第176号
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「十四五」期間中、石炭火力発電は「再建」か「再見(サヨナラ)」か?

2021年05月27日 李 禾(科技日報記者)

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画像提供:視覚中国

石炭火力発電業界には現在、その規模を継続的に縮小させるという方向性が非常に明確になった。電力システムの低炭素への転換が加速する中、同業界は、主力エネルギーとしてのその立場は今後次第に失われ、クリーンエネルギーと調和しながら発展することが必要になることをはっきりと認識する必要がある―。

馮相昭(生態環境部環境・経済政策研究センター研究員)

 中国が「2030年までにCO2排出量ピークアウト、2060年までにカーボンニュートラルを実現する」という目標を掲げて以降、複数のエネルギー関連の中央企業(中央政府直属の国有企業)が、カーボンニュートラル実現に向けた計画とルートマップを制定している。例えば、三峡集団は、中国政府の目標より20年前倒しとなる2040年をめどにカーボンニュートラルの実現を目指す ▽国家エネルギー集団は、「再生可能エネルギーの新規設備容量7,000--8,000万キロワット」を目標に掲げている ▽大唐集団は、「2025年をめどに、非化石エネルギー設備の割合を50%以上にして、中国政府の目標より5年前倒しでCO2排出量ピークアウトを目指す」という目標を掲げている ▽華能集団は、「新エネルギー、原子力発電、水力発電の三大基盤の構築に全力で取り組み、石炭、カーボンの利用を積極的に減らす」という目標を掲げている。

 各エネルギー関連の中央企業が続々と、再生可能エネルギーを大々的に発展させることを、カーボンニュートラル実現のための重要措置とする中、中国の電力業界の半分を占めている石炭火力発電には、第14次五カ年計画(2021‐25年、以下「十四五」)期間中、どんな変化が待ち受けているのだろうか?

石炭の使用量がずば抜けて多いのは汚染物質・CO2排出削減の足かせ

 国際的非営利団体「グローバル・エネルギー・インターコネクション発展協力機構(GEIDCO)」が発表した「中国の2030年をめどにしたCO2排出量ピークアウトに関する研究報告」(以下「報告」)によると、2019年、中国のエネルギー消費量の58%は石炭が提供し、CO2総排出量の80%は石炭が原因だった。中国の石炭火力発電設備容量は10億4,000万キロワットで世界の石炭火力発電設備容量の半分を占め、エネルギー消費によるCO2排出量は、世界の平均水準を30%以上上回っている。

 石炭燃焼は、温室効果ガス排出、大気汚染の主な原因だ。石炭の使用量がずば抜けて多い構造は、汚染物質・CO2排出削減の目標実現の大きな足かせとなる。中国科学院大気物理研究所の正研究員級シニアエンジニア・呉林氏は、「CO2排出量ピークアウトやカーボンニュートラルの実現のカギとなるのがエネルギー問題だ。人為的な温室効果ガス排出は主に、化石燃料の燃焼によって発生するものだ。中国では現在、化石エネルギーは主に、石炭火力発電を中心にしている。このようなエネルギー構造が大きく変わらない限り、CO2排出量ピークアウトやカーボンニュートラルの実現は不可能だ」と指摘する。

 しかし、カーボンニュートラル実現に向けて、大きなプレッシャーがかかっているにもかかわらず、中国の新規石炭火力発電設備認可量は依然として増加している。統計によると、2018--20年、中国の老朽化した石炭火力発電設備3,000万キロワット以上の淘汰が進んだものの、2020年の1年だけでも、認可された石炭火力発電プロジェクトの新規設備容量は3,400万キロワット以上で、3年間で淘汰された容量を上回っていた。大気汚染対策重点エリアのうち、12省・市の石炭火力発電設備容量が依然として増加している。うち、河北省邯鄲市、山東省菏沢市、安徽省、江蘇省の石炭火力発電プロジェクト5件が新たに認可を受け、総設備容量は600万キロワット以上となっている。

 2021年1月に発表された、中央政府の生態環境保護・監督報告は、「一部の重点エリアでは、規定に反して、石炭火力発電プロジェクトが新たに認可されており、大気汚染重点対策エリアのエネルギー生産能力が厳格に抑制されていはいない」と指摘している。

 北京大学エネルギー研究院の副研究員で、気候変動・エネルギーモデル転換プロジェクトの副主任を務める康俊傑氏は、「『十四五』の期間に、中国には約1億キロワット分の建設中、または認可され今後建設される石炭火力発電設備があることを考えると、技術のストックやモデルプロジェクトを除いて、今後は、新規の商用石炭火力発電設備建設を認可するべきではない。そして、5,000万キロワット以上の遅れた石炭火力発電設備をさらに淘汰させるために努力し、2025年までに、石炭火力発電装置容量のピークが11億5,000万キロワットとなる目標の達成を実現させる。さらに、石炭火力発電設備を厳格に抑制して、電力システムのクリーン化、低炭素化へのモデル転換を大々的に促進し、電力業界の温室効果ガス排出の前倒しのピークアウトを促進する」と主張した。

石炭火力発電を主力エネルギーから調整的エネルギーに

 2020年、中国は石炭火力発電プロジェクトに対してある程度緩和したのは、主にエネルギーの需要が高まり続けているからだ。清華大学の気候変動・持続可能な発展研究院・学術委員会の会長を務める何建坤教授は、「中国は現在、引き続き工業化と都市化の発展の中・後期段階に位置しており、今後も経済が急速に発展するという期待は高い。省エネ、温室効果ガス排出減少を強化し続けているにもかかわらず、エネルギーの全体的な需要は今後も一定期間高まり続けるうえ、CO2排出量も緩やかな増加傾向となるだろう」と予想する。

「報告」によると、2030年まで、中国の経済は毎年平均5%ほどのペースを保って成長し、エネルギーの需要は毎年平均2%ほどのペースで増加すると予想されている。工業化と都市化の急速な発展により、第二次産業の付加価値額が占める割合は39%と、エネルギー多消費型産業が占める割合が依然として高い。従来の成長スタイルでは、大量の温室効果ガス排出が発生する。そのため、汚染物質の排出を抑制し、CO2排出量ピークアウトとカーボンニュートラル実現を目指しながら、経済成長も維持するというのは、非常に大きなチャレンジとなる。

 何教授は、「『十四五』期間中、石炭の消費量増加を何としてでも抑制し、石炭消費量の『増加0』実現を目指し、同期間の終盤には、石炭消費を安定してピークアウトさせるとともに持続的に低下させるために努力する。そして『第15次五カ年計画(2026‐30年)』期間中には、石油の消費量のピークアウトを実現するよう取り組むことができる。天然ガスの消費増加がもたらすCO2排出量の増加は、石炭消費量が減少することによるCO2排出量の減少をもって、相殺することができる」との見方を示す。

 生態環境部環境・経済政策研究センターの研究員・馮相昭氏は、「石炭火力発電業界は既に、クリーンエネルギーにその座をさらに譲り、主力エネルギーから、調整的エネルギーへと変わる必要がある段階に入っている。国際エネルギー機関(IEA)は、電力システムのモデル転換が加速しており、石炭火力発電の大幅な削減が当然の流れと予測している」と指摘する。

 世界の気候変動対策の長期目標を確立した「パリ協定」は、今世紀末の世界の気温上昇を、工業化前の水準と比べて、2度以内に抑えることを目指し、可能なら1.5度に抑えるという努力目標を掲げている。清華大学が発表した「中国の長期低炭素発展戦略・モデル転換のルート研究」の成果によると、2度という目標を達成するために、中国は2050年をめどに、非化石エネルギーが占める割合を70%以上、非化石エネルギー電力が発電総量に占める割合を約90%達成させなければならない。そして、新エネルギー、再生可能エネルギーを主体とする、CO2排出量がほぼ0のエネルギー体系をほぼ完成させ、エネルギーの安全な供給を根本から保障し、源から通常の汚染物質排出を抑制する。

再生可能エネルギーの発展にサポートを提供

 石炭火力発電は主力エネルギーから調整的エネルギーに変わるのに対して、風力発電や太陽光発電などの再生可能エネルギーは、代替エネルギーから主力エネルギーに変わることになっている。しかし、風力発電や太陽光発電は、天候による変動が大きいため、電力システムの出力をいかに安定させ、安全な電気利用を確保するのだろうか。

 中国エネルギー研究会・再生可能エネルギー専門委員会の王衛権・副事務局長は、「そのためには、送電網や柔軟性のある電源を基盤としなければならず、石炭火力発電はその面で重要な役割を果たす。今後しばらくの間、石炭火力発電は、再生可能エネルギーと共存することになる。石炭火力発電の利用時間数は減少し、占める割合も年々減少し、より多くの石炭火力発電が柔軟に改造され、再生可能エネルギーの発展のために基盤を提供し、再生可能エネルギーが主力エネルギーになるようサポートする」との見解を述べた。

 そして、「イノベーションこそが、今後の問題を根本的に解決する手段で、技術のイノベーション、スタイルのイノベーションを通して、再生可能エネルギーの発展のために新たな原動力を提供する。また、体制やメカニズムのイノベーションを通して、政策とメカニズムのボトルネックを解消し、発展の原動力を活性化する。例えば、多くの地域が今、エネルギー消費総量とエネルギー消費の強度を抑制している。将来的には、非化石エネルギーは強度だけを抑制し、総量を抑制しない可能性がある」と強調する。

 国家エネルギー局の統計によると、2020年末の時点で、中国の再生可能エネルギー設備の総容量は前年同期比17.5%増の約9億3,400万キロワットだった。内訳は、水力発電が3億7,000万キロワット、風力発電が2億8,100万キロワット、太陽光発電が2億5,300万キロワット、バイオマス発電が約2,952万キロワットだった。2011--20年の再生可能エネルギー年の増加率は、10--20%の間をキープしていた。

 馮氏は、「石炭火力発電業界には現在、その規模を継続的に縮小させるという、非常にはっきりとした方向性がある。電力システムの低炭素への転換が加速しながら進む中、同業界は、主力エネルギーとしての優位性は今後次第に失われ、クリーンエネルギーと調和しながら発展することが必要になることをはっきり認識する必要がある。新規石炭火力発電設備の建設プロジェクトが必要であるのなら、同時に、CO2回収・利用・貯蔵(CCUS)技術を確立し、CCUS低炭素化改造などを積極的に展開することを提案したい」と語る。

 何教授は、「2030年までに、CO2排出量ピークアウトを実現するために、『十四五』期間は非常に重要な期間となる。同期間中、非化石エネルギーが占める割合、国内総生産(GDP)当たりの炭素強度などの指標が低下するように対策を強化し、社会に対して、低炭素へのモデル転換の強いシグナルを出し、政策誘導を強化する必要がある。2030年までに、CO2排出量ピークアウトを実現するというのは、長期的なカーボンニュートラルの目標を実現するための、段階的目標だ。CO2排出量ピークアウトの時期が早いほど、そして、ピーク値が低いほど、長期的なカーボンニュートラル目標実現の助けになる。そうでなければ、より多くのコストと代価を支払うことになるだろう」と強調する。


※本稿は、科技日報「"十四五"期間 煤電是"再建"還是"再見"」(2021年4月13日付6面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。