第169号
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「ごみに囲まれた都市」から「廃棄物ゼロ都市」へ―変化は環境だけにとどまらず

2020年10月20日 李 禾(科技日報記者)

全国の「11+5」モデル都市および地区では高水準な実施プランを達成し、そのために1000億元以上の資金をかけている。特に、今年からはグリーン型経済社会への転換と有機的に融合させ、モデルとして複製可能で、普及可能な革新的手法として大筋の総括を得た。

 中国全体を対象とする「廃棄物ゼロ都市」モデル事業が2019年5月に正式にスタートして以来、現在までに段階的な効果が得られている。

 9月13日、浙江省紹興市で開催された「廃棄物ゼロ都市の建設、すばらしい生活の共有」の推進に関する会議の席で、「廃棄物ゼロ都市」部門間協力チームのサブリーダーで、生態環境部の副部長でもある庄国泰はこう発言した。「全国の『11+5』モデル都市および地区では高水準な実施プランを達成し、そのために1,000億元以上の資金をかけている。特に、今年からはグリーン型経済社会への転換と有機的に融合させ、モデルとして複製可能で、普及可能な革新的手法として大筋の総括を得た」。

 統計によれば、中国では毎年、新規の固体廃棄物が約100億トン産出されており、これまでの蓄積総量は600~700億トンにも達する。固体廃棄物の産出率は高く、その利用は十分になされておらず、一部の都市では「ごみに囲まれた都市」の問題が非常に深刻だ。「廃棄物ゼロ都市」建設の推進によって社会全体の固体廃棄物の産出を減らし、都市における固体廃棄物の管理水準を高め、長い間先延ばしになってきた固体廃棄物による汚染問題の解決を加速させ、都市の生態環境の質を改善できるだろう。

浙江省紹興市、スマート化大型プラットフォームを構築

 山東省の省長で、生態環境部の元部長でもある李干傑によれば、「廃棄物ゼロ都市」というのは先進的な都市管理の理念である。「廃棄物ゼロ」とは固体廃棄物を産出しないことを指すのではなく、固体廃棄物を完全に資源化して利用できることを意味するものでもない。それは発展理念により牽引されるもので、グリーンな発展方式や生活方式の推進を通じて固体廃棄物の根源からの削減と資源化利用を継続的に促し、埋立処分量を最大限減らすことによって、固体廃棄物による環境影響を最低限まで減らす都市発展モデルのことだ。「廃棄物ゼロ都市」建設の将来的目標は、都市全体の固体廃棄物の産出量を最少まで減らし、十分な資源化利用と安全な処分を実現することである。

 紹興市は全国の「11+5」モデル都市のひとつである。紹興市の盛閲春市長によれば、「『廃棄物ゼロ都市』の建設では、紹興市はトップダウン設計を強化し、同市の実情に鑑み、『1+4+7』モデルプランを立てた。このプランでは産業固体廃棄物、危険廃棄物、生活ごみ、建設ごみの4つのサブ領域プランと区・県および新市街を合わせた7区分のサブプランをカバーし、あたかも一局の将棋のように全市を統括して解決する局面を形成している」。

 廃棄物の産出は都市生活のさまざまな生産分野と関係するため、科学技術を利用して総合的に対策する必要がある。紹興市の「廃棄物ゼロ都市」情報化プラットフォーム事業のチーフエンジニアを務める孫建明は、「ビッグデータを利用して『廃棄物ゼロ都市』の建設を推進することは、すでに浙江省のデジタル化転換における10大プロジェクトの一つとなっている。情報化プラットフォームの構築は、実情をはっきりさせ、産業向けにサービスを提供し、閉ループの管理を形成するためである」と強調する。

 孫建明によれば、固体廃棄物の無害化でいう「害」とは、固体廃棄物そのものが有害であることを指すのみならず、その産出から収集・輸送、処分までのどの処理プロセスにおいても一定の危害性があることを意味する。このため、情報プラットフォームを通じることにより、リスクを正確に発見・判断して、適切な処理方式を選択することができる。多くの企業では情報の非対称性のために、再利用可能な資源を遺棄されるだけの廃棄物にしてしまっている。情報プラットフォームを通じて産業向けにサービスを提供できれば、企業の生産および処理コストを低減できるだろう。

 取材によれば、紹興市の「廃棄物ゼロ都市」情報化プラットフォームでは現時点で68の専門サブシステムを開通させ、8,409万件の固体廃棄物関連データを集約しており、それに加えて1日あたり10数万件の新規データが追加されている。これらのビッグデータを活用すれば、紹興市の廃棄物ゼロ建設のために必要とされるミッションリスト95件とプロジェクトリスト90件、責任リスト43件について、リアルタイムでの管理とフォローアップが可能となる。

 盛市長は次のように語る。「『廃棄物ゼロ都市』建設を通じて、多くの産業の持続可能な発展を確立し、推進した。また、紹興市では印刷化学工業の地区を跨いだ移転・集約など、産業配置の最適化を加速させており、これによって6,000ムー(約400ヘクタール)の工業用地が空き地となり、汚水排出を1日あたり13.6万トン減らすことができた。グリーン産業化を推進し、塩含有廃棄物およびフライアッシュの産業化プロジェクトを実施し、今年末には生活ごみの埋立処分ゼロを実現できるだろう」。

江西省瑞金市では「廃棄物ゼロ」の「紅色旅遊」エコシステムを構築

 江西省瑞金市は「廃棄物ゼロ都市」における唯一の県級市であり、森林被覆率が75.7%に達する国家重点生態機能区である。瑞金市副市長の董良雲は、「1年あまりのモデル事業において、瑞金市は観光都市としての特色に立脚し、国全体の観光モデル区の創設の中で、『廃棄物ゼロ』の理念を観光、農業、工業、産業発展の方針と密接に結びつけ、グリーンという言葉の持つ実質的な価値を高めてきた」と語る。

 たとえば、生態環境的な優位性と「紅色旅遊」(中国革命史の聖地をめぐる観光)の観光資源を融合させた観光業を発展させ、「廃棄物ゼロ観光スポット」や「廃棄物ゼロホテル」を多数設置し、「廃棄物ゼロ・紅色旅遊」のエコシステムを構築した。また同時に、「紅色旅遊・鉱山修復」という新たなルートを開拓した。瑞金氏沙洲壩鎮にある2つの石灰石の廃業鉱山について廃棄物ゼロ化改造を行い、屋外の観光スポットを建設し、中央ソビエト区(中央革命根拠地)時代の戦闘・作業・生活シーンを再現し、廃業鉱山における全資源の再利用を実現した。こうして、見渡す限り廃墟の廃業鉱山が修復されただけでなく、少なからぬ鉱員が観光地を演出する俳優へと転身を遂げ、生活の質と幸福感を高めることができた。今や、この観光エリアは国家4A級観光地に選ばれるまでになった。

「採鉱作業に従事したために肺病を患ったある貧乏人が、鉱山が観光地へと転身を遂げた後に、24年の時を経てかつての職場に戻った。その彼を感動させたのは、かつての作業服が演出のための衣装となったことだ。採鉱労働者のひとりに過ぎなかったこの貧乏人も、今やステージの上で共産党の革命文化を発揚する農民俳優へと転身したのだ」と董副市長は語る。

 これに加え、瑞金市は「農業有機廃棄物の資源化・農地還元利用--健康な土壌の育成--優良農産物の生産」というグリーンなエコシステムの循環型発展モデルを模索し、「豚--沼--農産物(野菜、ハス等)の栽培・バランス型総合利用」というグリーンモデルを推進しようとしている。また、ネーブルオレンジの落果を発酵させて酒を醸造し、農業有機廃棄物の総合利用を実現し、農業廃棄物の総合利用企業を支援し、バイオテクノロジーを利用した有機肥料工場やミミズ養殖場等のプロジェクトの建設を推進しようとしている。

 これらの企業は植物の残枝や枯葉、家畜の糞便、動物の内臓等の有機物の再加工によって有機肥料を生産し、それを再びネーブルオレンジの栽培基地に投入することによって化学肥料の使用を減らし、ネーブルオレンジの品質を向上し、家畜養殖による汚染問題を効果的に解決している。

「瑞金市では現在、広さ16万ムー(約1万667ヘクタール)の土地でネーブルオレンジを栽培している。これほど大規模なネーブルオレンジの栽培基地で、全プロセスを通じた農業廃棄物ゼロを実現しているのだ」と董副市長は話す。

遼寧省盤錦市、「五色錦」モデルを統一的に推進

 遼寧省盤錦市副市長の米金套は、同市では現在、5つの分野から「廃棄物ゼロ都市」の建設を推進しており、「五色錦」モデルのひな型がすでにできつつある、と筆者に告げた。

 遼河油田に「廃棄物ゼロ鉱区」を構築し、「黒色」の固体廃棄物を効果的に、かつ、高い価値で利用する。農業廃棄物を「金色」の資源に変え、わらの総合利用率93%という目標に向けて、典型となるわら総合利用モデル区・県の建設を推進する。都市・農村を一体とする大環境衛生体系を構築し、生活由来の固体廃棄物のごみ分別における「青色」区分(再生可能ごみ)への分散を促し、「インターネット+スマート分別」の運営モデルを採用し、再生可能ごみのスマート回収プラットフォームを建設して、ごみ分別の水準を向上させる。危険廃棄物の全面的な安全管理を推進し、「赤色」警告ポイントを効果的に抑制する。制度体系による牽引作用を発揮させ、全市における「グリーン(緑色)」発展理念の達成を推進する......。「盤錦市『廃棄物ゼロ都市』モデル建設実施プラン」に定められる39項目の任務のうち、現時点で27項目が完了している。

 浙江省副省長の陳奕君によれば、「廃棄物ゼロ都市」の建設は生態文明建設の分野における重大改革であり、固体廃棄物対策に新たな理念をもたらし、新たな空間を切り開いた。

 取材によれば、中国共産党浙江省委員会および浙江省人民政府は省全域を対象とした「廃棄物ゼロ都市」の建設をすでに全面的にスタートさせており、この建設を生態環境の質的向上のための重要な突破口として、新たな発展理念の実践および質の高い発展の推進と結び付け、目標・任務の各項目を「美しい浙江省の建設業務の審査と生態環境保護のレベルアップにおける監督範囲」に組み入れた。また、指導部や幹部の評価と連動させ、固体廃棄物対策のための大きなネットワークを構築し、全プロセスを通じた閉ループ管理を強化し、ビッグデータを活性化し、効果を高めた。産業の廃棄物ゼロ成長、資源のゼロ浪費の実現に向けて努力し、抜け穴ゼロ、監督管理の死角ゼロ、保障漏れゼロ、廃棄物の散乱ゼロの実施に向けて努力した。

 生態環境部固体廃棄物・化学品司の司長を務める邱啓文によれば、「11+5」モデル都市および地区の地理的分布は多様で、経済・社会の発展段階も異なるため、「廃棄物ゼロ都市」の建設プロセスにおいて直面する主な矛盾や問題も同じではない。各モデル都市では廃棄物ゼロ建設をその地における経済・社会の質の高い発展や、際立った問題の解決と結び付けなければならない。現在、モデル事業はまさに重要な段階にあることから、モデル事業の建設の統一的かつ適切な実施を引き続き模索し、「第14次五か年計画」および「廃棄物ゼロ都市」の建設に向けて構成を検討し、実質的な効果を上げて良好な基盤を築く必要がある。

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浙江省紹興市新昌県では2年前より厨房から出るごみ(厨芥)の環境を考慮した処理モデルを試みている。腐食性昆虫であるアメリカミズアブの食べ続ける特性を利用して厨芥を急速に分解させ、有機肥料や高タンパク飼料に転換するのである。現在、新昌県厨芥処理センターでは1日あたり40トンの厨芥を処理しており、処理範囲として都市部の学校、食堂、ホテルや中規模・大規模レストランを網羅し、年間約700万元の経済効果を生み出している。写真は、新昌県厨芥処理センターの職員が生産ラインで厨芥を処理しているところ。撮影:翁忻暘(新華社記者)


※本稿は、科技日報「従垃圾囲城到無廃城市 改変的不僅僅是環境」(2020年09月24日付6面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。