全てに繋がるイノベーション発展ロードマップ
2020年3月26日 葉青(科技日報記者)
科学的発見の土壌を作り、エコサイクルの最適化を促進
広東省広州から連日、テクノロジーをめぐるグッドニュースが続々と届いている。
中山大学広州スーパーコンピュータセンターは関連する研究チームと共同で新型コロナウイルスをめぐるドラッグリポジショニング(既存薬再開発)に関して、「スーパーコンピュータ『天河二号(TH-2)』を使って、既存の治療薬のシミュレーションと選別を行い、新型コロナウイルス治療に有効な可能性のある複数の治療薬を発見し、これまでに報道されていない6種類を含む30種類の治療薬をまとめた」と発表した。また、ここ1週間で、広州の企業2社が新興ハイテク企業向け株式市場「科創板」に上場した。これで、同市場に上場する広州の企業は5社となった。
広州のイノベーション発展を見ると、既存の都市に新たな活力を注ぎ込むべく、「科学的発見―技術発明―産業発展―エコサイクルの最適化」というフルチェーンのイノベーション発展のロードマップを構築しているところだ。
科学的発見の土壌を作り、広州のイノベーションの遺伝子を強化
春節(旧正月、2020年は1月25日)前、「天河二号」スーパーコンピュータセンターのサポートの下、中国の学者が、5億年前の地球の種の進化の秘密を発見した。
「天河二号」スーパーコンピュータセンターは、広州が科学的発見の土壌を作り、基礎研究やコア技術のブレイクスルーに焦点を合わせるまさに縮図のような存在だ。2019年以来、広州は系統的に重大テクノロジーインフラを配置し、ピラミッド形の実験室体系の構築に取り組み、基礎研究とその応用を全面的に強化している。
2019年9月、産業団地・南沙科学城の建設が正式に始まり、中心エリアの中国科学院明珠サイエンスパークの第一陣プロジェクトの建設も始まった。総合性国家科学センターの集中受け入れエリア、先行始動エリアの構築を目指している。
スーパーコンピュータ、海洋、メタンハイドレート、生命などの分野をめぐり、広州は世界最先端の重大科学技術インフラ群構築に力を注いでおり、ハイレベルの科学研究機関の建設が始まっている。
2019年、広州は「広州市の基礎および応用基礎研究強化実施案」を打ち出した。毎年8,000万元(約12.4億円)を投じて、広東省基礎および応用基礎研究基金広州市聯合基金を設立し、共同で広東省・香港地区・マカオ地区の基礎および応用基礎研究をサポートする。
また、広州はテクノロジー成果の実用化を積極的に推進し、技術発明を新たな高みへと導いているほか、中山大学や華南理工大学、大学城(学園都市)周辺の開放式科学技術研究成果実用化の拠点の建設を推進し、大学、科学研究機関の科学技術研究成果が広州の地元で実用化されるように促進している。
産業発展の原動力を蓄積し「広州スピード」を実現
広州で上場企業が続々と登場していることは、その肥沃な産業の沃土と密接な関係がある。
広州は、ハイレベル人材企業やハイテク企業、IAB(Information Technology〔情報技術〕、Artificial Intelligent〔人工智能〕、Biopharmaceutical〔生物医薬〕)などの戦略新興産業、優良民営企業を基礎とし、上場企業の育成の手を、ビジネス・インキュベーター、権限委譲、さらに、上場のための各部分のサポート、上場後の発展にまで伸ばし、「上場企業育成」全過程の追跡サービスを構築している。
中小企業がいかに大きな仕事をやり遂げることができるかが、2019年の広州の科学技術イノベーションのカギだった。
そのために、広州はテクノロジーと経済の深い融合を促進し、産業発展のために新たな原動力を蓄積した。また、「科学技術イノベーション12条」を打ち出し、中国国内市場に投じられ、コア知的財産権を有しているものの、市場における競争力に欠ける重大イノベーション製品の購入を強化し、企業のイノベーションを奨励した。
2019年以来、広州市の中小民営企業は活力が増し、規模が急速に拡大している。1~9月期、同市の民営経済の付加価値額は前年同期比7.1%増の7,000億元(約10.9兆円)を超え、同市のGDPの約4割に迫った。中国内外の経済動向が複雑化する中、広州の中小民営企業は、勇気をもって前進し、チャレンジしており、その闘志が発展の活力となっている。例えば、広州明珞汽車装備有限公司はドイツに支社を設立し、「4大ロボットメーカー」と同じ土俵で戦っている。禾信儀器公司は、中国の質量分析装置業界において、生産・販売量1位、世界に目を向けてもトップ10に入っており、技術革新の「陰のチャンピオン」となっている。
広州明珞汽車装備有限公司の新エネ車の溶接自動生産ライン(画像提供:広州明珞汽車装備有限公司)
イノベーション主導の下、市場は活力に溢れている。広州のハイテク企業の数は3年連続で急増しており、年間平均88.5%のペースで増加、全体で5倍増という、「広州スピード」を実現した。
エコサイクルの最適化を推進し、科学研究の活力を刺激
「千年商都」と呼ばれる広州の新たな活力を、どのように呼び起せばよいのだろう?広州は昨年、「広州市の科学技術イノベーション促進をさらに加速するための政策・措置」、「広州市の科学技術イノベーション先進都市建設3年行動計画(2019--21年)」などを続々と打ち出し、科学技術イノベーション先進都市を作るために実際の行動を起こしている。
制度の制約を打ち払い、科学研究の活力を呼び起こす。広州は大胆に先頭を切って行動し、チャレンジし、一連のイノベーション政策を打ち出して、科学研究資金のクロスボーダーダイレクト支給を他に先駆けて実現し、中国全土で初めて、科学技術研究経費使用の「ネガティブリスト」を作成した。
制度改革を実施すると同時に、広州は、「創(創新)、投(投資)、貸(貸付)、融(融資)」などのテクノロジー金融手段を通して、粤港澳大湾区(広州、仏山、肇慶、深圳、東莞、恵州、珠海、中山、江門の9市と香港、マカオ両特別行政区によって構成される都市クラスター)金融サービスなどのプラットフォームを構築し、テクノロジー企業に資金的サポートを提供している。
近年、広州市科技局は、同市のテクノロジー型中小企業の技術革新をテーマにしたプロジェクトと、中国イノベーション・起業コンテスト(広州エリア)を深く融合させ、コンテストの審査を従来のテクノロジープロジェクトの専門家審査の代わりにし、「競馬場でサラブレッドを探す」という市場化審査メカニズムを採用している。
イノベーションのメカニズムが成果の産出を促進している。2019年第8回中国イノベーション起業コンテストで、広州から2つのプロジェクトが全国一等賞を受賞し、過去最高の成績を収めた。
現時点で、広州市のテクノロジー型中小企業信用貸付リスク損失補償資金プールに登録する銀行は23行で、同市のテクノロジー企業約1,400社に、196億元(約)3億円以上の借款を供与し、実際に約123億元(約1,900億円)を融資している。
※本稿は、科技日報「広州構建全鏈条創新発展路径」(2020年2月27日付6面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。