青島理工大学:イノベーションによりボトルネックを克服し難題を解決
2020年12月17日 王健高(科技日報記者)、陳 偉、曹玉潔(科技日報特派員)
11月28日夜、中国の月探査機「嫦娥5号」が予定通り月周回軌道に進入した。今回のプロジェクトでも、長江学者である趙正旭氏が率いる青島理工大学・複雑ネットワーク・可視化研究所・宇宙飛行可視化チームが開発、製作した、月探索プロジェクト第3期テレオペレーション作業プラットフォームが重要な役割を担った。
国家の重大ニーズにフォーカスし、テクノロジー・イノベーション能力を向上させ、国家戦略と地域の発展のために積極的に関与し貢献することは、大学の負うべき責任である。青島理工大学党委員会の王亜軍書記は取材に対して「当大学は、『4つの対象』に的を絞り、テクノロジー・イノベーションモデルプロジェクトを実施し、科学研究体制改革を推進し、国・地域、業界のニーズに焦点を合わせて、古い業界の徹底的な変革、新興産業の質の高い発展を促進している」と説明する。
趙氏は、研究拠点に青島理工大学を選んだ理由について「理念が一致していたため、また、国家戦略に貢献できるため」と説明する。今年、趙氏率いるチームは「山東省先端設備デジタルツイン・可視化テレオペレーションプロジェクト実験室」の承認を受け、国家航天局スペースデブリモニタリング・応用センターなどと共同で実験室を立ち上げた。
制度革新が科学研究に活力を吹き込む
90後(1990年代生まれ)の若手博士である張彦彬教授は、国家自然基金プロジェクト、山東省重点研究開発計画などの政府支援の研究開発7プロジェクトの責任者を務めている。青島理工大学は多数の若手テクノロジー人材を輩出しており、30人が「若手テクノロジー英才養成計画」に選出され、成果を上げ始めている。
このような成果は、大学の科学研究環境やエコロジカル・イノベーション科学研究政策の最適化によるものだ。青島理工大学科技処の李長河処長は取材に対して「当大学は、積極的に他に先駆けてチャレンジし、大胆な取り組みや独自の改革を行い、土地柄に応じた最適な方法を講じ、テーマを明確にして改革を行い、関連の8つの制度・規則を修正、または打ち出して、イノベーション・クリエイトの活力を増進し、研究者が気軽に研究できるようサポートしている」と説明する。
同大学商学院の85後(85‐89年生まれ)の教授である雲楽鑫氏は、中国教育部(省)の人文社会科学二等賞を受賞し、今年青年泰山学者人材プロジェクトに選出された。また、建築固体廃棄物の資源化共通キーテクノロジー・産業化応用チームが、国家科学技術進歩二等賞を受賞した。さらに、同大学は国家自然科学基金168件、連合基金重点プロジェクト5件、科学技術部(省)重点研究開発計画課題11件の承認を受けたほか、第1期国家知的財産権試行大学にも指定されている。
特色ある学科が産業の高度化をバックアップ
高偉俊院士と賀可強院士が率いる土木建築チームは、教育部工程研究センターなどのプラットフォームを活用して、グリーン建築設計・スマート建造、重大地盤工学のダメージコントロール、構造工学防災減災、浜海交通プロジェクトの長期間運用などをめぐる難題を解決し、重大インフラ建設、新エネルギー・新材料、スマート海洋などの産業に貢献したことで、国家科学技術進歩二等賞を5件、省科学技術進歩一等賞を3件受賞した。
これらは、青島理工大学が次世代情報技術を通して、土木工学、機械工学、環境科学・エンジニアリング、建築計画などの優位性を誇る特色ある学科群の高度改革を進め、大学と企業、地域と協力する新たなスタイルを模索し、科学技術、教育、産業の融合加速を推進し、科学研究の質の高い発展をバックアップし、地域経済、社会建設にさらに多くの知識や人材、技術のサポートを提供する実例となっている。
李長河氏や郭峰氏、蘭紅波氏など専任の泰山学者6人からなる機械工学チームは、国家工程研究センターなどのプラットフォームを活用して、レーザー製造・スマート精密クリーン加工、マイクロ・ナノ付加製造、摩擦学・インタフェース工学、設備スマートモニタリング・騒音コントロールなどの分野のキーテクノロジーのブレイクスルーを実現し、先端設備産業と現代高効率農業の発展に寄与し、山東省技術発明一等賞1件、二等賞3件、教育部自然科学・技術発明二等賞それぞれ1件を受賞した。国家に突出した貢献をした若手専門家である畢学軍氏などが所属する環境学科チームは、国家工程研究センターの支援により、政府間協力重点モデルプロジェクトである世界初の「セミセントラル式」汚染物質総合処理・資源化システムを構築し、汚水処理・水環境改善の重大キーテクノロジーを開発して、水不足を解消するために中国南方地域の水を北方地域に送りこむプロジェクト「南水北調」や南四湖(昭陽湖、独山湖、南陽湖など)の水質改善、北京冬季五輪などの重点プロジェクトに存在する問題を解決して、国家科学技術進歩二等賞2件を受賞した。
科学研究成果が「象牙の塔」を出る
青島理工大学の泰山学者である若手研究者の郭思瑶教授は「青島西海岸新区住房・城郷建設局の臨時副局長を務めて約一年半になる。今年は、私が研究開発した新型ナノ軽質建材を青島鑫隆集団が応用・製品生産をスタートさせ、年間売上高は約1億元(約15.9億円)になる。このポストは自分の専門分野の能力を十分に発揮することができ、企業の第一線に立って業界のニーズも知ることができる」と話す。
同大学が展開する「百名博士進百企(100人の博士を100社の企業に送り込む)」計画により、若手教師のべ107人が企業78社に派遣され「テクノロジー特派員」として、研究成果の実用化や社会サービス業務などを担当し、縦断的にも横断的にも良好かつ現実的な成果を挙げている。今年、同大学は社会サービスの横断的プロジェクト326件を実現し、科学研究経費は6,106万3,900元(約9.7億円)に達し、また、研究成果実用化プロジェクトは107件実施された。
青島理工大学では、より多くの専門家、学者、教授が主体的に「象牙の塔」から出て、地域や企業の切迫したニーズをめぐり、研究成果の実用化をバックアップしている。うち、都市建築デジタル化技術、都市建築スマート建造技術などの分野では、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)、人工知能、ビッグデータなどの技術を積み重ね、都市建築クラウドCIM(コンストラクション インフォメーション モデリング/マネージメント)プラットフォームを構築し、3,520万平方メートルに及ぶ都市BIMを築き上げ、それらデータの価値は2億元(約31.8億円)を超え、既に中国の7都市で推進、応用されている。研究成果である「ポリイソシアミン酸エステルオキサジキシル/ポリウレタン/エポキシ材料および生産方法」は中国国内の空白を埋め、査定・株式参入の方式により青島国工高新材料有限公司で応用され、首鋼集団、青島地下鉄、招遠金鉱などの国防地下プロジェクト施設にも導入、使用されている。
※本稿は、科技日報「青島理工:科技創新破"堵点"、解"難点"」(2020年11月30日付4面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。