第166号
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鉱山が自律的に感知・分析・意思決定―炭鉱スマート化の将来像

2020年7月09日 張 曄(科技日報記者)、李 秀(科技日報特派員)

 大型採炭機が地下で自律的に炭層を切断し、自律的に石炭の性質を感知し、状況に合わせて作業の状態を調整する。これにより炭鉱の作業員は自ら手を動かし機械を操作する必要がなくなり、定期的にメンテナンスをするだけで良い。炭鉱から収集された全てのビッグデータは、5G(第5世代移動通信システム)ネットワークを通して、速やかに相互リンクする。地下数百メートルの位置で今、スマート化炭鉱が、伝統的な炭鉱業界に新たな活気をもたらしている。

 中国国家発展改革委員会や国家能源局、応急管理部など8当局はこのほど、共同で「炭鉱のスマート化発展を加速させることに関する指導的意見」(以下「指導的意見」)を発表した。人工スマート、工業モノのインターネット、クラウドコンピューティングなどは今後、現代石炭の開発利用と深く融合していくことになる。

 深部石炭資源採掘教育部重点実験室の副室長を務める中国鉱業大学の方新秋教授は取材に対して、「炭鉱のスマート化の核心は、鉱山に人間のような思考、反応、行動能力を持たせ、モノとモノ、モノとヒト、ヒトとヒトの情報統合、スマートレスポンス、自動感知、分析、そして、迅速で正確な処理を実現することだ」と説明する。

中国はスマート化の初期段階

 多くの鉱業先進国は何年も前から、鉱山の情報化の長期発展計画を制定し、情報化と自動化が着々と進んでいる。

 例えば、カナダは1990年代初めに自動採掘技術の研究を開始し、2050年をめどに、衛星通信技術を活用して、鉱山の全ての設備を操作し、自動スマート採掘を実現したい考えだ。米国は1999年に地下炭鉱の自動測位・ナビゲーション技術の研究を行い、オーストラリアは2001年から切羽の自動・スマート化技術の研究を展開し、LASCシステムを設計、開発し、ドイツは2015年に遠隔操作自動化薄層採炭システムを開発し、既にほぼ無人の採掘場を実現している。

 近年、中国では切羽のスマート化が急速に発展している。現在、中国全土にはすでにさまざまなレベルのスマート化された切羽が約200ヶ所ある。兖鉱集団の鮑店炭鉱を取材したところ、中国初の標準化・スマート総合機械化された切羽を構築しており、貴州能化発耳煤業では、中国西南地区唯一の省級スマート化された切羽を構築し、済三炭鉱は、ボーリングマシンの「遠隔カット」+液圧式アンカードリル+砕石機+ベルトコンベヤー「無人化作業」セットスタイルを通して、中国最先端のスマート化ボーリング作業場を構築していた。

 方教授は、「スマート化と自動化は本質的に異なる。スマート化炭鉱の切羽は、スマート炭鉱の目標とはまだ大きな開きがある。正確に言うと、中国の炭鉱スマート化はまだ初期段階だ」とする。

 中国鉱業大学機電工程学院の執行院長を務める王忠賓教授は取材に対して、「炭鉱スマート化はシステムエンジニアリングで、全過程のスマート化運行を実現し、採掘、ボーリング、運送、向上、排水、通風、地質情報、経営管理などの部分をスマートに協調させなければならない」との見方を示す。

 中国は2015年から炭鉱の「四化(機械化、自動化、情報化、スマート化)」建設に取り組んでいる。「四化」は、炭鉱スマート化採掘のしっかりとした基礎を築いたものの、システム間のデータ感知・情報交換の難しさ、リアルタイム性、信頼性の欠如、データ利用率の低さ、複数のスマートシステムの協調性の欠如などの問題が依然として存在している。

 王教授は、「例えば、地上の測位システムにはGPSと北斗があるが、地下の設備はどのように正確に測位するのだろうか?石炭業界は特殊で、一部炭層地質の精度の高い探測技術、石炭の性質のリアルタイムオンライン識別技術、炭鉱の切羽における高速で信頼性の高い無線送信技術、炭鉱設備の精度の高い位置測定、ナビゲーション技術、複雑な動作状況コンピューター視覚識別技術、炭鉱ビッグデータ技術などの重要なスマート技術についてブレイクスルーが必要だ」と指摘する。

スマートエッジデータインフラ建設

 現在、華為(ファーウェイ)や百度などのテクノロジー企業は、炭鉱スマート化の業界の需要に既に目を付け、参入を推し進めている。

 華為が開発に参加した5Gマニングカーは既に使用が始まっており、炭鉱生産における死角の監視を行うことができる。百度が開発に参加する中国石炭クラウド建設では、陽泉煤業と戦略的提携を結んだ。中興通訊(ZTE)、中国聯通(チャイナ・ユニコム)は、兖鉱と提携し、「5G+スマート鉱業聯合実験室」を立ち上げた。

 方教授は、「間もなく到来する5G時代を楽しみにしている。例えば、現在、ダウンホールデータ送信には、光ファイバーが採用されているが、採掘設備が大きく移動したり、振動したりすると、光ファイバーは故障してしまう。それが、5Gネットワークになるとかなり改善される」と語る。

 中国鉱業大学ネットワーク・情報センターのセンター長を務める孫彦景教授は、「インターネット企業が参入を推し進めているのはいいことだ。何事も専門家に任せるのが一番で、データ処理体系、通信技術、ネットワークの枠組み、スマート協調アルゴリズムなどの面で業界はインターネット応用をめぐる専門的な研究を展開しなければならない」と指摘する。

「指導的意見」は、山跳ね、炭鉱ガス突出などの深刻な災害が発生した炭鉱に、スマート化採掘や危険作業ロボット配置などを優先して展開するようにと求めている。

 孫教授は、「昨年、当センターは華為と戦略的提携の契約を結び、『工業インターネットスマートエッジデータインフラ』という概念を打ち出した。今後のスマート炭鉱は、ネットワークによるオールコネクトから、データのオールリンクへと発展し、システムの枠組みは、『クラウドコンピューティングとエッジコンピューティングの協調』へと発展するだろう」との見方を示す。

 そして、「人工知能の特徴は、学習して進化し続ける点だ。各炭鉱の各作業状況は異なり、スマート採掘ロボットは作業の過程で、レアケースに直面しても、システムが生産ビッグデータに基づいて学習、分析、決定を行い、スマート端末に自動処理させることもできる。これが、『クラウドコンピューティングとエッジコンピューティングの協調』の意義だ」と説明する。

 さらに、「鉱山の自主決定、コントロールは全面感知が前提となり、情報の感知の信頼性を高めるためには、相応のセンサーや情報交換などの技術の面で難題を克服しなければならない。例えば、スマート視覚技術は車両や通行人、人の顔などを正確に識別することができ、シーンに基づいて行動を分析し、ルールと照らし合わせて違反かどうかを判断する」とする。

 現在、業界の垣根を超えて、スマート炭鉱をめぐる提携が広く展開されるようになっている。例えば、中国鉱業大学鉱業工程学院はグリーン採掘、深地開発、スマート採掘、未来の鉱業という研究目標を設定し、スマート採掘研究所を設置したほか、スマート採掘特別クラスも開設した。中国石炭学会と中国煤炭科工集団は「炭鉱スマート化イノベーション連盟」を立ち上げた。中国煤炭科工集団はまた中国鉱業大学(北京)、中国聯通と「5G地下スペースイノベーション実験室」を立ち上げている。


※本稿は、科技日報「譲鉱山自主感知分析決策,煤鉱智能化前景可期」(2020年3月9日付7面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。