第165号
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「麒麟」に百億投資、独自開発OSの発展に大きなチャンス到来か

2020年6月17日 李艶(科技日報記者)

 オペレーティングシステム(OS)はコンピューターの大脳だとされている。情報技術(IT)の急速な発展にともない、OSの重要性と地位はますます顕著になっている。しかし残念なことに、中国のOS企業はおしなべて小さく、分散し、脆弱な局面にあり、関連ソフト・ハードウェアのエコシステムが分散し、1つのまとまった力を形成することができていない。業界は統一された技術体系とエコシステムを備えた国産独自OSを作り出し、CPUのアーキテクチャ―体系の差異の発生を防ぎ、整った応用環境を作り上げ、ユーザーにより良い体験を提供する必要に迫られている。

 3月20日、工業情報化部、天津市、国防科技大学、中国電子の4ヶ所で、麒麟軟件の「遨天」計画が発表された。これは、今年の年初めに中国電子が先頭に立って傘下の中標麒麟と銀河麒麟を統合し、国産OS研究開発に専門に従事する麒麟軟件を立ち上げたのに続いて、中国がOS分野で行った大きな動きとなった。

 今後、麒麟軟件は百億元級の資金投入を実現し、5年間で1万人以上の独自OSエリートを育成してチームを作り上げ、OS技術の収れんと戦略配置を推進し、戦略的サポート力と世界的競争力を備えた独自OSの発展体系の形成を加速する計画だ。

 中国工程院院士の倪光南氏は発表会で、「サイバーセキュリティーがなければ国家の安全保障はない。独自開発はサイバーセキュリティーを実現する前提であり、必要条件だ」と述べた。倪氏は国産OS独自開発の発展プロセスを「使えない」と「使える」、「使い勝手が良い」の3段階に分け、「国産ソフト・ハードウェアの急速な発展にともない、国産品の各性能指標と輸入製品との差はますます縮まっている」とした。

 ソフトウェア専門家で独自OSの長期的推進者でもある倪氏は、「安全で制御可能な国産IT体系構築のプロセスにおいて、OSはソフトウェアの魂であり、大国にとっての重要プロジェクトだ」と強調した。倪氏は麒麟軟件に厚い期待を寄せており、「麒麟軟件は専門的なOS企業であり、中国で唯一国家科学技術進歩一等賞を受賞した基礎ソフトウェア企業で、OS開発において30年を超える奮闘の歴史がある。同社を信頼するべきだ」と述べた。

 安全かつ先進的で、運用しやすく実用的な国産OSを作り上げ、OS分野の飛躍的革新・発展を実現することは、中国の何世代にもわたるソフトウェアに従事する者の願いであり、奮闘目標だった。中国電子副総経理で党組織メンバーの陳錫明氏は、中国の情報産業発展を自身が経験し、またそれに参画してきた。陳氏は取材に対し、「『遨天』計画は主に内在的安全性、モバイル融合、体験重視、サポート体系の4点を特色としている。トラステッドコンピューティング3.0をベースに、内蔵式アクティブディフェンス技術を突破した一方で、5G時代のニーズを十分に満たし、マルチエンドな融合を実現し、モバイルオフィスやモバイルビジネスなどますます普及する応用シーンに適応している。また、ユーザーの特殊ニーズに合わせて、カスタムメイドサービスも提供する。さらに重要なのは、麒麟独自OSが主流ソフト・ハードウェアとの互換性を持ち、製品が豊富で、機能が完備され、性能が強い独自コンピューター・エコシステムを形成している点だ」と語った。

 これに基づき、「遨天」計画は今後主に、デスクトップ・サーバーOS、クラウド用OS、組み込み式OSの三大シリーズ製品を打ち出していく。これは現在の「高度化、再構築」のニーズに配慮しただけでなく、IoE(Internet of Everything)、新型インフラ建設など最先端の方向性に対してもサポートを提供することが可能だ。陳氏は、「麒麟ソフトウェアの努力を通して、OSの技術と性能のレベルが高まり、適合後はハードウェアとソフトウェアの能力がさらに存分に発揮され、最終的には社会効率と産業効率の向上が実現するに違いない」と述べた。

 意識しておくべき点は、現実的には、独自開発任務には一定の困難があり、しかも一気に成し遂げられないということだ。倪氏は、独自開発の道に立ちふさがる困難を人々がしっかり理解することを望んでいる。倪氏によると、このプロセスには「おそらく3年か5年、さらにはもっと長くかかる」が、「近道を望むのではなく、こつこつと、ぶれることなく進めていく必要がある」という。倪氏は、「中国電子には40年以上国産OSに取り組んできた歴史がある。ますます顕著になるサイバーセキュリティーの挑戦を前にして、コア技術で国産独自開発計画を加速し、安全な国産IT体系を構築するべきだ」と述べた。


※本稿は、科技日報「百億投資入"麒麟",自主操作系統発展或迎大机遇」(2020年3月23日付3面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。