コロナ禍でも好調 厦門タイマツハイテクパークのハード・ソフト環境の両立
2020年9月23日 謝開飛(科技日報記者)、李幼君(科技日報特派員)
厦門タイマツハイテクパーク内の企業・開発晶照明の生産工場(画像提供:開発晶照明)
今年上半期、厦門(アモイ)タイマツハイテクパークは、「6つの安定(就業、金融、貿易、外資、投資、マインドの安定)」に取り組み、「6つの確保(雇用、民生、マーケットエンティティ、食料・エネルギーの安全、産業・サプライチェーンの安定の確保)」の任務を遂行し、創造と建設をともに推進し、投資誘致、プロジェクト建設、イノベーション起業などの面で一連の成果を挙げ、「ハード環境」と「ソフト環境」を同時に向上させている。
2018年に続いて、「大衆による起業・イノベーション」の活動が再び中国国務院弁公庁の通達で表彰を受け、激励、支持され、厦門ソフトウェアパークは国家デジタルサービス輸出拠点リスト第1弾に入っている。上半期、厦門市の「質の高い発展加速」コンテストで総得点1位に輝くなど、新型コロナウイルスが世界中に広がる中、厦門タイマツハイテクパークは、好成績を収めた。
上半期、同ハイテクパークは、「6つの安定」に取り組み、「6つの確保」の任務を遂行し、新型コロナウイルス対策と経済社会発展を統一して計画・推進し、各級幹部が企業1,200社以上を訪問し、1,000件以上の難題解決に協力し、創造と建設をともに推進し、投資誘致やプロジェクト建設、イノベーション・起業などの面で一連の成果を挙げ、ハード環境とソフト環境を同時に向上させた。
先手を打ってプロジェクト実施が加速
今年6月10日、最後のコンクリート打ちが終わり、厦門タイマツ同翔産業拠点にある中航鋰電の「新型動力リチウム電池生産ラインプロジェクト」一期(以下「A6プロジェクト」)として建設中の本工場の主体工事が順調に完成した。契約調印から、土地の受け渡し、着工まで、同プロジェクトは、同パークにおける最速の記録を打ち立てた。新型コロナウイルス感染が世界中で拡大する中、生産、建設の多くは障碍に直面しているにもかかわらず、A6プロジェクトはなぜこれほどのスピードで進展しているのだろう?
中国国内の新エネ車の組み立て台数ランキングトップ3に入る企業である中航鋰電のA6プロジェクトは昨年6月に、厦門タイマツハイテクパークに入居するための契約に調印し、厦門市の誘致説明会が開催されて以降、先頭を切って始動した投資額100億元(約1,550億円)級のハイテク産業プロジェクトとなった。厦門タイマツハイテクパーク管理委員会の関係責任者は、「中航鋰電のプロジェクトは、業界を牽引する高度にスマート化された産業拠点となるだろう。これは、市全体の新エネルギー産業チェーンを大きく、強くするうえで、重要な意義がある」と語る。
今年に入り、中航鋰電が基準に沿って、秩序立てて操業を再開できるように、厦門タイマツハイテクパーク管理委員会は、新型コロナウイルス対策を万全に講じた状態をキープすることを前提として、厦門市や翔安区の関連当局と密接に協力し、「マンツーマン」でサポートする形を採用し、足かせや壁を取り払い、生産要素確保を強化し、プロジェクト実施を加速させた。
新型コロナウイルスの流行中に、厦門タイマツハイテクパークは、「クラウド誘致」や共同誘致などの新たな手段を講じ、誘致の道が途切れることがないよう「先手」を打つとともに、高エネルギー級産業プロジェクトに照準を合わせて、デジタル経済などの未来産業に力を入れ、この特殊な時期に、産業発展の念入りな計算と深謀遠慮を示している。
例えば、全磊光電は、英国の半導体用エピウェハーメーカー・IQEと共同で、世界の先頭を走る化合物半導体用エピウェハー研究開発製造拠点や化合物半導体エピタキシー製品センターを構築するプロジェクトを打ち出した。聯芯集成電路製造(厦門)有限公司の生産能力を拡張するプロジェクトのために、親会社である台湾の半導体ファウンドリ大手・UMC(聯華電子)は、35億元を増資した。シュナイダーエレクトリックは、厦門における投資を強化し、最先端の生産ラインを構築する。浪潮厦門産業パークのプロジェクトが実施され、同市の情報技術応用イノベーション完成品製造、システムソフトウェア研究開発の分野における空白が埋められた―。
統計によると、上半期、厦門タイマツハイテクパークは、新規誘致プロジェクトが394件、新規実施プロジェクトが326件に達した。うち、海辰新能源科技のリチウム電池、神州数碼の鯤泰生産拠点の2プロジェクトは100億元級で、中順半導体、禾信などの6プロジェクトは10億元級だ。
政策を強化しデジタル経済が危機をチャンスに変える
世界の博物館の90%近くが新型コロナウイルスの影響で休館となるという状況下で、博物館はどのようにその逆風の中で生き残ることができるのだろう?厦門億聯網絡のビデオ会議システムのサポートの下、7ヶ国からの世界一流の博物館が「クラウド対話」を開催した。
「三高」企業(国家級ハイテク企業・技術先進型サービス企業、市重点工業企業・市重点現代サービス業企業、売上高が1億元以上で、前年度の成長率が20%以上、または納税額が500万元以上の工業企業・戦略的新興産業の分野の企業)は、厦門市が質の高い「イノベーション・起業都市」を建設するための中心的存在だ。今年、新型コロナウイルスは、こうした企業に大きな打撃をもたらすと同時に、新たなチャレンジ、チャンスももたらした。厦門の「三高」企業の一つである億聯網絡は、危機をチャンスに変え、スピーディーな舵切りと関連の業務の開拓を行い、世界におけるユーザー数を増加させた。
新型コロナウイルスの流行中に、億聯網絡は、厦門市政府の初のリモート誘致契約調印セレモニー、広東省恵州市のエチレンプロジェクトのリモート着工セレモニー、医療専門家が集う新型コロナウイルス対策リモート国際会議などの開催をサポートしたほか、多くの病院に、ビデオ・音声通話を融合させたコミュニケーションサポートシステムを提供し、医療従事者が専門家による問診、機能分化、医療報告、防疫をめぐる研究討論などを展開できるようサポートしてきた。今年上半期、億聯網絡は国家企業技術センター、2020年ビッグデータ産業発展試行事業モデルプロジェクトなどに選出された。
億聯網絡の新型コロナウイルスの逆風をものともしない活躍ぶりは、厦門タイマツハイテクパークが力を注ぐ「三高」企業の育成の縮図だ。同ハイテクパークは、高エネルギー級プロジェクトに照準を絞ると同時に、企業をサポートする政策の強化を続け、イノベーション・起業のためのエコシステムがさらにレベルアップしている。
厦門タイマツハイテクパークは、企業をサポートする科学技術イノベーション対策19項目をベースにサポートをさらに高度化させるため「厦門タイマツハイテクパークが企業の科学技術イノベーションを一層サポートするための若干の対策」を打ち出し、原有の政策を基礎に、技術先進型サービス企業の成長、企業のテクノロジーをめぐる研究開発の展開、イノベーション・起業活動などをサポートするための政策、措置を増やし、特色が鮮明で、科学的、合理的で、サポートが強力な科学技術イノベーション政策システムの構築に取り組んでいる。
半年で、厦門タイマツハイテクパークの「三高」企業は93社増え、合わせて925社となり、市全体の36.8%を占めている。「三高」の審査評価指標7項目はいずれも上昇をキープし、同市におけるランキングはトップとなっている。天馬微電子、海辰鋰電、美亜柏科など、ますます多くのハイテク、高成長、高付加価値の企業が、厦門タイマツハイテクパークで誕生し、集い、厦門の新たなテクノロジーのシンボルとなりつつある。
集団イノベーション、ハイテク産業クラスターを強化
厦門天馬微電子が総額480億元(約7,440億円)を投じた第6世代フレキシブル・アクティブマトリクス式有機EL・AMOLEDのプロジェクトが始動し、生産が始まった。製品は弘信電子の工場から天馬の工場に出荷されて車で走るとわずか10分しかかからない。
OLED産業チェーンの供給の部分において、弘信電子は、中国国内のフレキシブルプリント基板業界のリーディングカンパニーで、中国国内初の両面ボード型ロール・ツーロール生産ラインを有している。弘信電子の李強・会長は、「天馬微電子は、弘信電子の中核となる顧客の一つで、年間7‐8億元分の受注がある」と話す。
世界における新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて、多くの産業サプライチェーンが中断するリスクが高まっている。フラットパネル産業は、厦門初の1千億元級の産業チェーンで、李会長は、「ハイテクパークに関連企業が集まっているからこそ、フラットパネル産業のサプライチェーンは円滑に稼働できるのだ」と説明する。
昨年以降、100億元級のプロジェクト4件、10億元級のプロジェクト20数件、そしてハイレベル研究開発機関数社が同ハイテクパークに進出し、産業発展のために原動力を蓄積している。例えば、天馬の「AMOLED」生産ラインプロジェクトが着工し、今後は、川上のチップ設計、発光材料、フォトレジスト、先端設備などの世界の先端技術を誇る関連企業が進出してくることが予想され、厦門のフラットパネルの産業チェーンが一層整備、強化されることになりそうだ。
厦門タイマツハイテクパーク管理委員会の関係責任者は、「中航鋰電、天馬などのリーディング型、エネルギー注入型企業を中心として、多くの産業チェーン内の企業が『30分圏内』、ひいては『10分圏内』に進出して繋がり、産業の川上・川下が連携して部品や設備の調達を展開し、産業チェーンの都市間連携を大々的に推進し、産業の優秀な助演者、共演者となる」と話す。
新型コロナウイルスの影響で、パークの幾つかの企業が必要としている一部の輸入部品を供給できない現状に対して、同ハイテクパークは、速やかに企業サービスの従来のスタイルを調整し、パーク内の産業チェーンの川上・川下の企業に協力を求め、部品を供給するよう奨励している。
厦門タイマツハイテクパークが橋渡し役となり、億聯網絡と厦門星宸は提携することで合意し、通常通りの生産、供給が確保された。厦門華泰利機電有限公司は、同ハイテクパークの中間業者の仲介を通して、近い場所の企業とマッチングし、サプライチェーンをめぐる問題を解決し、そしてABB、シュナイダーエレクトリックなどの海外の企業から新たな注文が入るようになった。
さらに、同ハイテクパークは、厦門市科技局や湖里区政府と連携し、マイクロソフトの人工知能(AI)、バーチャル・リアリティ技術のパブリックプラットフォーム設置を推進し、「プラットフォームサービス+各シーンへの応用+人材育成」というスタイルを通して、同ハイテクパークの企業がAIを活用できるようにし、AI産業の川上・川下産業クラスターが形成されるよう促進している。
集積回路産業やソフトウェア、情報サービス業などの分野における深い事業展開により、上半期、同ハイテクパークのデジタル経済産業の業績も際立っていた。うち、集積回路産業の生産額は前年同期比13.2%増の112億5000万元に達した。また、デジタル文化クリエイティブ、EC、ビッグデータ、AIなどの分野の良好な発展の波に乗り、ソフトウェア・情報サービス業の売上高は前年同期比12%増となった。
※本稿は、科技日報「逆疫而上 厦門火炬高新区靠的是"軟硬"兼修」(2020年8月28日付7面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。