最も快適なイノベーション・起業環境―蘇州市の海外ハイレベル人材招致の取り組み
2020年10月05日 李釗(科技日報記者)
9月8日、蘇州工業パークで、わずか10分ほどで海外ハイレベル人材就労証、居留証などの、全ての手続きを終えた英国人のミシェルさん。(画像提供:蘇州工業パーク)
2020年、新型コロナウイルス感染流行の影響で、世界のハイテク人材交流も大きな影響を受け、多くの海外ハイレベル人材が中国国外で足止めされ、中国に予定通り戻ることができなくなってしまった。
江蘇省蘇州市は、困難に直面しながらも積極的に行動し、今年初めに世界に向けて初めて「蘇州の開放・イノベーション・連携ヒートマップ」を発表したのに続いて、先ごろには「産業チェーン・グローバル協力・マッチングガイド」を発表し、投資誘致イベント、交易イベント、プロモーションイベント、マッチングイベントなどを次々に開催している。
統計によると、2020年上半期、蘇州市の実行ベース外資導入額は前年同期比151.6%増の78億2,800万ドル(約8,200億円)と、既に昨年一年間の水準を超え、規模、増加幅ともに同期の過去最高を記録した。うち、6月の実行ベース外資導入額は19億2,300万ドル(約2,010億円)と、1ヶ月当たりで過去最高を記録した。経済成長は人材による下支えが不可欠となる。6月30日の時点で、蘇州の雇用機関7,221機関が外国人来中就労管理サービスシステムに登録しており、合わせて1万1,892人が有効な外国人就労証を手にしている。また江蘇省全体の47.42%を占め、うち、海外ハイレベル人材が4,696人と、同省全体の57.71%を占めている。中国国内の主要都市と比べると、蘇州の外国人人材総数は大・中都市の中で5位に位置している。1位から4位は上海、北京、深圳、広州だ。
親切で便利なプロセス
蘇州市科技局の顧万勇副局長は取材に対して、「蘇州が打ち出した『蘇州の外国人人材にとって最も快適なイノベーション・起業環境づくりに関する若干の対策』は、外国人人材が蘇州で就労する際の年齢、学歴、仕事の経験などに関する要求を緩和し、就労できる期間を長くしているほか、就労証の手続きを簡素化している。多くの政策、対策は中国初で、蘇州の人材誘致やインテリジェンス導入の強い意思と決意が示されている」と述べた。
外国人専門家は就労許可証と居留証を取得する必要があり、以前の蘇州なら、前者は外国専家局のシステムで手続きをし、後者は公安機関で手続きしなければならなかった。業務のプロセスに基づき就労許可証を取得するには10営業日が必要で、居留証の取得には15営業日も必要だった。外国人専門家は、この2ヶ所に行かなければならず、資料も重複して準備しなければならないため、多くの手間と時間がかかっていた。そこで今年、上級機関から権限を委譲され、海外ハイレベル人材就労許可証と居留証の手続き窓口サービスが試験的に設置された。外国人専門家やその家族は、1ヶ所で両方の手続きが行えるようになったうえ、取得にかかる時間が25営業日から15営業日に短縮されたため、蘇州での生活がより一層便利になった。2020年6月30日に同サービスが打ち出されると、多くの外国人専門家の間でたちまち高く評価され、同窓口ではこれまでに、112人分の手続きを受け付けた。
ハイレベル人材次々と
あるインド人研究員によると、「オックスフォード大学-蘇州先端研究センター」は、800年以上の歴史を誇る米オックスフォード大学が初めて海外に設置した多学科研究、イノベーション、技術センターで、知識創造とイノベーション開発を通して研究活動に注いでいるという。
同センターはオックスフォード大学の数学・物理・生命科学学部、エンジニアリング学科、物理学科、化学学科、材料学科、数学学科の教授15人を招聘した。15人は現在、主任研究員(PI)を担当している。また、医療健康人工知能、再生医療エンジニアリング研究、環境バイオ技術・合成生物学、光電技術研究など、9つの科学研究課題グループを立ち上げ、専任の科学研究者29人、外国人科学研究者10人(英国人、ベルギー人、インド人、パキスタン人、シンガポール人、タイ人など)を招聘した。
ただ新型コロナウイルスの影響で、オックスフォード大学のほとんどの教授が中国に戻ることができていない。研究院に残っているインド人科学研究者2人は、「ここの雰囲気や環境が大好き。オックスフォード大学-蘇州先端研究センターは、基礎研究を重視しているほか、市場の応用化開発研究にも注目している機関。新型コロナウイルスをスピーディーに検査できる検査キットなど、たくさんの科学研究製品を生産している」と話す。
関係機関との連携が整備されれば、快適な環境で仕事をすることができるようになるだろう。
※本稿は、科技日報「打造"最舒心"的創新創業環境----蘇州市吸引外国高端人才紀」(2020年09月17日付7面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。