第162号
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教育部・科技部「SCI論文を評価の目安にしない」方針を通知

2020年3月17日 張盖倫(科技日報記者)

 先日、ある重要文書が大学や学術界で拡散された。

 それは、教育部(省)と科学技術部が印刷・配布した「高等教育機関のSCI論文関連指標使用規範化と正しい評価ガイドライン確立に関する若干の意見」である。この文書は論文の「SCI至上主義」を排除することを求め、またそれを突破口として、的を絞った、実施可能性の高い、実際的で絶対的な措置を打ち出し、「論文至上主義」を排除し、正確な評価ガイドラインを確立することを求めている。

「排除」の後には「確立」が必要、同業者評価と分類別評価を重視

 SCIとは、米国が創始したサイエンス・サイテーション・インデックスで、本来は分類データベースだったが、一気に学術界から祭り上げられた。大学の科学研究活動においてSCI論文と関連指標を過度に追求する現象がみられるようになった。

 教育部科学技術司の関係者は、「SCIの本質は文献の索引システムであり、評価システムではない。SCI論文関連指標を科学研究の評価に直接用いるには限界がある。SCI論文を単純にハイレベルな論文とみなすことはできず、SCI論文の引用数を革新レベルや実質的貢献と対応させることもできない。しかも、SCI論文関連指標は、技術革新や成果の実用化といった活動の評価には適していない」と指摘している。

 当然ながら、「SCI至上主義」を排除するカギは「破(排除)」ではなく、どのようにして「立(確立)」するかである。学術レベルの科学的な評価は複雑な問題であり、総合評価が必要とされる。

 同文書は、健全な分類評価体系を確立し、学術界の同業評価を整備し、審査評価作業を規範化する必要があると指摘している。

 異なるカテゴリーの科学研究は、成果の産出形式も異なっており、評価の上で「ばっさりと分断」されている問題を解決する必要がある。論文だけを見るのではいけないのと同じく、まったく論文を見ないのもいけない。同業者評価は科学研究評価で通常取られる方法であり、そのカギは同業の専門家の役割を本当の意味で発揮することにある。審査においては、専門家が単純にSCI論文関連指標をもって専門的判断に替えるのではなく、責任ある態度で専門的な評価意見を提供するよう導き、審査専門家評価信用制度を構築するよう呼びかける必要がある。

 北京大学情報科学技術学院研究員の袁暁如氏は取材に対し、「科学技術評価で最も重要なのは、科学技術活動の個性を知り、学科の特性を尊重することだ。真にオープンで公正な同業者評価体系を構築し、その分野の専門家を信頼し、学術議論も奨励するべきだ。革新性と牽引性のある成果を本当の意味で掘り起こすには、戦略的な視点を持つ専門家が必要であり、清く正しい同業者評定環境を作ることが求められる」と指摘した。

多くの人事考査がSCIとリンク

 SCIがすべてを指揮するタクトのような存在になった場合、大学や研究者はそれに振り回され、SCIを中心とする「ランキングゲーム」に毎回参加せざるを得なくなる。そのため、同文書はSCI論文の使用について、してはならないことを記した「ネガティブリスト」を打ち出した。

 学科を評価するうえで、学科や学校のランキング評価を減らし、分類と分野別の評価を維持する。評価の過程においては革新の質と実際の貢献を際立たせ、SCI論文数などの定量化指標の使用は慎重に行い、同時に社会機関が科学的な大学評価ランキングを行うよう導く。

 職員の評価では、職称(職務)査定・採用評価において、分類ごとの評価指標体系を構築し、その人物が職務に適しているかを重点的に評価し、SCI論文関連指標を職称(職務)査定・採用評価の直接的な根拠や採用の前提条件にしない。

 このほか、学校も学部や個人に対し論文指標に関する要求を設けるべきではなく、SCI論文関連指標と資源配置、実績インセンティブの直接的なリンクをやめる。また、学校もSCI論文数と影響要因などの指標を学生の卒業や学位授与の限定的条件として設定するべきではない。

「大学・専門学校とその主管当局は学術文化醸成の責任を担わなければならず、自信と信念を持つべきで、対外的にもSCI論文関連指標を中心に据えて作成したランキングなどの情報を用いたり、発表したりしてはならない」と前出の教育部科学技術司の関連責任者は強調した。

 上海財経大学常務副校長の徐飛氏は以前取材に応じた際に、「科学研究は非常に厳粛なもので、現実的で実務的なことを多くやり、虚栄心を満たすことや自己満足のための行為は控えなければならない。学校や学者、校長たちは落ち着いて、ゆったりと構えているべきだ」と語った。


※本稿は、科技日報「教育部科技部発文:不把SCI論文作為評価標簽」(2020年2月24日付4面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。