第169号
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中国で1千台目のシールドマシンがラインオフ―「ゼロ」から「世界一」へ

2020年10月13日 喬 地(科技日報記者)

 節目の意義を持つ、鉄道などインフラ建設を手掛ける中国中鉄股份有限公司が独自に開発した1,000台目のシールドマシンが29日、河南省鄭州市の中鉄工程装備集団有限公司(以下、中鉄装備)でラインオフした。取材では、この直径8.64メートルの土圧バランスシールドマシン(粤海14号)は、広東珠江デルタの水資源調整プロジェクトで使用されることが分かった。

12年前は中国製のシールドマシンは「ゼロ」だった

 オフラインセレモニーで、中鉄装備の党委員会書記を務める、卓普周会長は、「シールドマシンは、実際には中国人の『汗と努力の結晶』だ!」と語った。2008年まで、シールドマシンのキーテクノロジーは海外の独占状態で、中国国内で使用されるシールドマシンは、輸入に著しく依存していた。そして、キーテクノロジーを確立していないため、シールドマシンの検査やメンテナンスが必要な時にも、海外の専門家にはるばる海を渡って来てもらっていた。輸入はコストが非常に高く、メンテナンスにも手間がかかり、海外とのコミュニケーションにも時間がかかるなど、中国はシールドマシンの応用という分野で他国からの制限を受け、中国のインフラの効率や発展にとって重い足かせとなっていた。

「シールドマシンは国家の建設に影響するため、中国独自のシールドマシンを絶対に作らなければならない!」というのが、海外のシールドマシンを最初に使用していた中国鉄路工程の社員たちの共通の夢だった。

 長年の模索と努力により、中国の研究開発チームはコアテクノロジーのブレイクスルーを果たし、2008年に独自の知的財産権を持つ中国初の複合型土圧バランスシールドマシン「中国中鉄1号」を開発・製造し、ゼロから1への飛躍を実現した。そして、翌年に中鉄装備が誕生し、鄭州市で中国国内最大のシールドマシン研究開発・製造拠点も完成。中国のシールドマシン産業化の幕が開かれた。

 中鉄装備のシールドマシン製造工場には、「中国人による独自のシールドマシン、中国さらには世界で最高のシールドマシンを作る」というスローガンが目立つ場所に掲げられている。そのスローガンは、同社のシールドマシンという分野における飛躍の道についてのありのままの描写であるだけでなく、中国の工業界が絶えず向上を求めて努力し続けてきた奮闘の歴史の縮図ともなっている。

 2008年に独自の知的財産権を持つ中国初の複合型土圧バランスシールドマシンをラインオフさせ、今では、シールドマシンの注文数が1,200台、出荷台数が1,000台に達し、21の国・地域に輸出し、世界でも有名な中国のシールドマシン業界のリーダーとなっている中鉄装備の急速な発展や中国のシールドマシン産業の飛躍的発展を支えているのは、イノベーション・創造だ。

中国のシールドマシンの生産・販売台数は3年連続で世界一

「宇宙に行くならば神舟、海に潜るならば蛟竜、地面に潜るならばシールドマシン」。山や海を掘り進むトンネル掘削機は、機械・電気・液圧・センサー・情報・力学・指向研究などを一体化させた先端設備だ。

 中鉄装備は2013年12月に、特大断面矩形シールドマシンの開発に成功し、矩形シールドマシンを都市の地下を貫くトンネルや地下駐車場の施工に初めて使用した。その後、2016年10月には、浩吉鉄道白城トンネルの工事のために、世界初の馬蹄形シールドマシン「蒙華号」をオーダーメイドし、その応用プロジェクトが2018年に国際トンネル協会(ITA)の「科学技術プロジェクト革新賞」を受賞。中国の特殊形状シールドマシンが世界でもトップ水準であることが示された。さらに、2018年には、中国初の連絡トンネル用シールドマシンが、寧波鉄道交通3号線鄞南区間プロジェクトで使用された。

 世界的に見れば、中国はトンネルや地下プロジェクトの規模が最大かつその数量も最多であり、地質条件や構造形式が最も複雑でありながら、建設技術が最も速いペースで発展している国だ。また中国では、中鉄装備をはじめとする優秀なトンネル掘削機メーカーが誕生し、直径が最大の泥水式シールドマシン、世界初の馬蹄型シールドマシン、直径が世界最大の硬岩掘削機など、革新的で、シンボリックな存在となる一連の製品が生まれきた。そして、「世界最大」、「世界最小」、「世界初」などの記録に絶えず挑戦し、世界のトンネル掘削機の分野で、中国はその技術的水準を更新し続けている。

 2012年、中鉄装備は初めてシールドマシンを輸出し、マレーシアの工事に使用された。そして今、中国のシールドマシンは、シンガポールやイタリア、ポーランド、オーストラリア、フランスなど、世界各地で使用されており、中鉄装備の生産・販売台数は2017−19年に3年連続で世界一となった。

 中国工程院の楊華勇院士は取材に対して、「中国は今後、直径18メートルのシールドマシンという世界記録に挑戦する。それはビルの6階に相当する高さとなる」と明らかにした。


※本稿は、科技日報「一千台!我国盾構機従零到世界第一」(2020年09月30日付4面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。