全プロセスを網羅した細胞産業パーク、昆明市にオープン
2020年11月19日 趙漢斌(科技日報記者)
ファクターとリソースが整った好循環モデルの産業チェーン
バイオ医薬と大健康産業(身体的健康のみならず、精神や心理、社会、環境、道徳等の全面的な健康を支える多岐な領域を含む。総合保健)の発展のために、雲南省はどのような先手を打てるか。先進技術と特色ある産業の融合において、「春城」の名で知られる昆明にはどんな優位性があるのだろうか。
雲南省昆明市を「中国の健康都市」に育て上げるための重要な足がかりとして、昆明細胞産業パークが10月15日に開園した。この特色あるパークは「一園一院六中心七要素胞十条」(1つのパーク、1つの研究院、6つのセンター、7つの要素、細胞産業の発展のための10カ条の措置)のモデルをベースに、ファクターとリソースが整った好循環モデルの産業チェーンのある全国一流の細胞産業の集約エリアおよび技術インキュベーションのプラットフォームを構築しようとしている。
細胞産業を創出し、「昆明モデル」を育成する
取材によれば、昆明細胞産業パークでは多くの国家級プラットフォームを統合し、保存、研究開発、生産、輸送、治療から設備に至るまでを一体化させた細胞産業の全産業チェーンを全面的に構築し、臨床ニーズと研究開発・製造、実用化と発展を密接に連動させる。中国西南地区に立脚しながら全国を対象とし、更に東南アジアまで及ぶ研究開発・実用化センターおよび創業・イノベーションプラットフォームとして、一流の細胞産業の科学技術イノベーションセンター、そして技術の発信地になろうとしている。
昆明細胞産業パークは滇池国家観光リゾート区の大漁片区にあり、専有面積は87.19ムー(約5.8ヘクタール)で、好立地で一流の生態環境に恵まれている。
「昆明細胞産業パークは、『細胞プロジェクト+病院の診療科+科学者チーム+資本』といういわば会社化した運営モデルをベースに、世界中から科学者チームと企業を誘致し、細胞治療および美容医療の新製品の発信地、新技術実用化のための第一選択の地として中国細胞産業の中核地となり、細胞産業における世界一流の科学技術イノベーションセンターを目指している」と担当者は語る。
関係筋によれば、2017年に国務院は昆明市を全国で3つの大健康産業モデル区の1つとして承認した。2019年に昆明市は細胞産業発展指導チームを設立し、細胞産業の発展を突破口として、大健康産業の全体の発展を牽引することを明確に示した。昆明市では大量の調査研究を土台に「要素+リソース+プラットフォーム+閉鎖型」の産業計画方針により、全国の優れた科学研究リソースを広く統合し、昆明市の実情を加味した上で、細胞産業の発展のための「昆明モデル」を作り上げた。
昆明ハイテク産業開発区で重点的に進められるバイオ医薬および大健康産業プロジェクトとして、これまでに昆明細胞産業パークでは雲南省食品薬品監督検験研究院、武漢珈創生物技術股份有限公司、雲南銀豊生物工程有限公司、雲南省細胞制備中心有限公司、雲南済慈再生医学研究院有限公司等、数十の研究機関および企業を誘致した。
そして、細胞産業パークとしての総合的な競争力をさらに高めるために、昆明ハイテク産業開発区では上半期に1,000万元(約1.55億円)の資金を先行的に割り当て、昆明細胞産業パークにおける「細胞の品質検査評価、保存、製造」の3つの共有プラットフォームや、「細胞産業の国家級イノベーション創業と国際移転・実用化・交流」の2つのセンター、並びに省級の「細胞関連の科学知識の普及・教育モデル基地」の建設を支援することとした。
細胞という抽象的な概念を多くの市民に知ってもらうために、細胞産業群イノベーションパーク科学普及館も建設され、館内には細胞産業の発展に関する展示エリアや没入型体験空間の双方向エリア、科学教育エリアも設置された。
多要素による産業集中を促す政策を計画
現在、世界のバイオテクノロジー分野ではブレイクスルーが加速し、産業化のスピードが上がり、技術移転や研究成果の実用化の周期もますます短縮されている。細胞治療を代表とする新技術が近年のバイオ医薬産業の発展における重要な原動力ととなり、細胞治療は将来の「医学における第3の柱」となることが予測されている。
関連データによれば、現在、世界ではすでに細胞治療製品が42種類発売されており、臨床試験の登録がなされているものは約7,900件ある。細胞治療にはまだ工学的な面や制御といった面で多くの課題が存在するが、基礎研究におけるブレイクスルーや臨床応用の急速な進展により、大きな産業空間が生まれるだろう。
昆明細胞産業パークの開園当日、胡宝国中国共産党昆明市委員会常務委員・副市長が昆明市の細胞産業の発展に関する政策措置を発表した。また、昆明市政府は中国医薬工業研究総院と「細胞産業の発展に向けた提携枠組み合意」を締結した。昆明細胞産業パークの臨床研究支援プラットフォームをリードする「6つのセンター」も協力団体と契約を結んだ。
胡氏によれば、今後数年間、昆明細胞産業パークは複数の国家級プラットフォームと連携し、昆明市の実情も加味しつつ「6つのセンター」の建設を高いレベルで推進し、「7つの要素」を保障に全国の優れた科学研究リソースを幅広く統合し、細胞産業の発展のための「一園一院六中心七要素胞十条」モデルを構築する。
「一園」(1つのパーク)とは昆明細胞産業パークを指し、世界中から研究チームと入居企業を誘致し、「研究開発--製造--保存--生産--臨床--実用化」を集約した細胞治療の全産業チェーンを構築する。「一院」(1つの研究院)とは中国科学院関連の研究所と昆明市の高等教育機関を拠点に、共同で設立された昆明細胞イノベーション研究院を指す。
「六中心」(6つのセンター)では検定検査センター、安全評価センター、臨床研究センター、製造センター、ビッグデータセンターと保存センターをカバーしており、産業発展を支える研究のプラットフォームである。そして、「七要素」(7つの要素)とは統合・計画、連盟、政策等の要素を通じて産業発展の保障体系を構築し、産業インキュベーションのプラットフォームと集積エリアを全面的に建設することをいう。
胡氏によれば、昆明市ではさらに「昆明市における細胞産業の質の高い発展に関する10ヵ条の措置」を制定・公布し、プロジェクトの誘致と企業の入居・発展のために全面的にサービスを提供し、臨床上のニーズ、研究開発・製造、応用・発展を牽引力に、独自の知的財産権またはコア技術を有するプロジェクトの昆明への誘致を支援する。その主な内容は、プラットフォームの建設に照準を合わせ、機能の形成を促すこと、要素の育成に照準を合わせ、産業発展を加速させること、そして保障措置に照準を合わせ、ビジネス環境を高めること等である。
※本稿は、科技日報「全流程細胞産業園在昆明整装啓程」(2020年10月28日付6面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。