第175号
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協働ロボットの発展―低価格化よりもプラットフォーム化が重要に

2021年04月06日 馬愛平(科技日報記者)、劉平平(科技日報実習生)

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写真:視覚中国

もっと人間に寄り添い、もっと繋がれ―

メーカーから見れば、安い代替品の追求という論理には全く賛同できない。単なる価格競争や低価格戦略に頼っていては、協働ロボット市場の持続的な拡大を進めることはできない。ユーザーが重視する「コストパフォーマンス」という概念は、「安さ」ではなく「使いやすさ」であるはずだ。

曹宇男:艾利特(ELITE)機器人公司董事長兼CEO

 今年の春節聯歓晩会(旧正月の年越し番組)で、福の字を書くことのできる「書道ロボット」が注目を集め、その協働ロボットの巧みな操作が披露された。しかし、この協働ロボットにとってそれはほんの「小手調べ」で、本当の実力はそれをはるかに凌ぐ。

 協働ロボットは産業分野で大きな役割を果たしている。簡単に説明すれば、これまでの産業用ロボットは人との接触を分けることによって安全を確保し、自律的に作業を行ってきたが、協働ロボットは人と同じ空間の中で、または人と近距離で接触している状況で独立して、もしくは順番にタスクを行う。協働ロボットは登場以来、近代的な産業用ロボットの重要な一分野として注目され、近年、急速に成長している。

 高工機器人産業研究所(GGII)の予測によれば、2023年までに世界の協働ロボット販売台数は8万台に達し、市場規模は120億元に迫るだろう。このことは、2020年に始まった協働ロボットの投資ブーム以降、中国産協働ロボットがまた新たな急速成長の周期に入ったことを意味する。

「協働ロボットは生産力を向上させただけでなく、生産現場での関係性を変化させた。人々を煩雑な、または危険な、機械的な単純作業といった労働から解放し、高い付加価値のある作業に人間が知恵と能力を発揮できるようにした」と、艾利特(ELITE)機器人公司の曹宇男・董事長兼CEOは筆者の取材に答えた。「協働ロボットによって、真の意味でロボットは人と肩を並べて働けるようになった。この点から見れば、ロボットは人間の同僚となったのだ」。

「省力化」ではなく「人間に能力を与える」

「協働ロボットはマンマシン協働ロボットとも呼ばれ、柔軟な配置が可能で、安全で信頼性が高く、簡単に使いこなせることが最大の特徴で、従来の産業用ロボットに比べてユーザー体験が大幅に高められる」と曹氏は話す。

 その説明によれば、従来の産業用ロボットでは、作業員の安全確保のためにその作動範囲は安全柵の中に制限されていた。そして、ロボットの高精度、または高速の操作(溶接、スタック・運搬、バフ研磨など)を停止し、または制限した後に限り、作業員は安全柵の中に立ち入ることが許された。

 一方、協働ロボットは人と同じ空間の中で近い距離で協同作業を行うことができ、安全柵を設置する必要はない。つまり、作業員と同じ生産ラインで一緒に仕事をすることができ、作業員の安全を確保しながら、人と機械の協働作業に存在した障害を取り除くことができるのだ。

「協働ロボットは、『省力化』目的というよりは『人間に能力を与える』ためのものと理解する方がふさわしい」と曹氏は説明する。たとえば、従来の溶接ロボットでは、作業員は溶接の知識と一定のプログラミング能力を身につけている必要があったが、簡単なプログラミング機能を持つ協働ロボットではプログラミングというハードルが引き下げられ、溶接の経験しかない作業員でもインターフェースの設定に従えばプログラミングの操作が簡単にでき、楽に使用できる。

 安全で融通が利き、使用が簡単なのに加え、効率的なことも協働ロボットの大きな特長だ。従来の産業用ロボットは製造コストが高く、配置コストも高いなどの弱みがあり、中小企業の一部では導入に二の足を踏むこともあった。「協働ロボットを使えば生産サイクルが短くなるため、ライン停止による損失が減り、メンテナンスや生産ラインの変更などの潜在コストが節約でき、一般的な投資回収期間は12ヶ月以内だ。つまり、協働ロボットを1年使えば、労働者1人分の給与を節約できる」と曹氏は説く。

より多次元な作業分野に適応

 曹氏によると、市場判断に基づけば、協働ロボットの配置に適したシーンは大きく二つに分けられる。一つ目は協働ロボットにより実現可能な潜在市場の分野であり、無人搬送車(AGV)機能のモジュールを搭載した複合移載ロボットや電力ロボット、医療支援ロボットなどがある。二つ目は既存市場の分野で、自動車のライトとシリンダーブロックの締め付け作業のプロセスがあり、配置方式や空間到達性、総合的なコストなど、さまざまな次元から総合的に比較すれば、産業用ロボットより協働ロボットのほうがふさわしいと考えられる。

 従来の産業用ロボットに比べ、軽量化が進み、柔軟性が高い協働ロボットは、組み立てや締め付け、工作機械での材料の仕込み、資材の検査、ピックアンドプレース、磨き上げやバフ研磨などの分野に向いており、作業員の安全を確保する必要があるものの、設置空間が限られるなどの作業エリア内の問題を効果的に解決することができる。

 現在、3C(Computer、Communication、Consumer Electronics)産業における協働ロボットの重要性が顕著になりつつある。3Cとはコンピュータ、通信、家電製品の総称である。これらの製品には世代交代が速く、部品が複雑であることなどの特徴があり、多くの工場でさまざまな型番にわたるシリーズの製品を短時間のうちに生産することが要求され、生産ラインではスピーディな編成をするプレッシャーにさらされる。

 例えば、検査作業ステーションであれば数時間ごとに生産ラインを切り替える必要があるが、従来型マシンのプラットフォームでの材料の仕込みでは、ライン切り替えのニーズを満たすのは無理だ」と曹氏は説明する。「しかし、協働ロボットのロボットアームならモジュール化されたプログラムが集積されている。このため、生産ラインの切り替えの際には操作担当者がプログラムを直接呼び出してロボットにスピーディに指令を出し、切り替えや試験調整にかかる時間を大幅に縮め、短時間で生産ラインを切り替えるという要求を満たすことができる」。

 新たな消費や小売の分野でも、協働ロボットは異彩を放つ。無人スーパーや自動販売機、顔識別、非接触決済など、新しい概念が次々に登場しているが、いずれも装置やソフトウェアによって「近距離」でのマンマシンインタラクションを実現したものだ。

 上述の分野以外でも、協働ロボットは物流・包装、医療、食品などの領域でもその役割がますます顕著になっている。協働ロボットによって人と機械のよりよい連携が実現し、互いの長所が存分に発揮され、より多次元な作業領域に適応できるようになりつつある。「ロボットの急速な発展によって、人が機械に取って代わられるのではなく、将来的には人と機械の協働がノーマルな状態となるだろう」と専門家は予測する。

プラットフォーム化、コンテナ化が打開策か

 技術の進歩と製造コストの低減に伴い、協働ロボットは市場受容性が高まりつつあるが、競争も激化している。GGIIの統計によれば、世界の協働ロボットメーカーは2016年には約30社あり、このうち中国の協働ロボットメーカーが約15社を占めたが、2020年になると世界のメーカー数は110社以上となり、中国メーカーも75社を超えた。

「メーカーから見れば、安い代替品の追求という論理には全く賛同できない。単なる価格競争や低価格戦略に頼っていては、協働ロボット市場の持続的な拡大を進めることはできない。ユーザーが重視する『コストパフォーマンス』という概念は、『安さ』ではなく『使いやすさ』であるはずだ」と曹氏は強調する。

 中国産協働ロボットの発展もこの論理の正しさを証明している。デンマークの歴史あるロボットメーカー、ユニバーサルロボット(UR)社と比べると、国内販売台数で一位を誇る中国の協働ロボットメーカーの国内販売価格はUR製品の半値以下で、相当の価格優位性があるといえるが、その販売総額はUR社の50%にも満たない。

「つまり、低価格戦略では協働ロボットの既存市場を奪うどころか、複製可能な、大量の実用シーンさえ開拓することができない。協働ロボット市場の特徴はロングテールなことだ。ほとんどのニーズは開発された既存市場にあり、テールの部分に存在する既存市場のニーズはカスタマイズされ、分散されているが、累加すれば既存市場より大きな市場が生まれる。この市場を勝ち取る鍵は、『術業に専攻有り』(韓愈『師説』の一節)にある」と曹氏は言う。

 曹氏の考えでは、協働ロボットは今なおOA化またはフレキシブル化を実現するツールに過ぎないが、その爆発的な市場ニーズを引き出すには川上産業から川下産業まで、つまりロボットメーカーから部品まで、さらにはそのエコシステム(各種エンドエフェクタやセンサ、ソフトウェア)からSI事業者、エンドユーザーに至るまでの協調が必要だ。協働ロボットは、実用化に向けてさらに磨き上げる必要があるが、プラットフォーム化の優勢は顕著になりつつある。

「我々の戦略は世界の先進水準に照準を合わせ、製品力を深化させることだ。したがって、我々が発表したプラットフォーム級CS協働ロボットの新製品は、まったく新しいシステムインフラに基づいている。操作インターフェースとプログラミング方式を含むソフトウェアやデモンストレータ、ロボット本体を含むハードウェアを全面的にレベルアップさせ、次世代協働ロボットの柔軟性と開放性、そしてマンマシンシステムにおけるOS技術の最新成果を示したものだ」と曹氏は語る。

 プラットフォーム化への決意こそ、協働ロボットメーカーの成長の打開策だと曹氏は考える。「プラットフォーム化の本質は、使いやすく、安全、フレキシブルで拡張性のある協働ロボット本体とOSの開発にある。ユーザーやSI事業者、エンドエフェクタやソフトウェア、ハードウェアの提携パートナー向けに『使いやすい』キャリアを提供することによって協働ロボットをシンプルなものにし、技術サイドから実用サイドへと着地させることだ」と曹氏は言う。協働ロボットは現在の姿まで成長した結果、競争の焦点は製品そのものやコストではなく、エンドユーザーのニーズにいかに対応するかに移った。

「今後、協働ロボットをさらに発展させ、ロボットと人が肩を並べて働く世界を実現させるには、ロボットメーカーから見れば、プラットフォーム化、コンテナ化された製品が鍵となるだろう」と曹氏は予想する。


※本稿は、科技日報「協作機器人発展不能靠廉価要靠平台化」(2021年2月22日付6面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。