第167号
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銀川経開区「千億元」級に成長中―産業がバラストに、科学技術がブースターに

2020年8月03日 王迎霞

 寧夏回族自治区銀川市経済技術開発区(以下、「銀川経開区」)が最近、注目の的となっている。

 大きな機械の音が響く中、銀川市は、2020年の重大プロジェクトの一斉着工推進会を開催した。405プロジェクトの総投資額は2,104億元(約3.17兆円)、1年度当たりの計画投資額は542億元(約8,200億円)に達し、プロジェクトはハイエンド設備製造、生態環境保護、民生改善などの分野をカバーしている。

 推進会の市級メイン会場となったのは銀川経開区スマート端末産業パーク二期プロジェクトの現場だ。

 同パークでは、総投資額281億元(約4,200億円)の33件の重点プロジェクトが既に着工している。うち、年間生産量15GW(ギガワット)の単結晶シリコンスティック・チップ、中軸小鎮(ベアリング関連産業のスモールシティ)などの5件が、自治区級重点プロジェクトに指定され、スマート端末産業パーク、集積回路大口径シリコンウエハなど10件が市級重点プロジェクトに指定されている。

 建設はすでにスタートし、「闘い」の号令も出されている。銀川経開区は科学技術を牽引力とし、新型コロナウイルス感染防止対策実施後の操業再開率は85%に達している。

事前に統一した計画を行ったことで波に乗った発展

 新型コロナウイルス感染防止対策を実施しながら、企業の活動・操業再開も同時に推し進めることは、銀川経開区にとって難度の高いミッションとなった。

 銀川は、寧夏回族自治区のイメージをPRする窓口で、同自治区の発展を牽引している。また銀川経開区は、銀川の経済発展の主要拠点でもある。産業プロジェクト建設の布石、経済発展戦略の位置付けなどは、経開区の発展においてカギを握る課題だ。

 2019年の花々が咲きほこる春に、銀川経開区は、経済社会の高い質の発展を促進し、3年で「1千億元級のグレードアップ版経開区」を建設するロードマップを描いた。

 具体的に言うと、「ハイエンドポジショニング、グリーン発展、協力イノベーション、レベル向上、クオリティ・効率向上、牽引・モデル」というパークの発展の方向性、戦略的新材料、現代設備製造、大健康(総合ヘルスケア)の三大主導産業に立脚し、2021年をめどに、新材料の生産額650億元(約9,800億円)、現代設備製造業の生産額300億元(約4,500億円)、総合保健の生産額130億元(約1,960億円)という1千億元級の経開区構築を目指す。

 大プロジェクトをできるだけ早く着工し、できるだけ早く目標を達成すれば、それだけ早く経済発展の「競技場」に進出することができる。そのために、銀川経開区は極めて大きな努力を払っている。

 同パークは新型コロナウイルス感染防止対策を実施し、パーク内の感染者「0」を実現し、中国全土で企業活動・操業再開のトップ集団を走るという目標を達成した。そして、防疫をめぐる「7つの絶対」対策を実施し、他の場所から企業までを直接結ぶ専用バスなどを手配する方式を採用し、30日以内にパーク内の一定規模以上の企業(年売上高2,000万元以上の企業)の企業活動再開率を100%にし、生産再開率を95%にするという「銀川スピード」を実現した。その他、「クラウドコミュニケーション、クラウド誘致」を採用して、投資誘致に入れる力を維持している。

 現在、パークのストックプロジェクトは43件、総投資額は334億2,000万元(約5,050億円)に達している。うち、5,000万元以上のプロジェクトが34件で、その総投資額は330億9,000万元(約5,000億円)だ。

 銀川経開区は2020年の目標として、工業総生産額を前年同期比40%増の420億元(約6,300億円)、付加価値額を前年同期比約30%増、固定資産投資額前年同期比40%増の160億元(約2,400億円)、一般公共予算收入を前年同期比50%増の22億5,000万元(約340億円)、投資誘致の払込資金を前年同期比50%増の222億元(約3,350億円)に到達させることを定めている。

 先手を打たなければ、発展の主導権を握ることはできない。

 現在の動向からして、第1四半期(1-3月)、工業総生産額前年同期比15%増の70億元(約1,060億円)、一定規模以上の企業の工業付加価値額前年同期比12%増、一般予算公共收入前年同期比6%増の3億元(約45億円)、固定資産投資額9億元(約136億円)を実現できると試算されている。

 銀川経開区管理委員会の高言傑会長は、「誘致の動向、プロジェクト建設、企業の生産再開などの状況を見ると、信念を堅く保ち、共に困難を乗り切るならば、目標を必ず全て達成できる」と自信満々といった様子で語った。

三大産業クラスタの建設が揃って前進

 隆基股份の董事長助理である胥芃氏は取材に対して、「管理委員会が、新型コロナウイルス感染防止対策をしっかりと講じると同時に、秩序立てて企業活動を再開できるよう組織し、企業が大きな困難を乗り切れるようサポートしてくれて、本当に感謝している。当社は今後、建設を加速させ、ここ1ヶ月の遅れを取り戻せるよう努力する」と語った。

 今回、銀川隆基光伏科技有限公司が完成させた「単結晶シリコンスティックおよびシリコンチップの年間生産量15GWプロジェクト」の総投資額は45億元(約680億円)。2月25日に建設が再開し、既に設備の設置の段階に入っている。単結晶シリコンの結晶炉、チップ製造機が続々と設置され、4月中旬から下旬にかけて稼働が始まると見られている。最終的には、もともと10月にフル稼働する計画と合わせて、年間生産額は160億元(約2,400億円)を超える見込みだ。

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多結晶シリコンの電気的性能のテストを行い、そのパラメータに基づいて品分けする銀川隆基のスタッフ。(画像提供:銀川隆基)

「太陽光発電、グラフェン、リチウム電池、半導体、サファイア」を代表とする「32555」新材料産業クラスタの建設を全力で推進するというのが、銀川経開区の近年の主な方向性の一つだ。

「首都+首府」戦略や北京・銀川「一帯一路」(the Belt and Road)科学技術イノベーション・起業産業パークなどのプラットホームを活用し、パークはさらに新たな活力を増している。

 寧夏漢堯石墨烯儲能材料科技有限公司は正極材料1万5,000トン、リチウム電池前駆体3万トンのプロジェクト、5万トンの使用済みリチウム電池リサイクルプロジェクトを急ピッチで進めており、2020年内の生産開始という目標達成を目指している。天通銀厦サファイア三期プロジェクトが完成すれば、世界最大の工業サファイア加工拠点が誕生することになる。銀と半導体は、生産を拡大し、生産能力を強化することで、12インチ半導体シリコンチップと32インチ石英ルツボの量産を年内に実現し、寧夏中太鎂業科技有限公司は、川上・川下企業と協力して、マグネシウム・アルミニウム合金板材の生産能力を年内に1万トンに増加させる計画で、寧夏艾森達新材料科技有限公司は、今年9月に窒化アルミニウムの1ヶ月当たりの生産量が11万シートに達し、世界で上位に立つ見込みだ。

 得意分野を存分に生かし、「スマート、精、鋳、数、工、電」を主導とする「1155」現代設備製造産業クラスタを構築し、ウィークポイントを強化して、「医、食、サービス」を下支えとする「121」総合保健産業クラスタを構築するために、銀川経開区は全力を注いでいる。

 現代設備製造業の分野を見ると、新型コロナウイルス感染防止対策実施期間中、「国家スマート鋳造産業イノベーションセンター」工業ネットワークの優位性を活用して、設備のシェアリングの新しい発展の機会とルートが探られるようになっている。中軸小鎮は、一、二期の35万平方メートルで生産・経営が年内に通常通り再開するほか、三期の30万平方メートルの工場も年内に完成して稼働が始まる見込みだ。寧夏巨能機器人股份有限公司は、新型コロナウイルス感染が収束した後、製造業の自動化や情報のニーズがもたらす発展のチャンスを万全を期して待っている。

 これら一連の数字は、パークや企業が手を携えて発展を遂げている証となっている。

科学技術が新たな原動力への変換を加速

 経済の高い質の発展の推進において、産業プロジェクトがパークの「バラスト」だとすれば、科学技術イノベーションは「ロケット・ブースター」ということができるだろう。

 近年、銀川経開区は終始、イノベーション主導を経済発展の主線とし、企業の科学技術イノベーション能力向上に力を入れ、グリーン発展モデルエリア、ハイエンド産業群、イノベーション主導・牽引エリア、モデル転換と高度化モデルエリアを構築してきた。

 パークには現時点で、75の自治区級以上のイノベーションプラットホームがあり、そのうち15が国家級レベルのものである。自治区級以上の科学技術型中小企業は265社、ハイテク企業が71社あり、銀川市全体の64%を占めている。共享智能鋳造産業創新中心有限公司など2社は、「自治区科学技術の小さな巨人企業」に認定されている。

 寧夏共享集団股フン有限公司は、寧夏回族自治区の誇りだ。

 中国は鋳造大国であるものの、産業全体を見ると、生産環境が劣っており、仕事がきつく、効率の悪さ、鋳物のクオリティの低さ、環境汚染などの問題が存在しており、モデル転換が急務となっている。2012年、共享集団は、3億元(約45億円)を投じて、イノベーションチームを立ち上げ、6年かけて伝統的な生産スタイル方式のモデル転換を行い、中国で初めて鋳造3Dプリントの産業化応用を実現し、特許出願件数は300件以上に達し、実際に約100件の特許を取得している。

 2016年2月、李克強総理は寧夏回族自治区を視察した際、共享集団は「野獣」から「美女」に変身したと絶賛した。

 その秘訣について、同集団の彭凡董事長は、「発展を一番重要な任務とし、人材を一番需要な資源とし、イノベーションを一番の原動力にしている」と総括する。

 科学技術が産業にエンパワーメントするようにするというのも、銀川経開区の戦略の一つだ。

 パークは、寧夏科技庁が打ち出した科学技術プロジェクト支援方式などの改革の新たな対策に合わせて、主導的地位の優位性を誇る産業にスポットを当てて、重点研究開発プロジェクトを発掘し、同時に企業が積極的に自治区の科学技術イノベーション人材・チームの育成や誘致などの活動に参加するようインセンティブを与えている。パークには既に、専門家サービス拠点3ヶ所、ポスドクワークステーション4ヶ所があり、企業の研究開発センターを頼りに自治区科学技術イノベーションチーム21チームを立ち上げ、ハイレベル人材チーム3チームを柔軟に誘致した。

 寧夏科技庁のハイテク処の馬小明処長は、「銀川経開区のパフォーマンスは二重丸。当庁は、引き続き、『放管服改革』(行政のスリム化と権限委譲、緩和と管理の結合、サービスの最適化)を深化させ、科学技術型企業の育成を強化し、大衆による起業・万人によるイノベーションのキャリアインキュベーションをサポートし、国家級・自治区級のハイテクパークの質、効率の向上を促進し、沿黄科学技術イノベーション改革試験区の建設を加速させ、重大戦略性プロジェクトが新たな原動力へ変換を加速させることができるよう取り組む」としている。

 流れに逆らって上流へ進んできた銀川経開区は今後、大躍進することになりそうだ。


※本稿は、科技日報「産業"圧艙",科技助推 銀川経開区走上"千億級"升級之路」(2020年3月30日付8面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。