第168号
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武漢東湖ハイテクパーク:新型コロナの逆風をものともしないイノベーションの力

2020年9月02日 劉志偉(科技日報記者)、姜 祥、董家瑞(科技日報特派員)

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武漢東湖ハイテクパークの「光奥科技」の塗膜工場内にある、全自動化された生産ライン(画像提供:光奥科技)

企業16社の融資額が累計で10億元以上に

 武漢東湖ハイテクパーク(別名「中国·光谷」)でこのほど、第1回光谷ガゼル企業※サミットが開催され、「2020光谷ガゼル企業発展報告」が発表された。今年上半期、新型コロナウイルスが猛威を振るったにもかかわらず、光谷のガゼル企業の原動力が衰えることはなく、同期間で雇用を7,000人以上創出し、新インフラ、「大健康」(総合的ヘルスケア)の分野の売上高が前年同期比で倍増した。企業16社の融資額は合わせて10億元(約153億円)を超え、融資口数は前年同期比40%増となった。

(※ガゼル企業・・・雇用を創出する高い成長力をもつ企業)

7,000人以上の雇用を創出

 2020年第1回光谷ガゼル企業サミットに出席した北京長城戦略コンサルティングの武文生社長は、「湖北省の科学技術イノベーション型企業の関係者は、第2四半期(4‐6月)の発展に対する自信を大幅に高めている。当社と中国科学技術協会が共同で実施した調査研究によると、湖北省は現在、ハイテク、高成長、ハイバリューなどの新たな原動力を特徴とした『景気』指数が向上している」との見方を示す。

 事実もそのことを示しており、「2020光谷ガゼル企業発展報告」によると、新型コロナウイルス感染症が発生して以降、光谷のガゼル企業は、コロナ対策と経営再開の面でいずれも優れた成果を収め、特有の成長の強靭性を見せた。

 光谷のガゼル企業も、就職の安定という面で重要な役割を果たしている。東湖ハイテクパークの科学技術イノベーション局の責任者によると、求人サイトの智聯や前程、獵聘などのデータをモニタリングし、まとめたところ、企業の7割近くが求人広告を出しており、募集数は合計7,000人以上だった。ガゼル企業200数社が半年の間に、7,000人以上の雇用を創出したということだ。前年同期の状況と比べると、その数はほぼ19年の9割方回復していることが分かる。

 求人ニーズはデジタル経済やバイオ医薬などの分野に集中している。求人数が100人以上の企業10数社のうち、7社がデジタル経済系の企業で、各種技術研究開発系ポストが、全体の4割以上を占めている。うち、マシンラーニング、ビッグデータマイニングなど、競争力の高いポストが100以上ある。

株式融資口数が前年同期比40%以上増に

 2017‐2019年、光谷のガゼル企業152社の融資額は累計で60億元以上だった。インターネットデジタル経済、バイオ医薬、光電子などの企業が最も人気の融資先となった。

 質の高い発展を牽引する光谷のガゼル企業は2019年、研究開発に合わせて28.8億元(約440億円)の資金を投じた。1企業当たり平均636.4万元(約2.9億円)の計算になり、56.3%のガゼル企業の研究開発強度が10%を超えた。

 資本の力を追い風に、「ガゼル」は、より高く"跳ね上がる"ようになっている。2019年度に認定されたガゼル企業414社の総売上高は193.4億元(約2,960億円)、直近2年の平均成長率は53%で、企業76社の売上高が直近2年で4倍となった。

 今年上半期、光谷の「ガゼル企業」16社が、株式融資情報を公開し、融資額は累計で10億元を超えていた。投資家は硅谷天堂や建銀資本、清控銀杏など、有名なベンチャーキャピタルだ。上半期、光谷の「ガゼル企業」の株式融資口数は前年同期比40%以上増加した。

 融資を得たのは企業オンライン協力プラットフォーム、デジタル出版、センサーチップ、遺伝子治療薬、腫瘍検査キットなど、好調分野の企業だ。眼科の遺伝子治療薬の研究開発に取り組んでいる武漢紐福斯生物科技有限公司は、シリーズAラウンドの資金調達を実施した。WEB上で文書を閲覧・編集できるプラットフォーム「石墨文檔」は、シリーズBプラスラウンドとして数千万ドルの資金を調達した。高性能ToFセンサーチップを開発する聚芯微電子はシリーズBプラスラウンドとして1.8億元(約27.5億円)の資金を調達した。インターネット企業・理工数伝はシリーズDラウンドで16億元(約245億円)相当を調達した。

新規ガゼル企業が156社に

 東湖ハイテクパークは、ガゼル企業育成にいち早く取り掛かったパークで、中国科技部(省)たいまつセンターの強力な支援を受け、10年の努力を経て、ガゼル企業の数は当初の30社から、現在は453社と、15倍に増えた。そして盛天網絡など上場企業10社が誕生した。

 東湖ハイテクパークの関係責任者は、「当パークは、ガゼル企業特定項目育成政策を3度改訂し発表してきた。そして、光谷のガゼル企業に、一連のオーダーメイドサービスを提供している。光谷のガゼル企業は当パークの質の高い発展の原動力の源となっている」と語る。

 光谷には「ガゼル企業」が加速して集まるようになっており、2020年、新規ガゼル企業の数は156社に達した。光谷のガゼル企業総数の3分の1以上に当たる数字で、売上高は合わせて59.1億元(約900億円)に達した。

 報告によると、直近2年、売上高の複合年間成長率(CAGR)が200%以上のガゼル企業は21社ある。2020年の「急成長を遂げた光谷のガゼル企業トップ10」のうち、サイバーセキュリティ企業の思普崚のCAGRは542.7%に達した。

 ガゼル企業全体の発展を加速させ、新型コロナウイルス感染症の逆風に逆らって成長できるように、東湖ハイテクパークは中国国内の大手シンクタンク・長城戦略コンサルティング·光谷イノベーション発展研究院は、中国初のガゼル企業ハイレベルサービスプラットフォーム「光谷ガゼル企業塬」を立ち上げた。「塬」は「高地」という意味で、「ガゼル企業塬」とは、ガゼル企業のゆりかご、インキュベーターであり、ガゼル企業が群がり集まる生息地にもなっている。「光谷ガゼル企業塬」は、ガゼル企業の成長の各段階に合わせて、中国内外のイノベーション起業サービスリソースを導入し、企業が自己適応、自己成長するイノベーション起業エコシステムを構築していく。

 武漢市党委員会の常務委員で、東湖ハイテクパーク共産党活動委員会の書記を務める汪祥旺氏は、「今後、東湖ハイテクパークは『光谷ガゼル企業塬』を足掛かりとして、光谷の『ガゼル企業』にサービスを提供する場を構築し、的を絞った専門的かつハイレベルな一連のサービスを提供し、光谷の『ガゼル企業』が発展の活力を十分に発揮できるようサポートし、光谷の『ガゼル企業』がもっと早く走り、成長を加速できるよう推進する」と語る。


※本稿は、科技日報「武漢東湖高新区:扛過疫情,創新動能不減」(2020年8月14日付7面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。