合蕪蚌自創区―特色ある優位性を発揮、将来の発展は「三高」に照準
2021年05月19日 呉長鋒(科技日報記者)
合蕪蚌自創区内の中国電子科技集団公司第38研究所が開発した高性能77GHzミリメートル波チップ(提供・取材対象者)
第14次五カ年計画(2021-2025年)を前にして、合蕪蚌自創区の建設は「三城三区多園(3都市・3つの開発区・複数の産業パーク)」という空間的枠組みをベースに、レベルの高いイノベーション型産業エリアを作り上げ、成長性の高いイノベーション型企業を育成し、付加価値の高いイノベーション型産業を発展させ、合蕪蚌自創区を産業イノベーション・リーディングエリアと科学技術研究成果実用化モデルエリアにしていく(程雪涛・安徽省科学技術庁副庁長)。
3月22日、合蕪蚌自主創新示範区(合肥・蕪湖・蚌埠自主イノベーションモデルエリア。以下「合蕪蚌自創区」)が明らかにしたところによると、初の国産量子コンピューター・オペレーションシステム「本源司南」が安徽省合肥市で正式に発表された。また、中国電子科技集団公司第38研究所が開発した高性能77GHzミリメートル波チップとモジュールは、世界のミリメートル波AiPアンテナの最長探知距離記録を更新した。
2020年、合蕪蚌自創区は多くの困難に打ち勝ち、素晴らしい業績を残した。ハイテク産業の生産額と増加値が前年同期比15.2%増、13.8%増を達成し、それぞれ省全体の48%、48.4%を占めた。また、技術輸出契約の成約額は450億5,600万元(約7,520億円)に達し、技術導入契約の成約額は562億2900万元(約9,390億円)と、それぞれ省全体の74.8%、49.7%を占めた。また年間の新規発明特許授権数は1万1,167件で、2020年末時点で保有する有効発明特許は5万5,720件に上る。合肥、蕪湖、蚌埠の各ハイテク産業開発区は全国169カ所の国家ハイテク産業開発区の最新総合ランキングで、それぞれ10位、40位、51位につけている。
独自のイノベーションを発信、イノベーション成果の供給を引き続き増強<
地球から50万メートル離れた宇宙で、世界初の量子科学実験衛星「墨子号」がその翼を広げて飛翔し、世界初の1千キロメートル級量子セキュア通信「京滬幹線」と連携し、中国の量子通信技術が世界を「リードする」というストーリーを紡ぎ、安徽省のイノベーション発展の典型的な代表となった。
独自のイノベーションは「技術革新の源泉」だ。独自に研究開発され、全国で他に先駆けて生産を開始したダイナミック・ランダム・アクセス・メモリチップ。全国で初めて独自研究開発され、ラインオフした8.5世代超薄型フロートガラス基板。キーデバイスとして「嫦娥4号」の人類探査機として初の月の裏側への軟着陸を保障したバッファロッド。火星探査機「天問1号」の飛行を支えた6つの科学研究機関・企業の最新成果。衛星測位システム「北斗」への3,000以上の部品製品提供。「高分7号」衛星への高性能ダンパーなどのキーデバイス提供。合蕪蚌自創区のキーとなる分野から生まれたこれらのイノベーションは、「追いつき、並ぶ」段階から「並び、リードする」段階へと向かいつつある。
注目を集めた量子コンピューター「九章」プロトタイプマシンから、国際熱核融合実験炉ITERキーデバイスの組立検収、そして新型水素水化合物の初発見まで、独自のイノベーションが続いていることの背景には、長期にわたる蓄積と研究開発への投入を絶えず増やしてきたことがある。
「投資の多元化、運営の市場化、研究開発の産業化、管理の現代化」方式により、2020年、合蕪蚌自創区では計34社が新たに省級新型研究開発機関として認定された。そのうち、中国科学技術大学先進技術研究院はすでに共同実験室を61カ所設置し、企業をサポートして共通の難題を793件解決し、その契約金額は3億1200万元に及んだ。各種特許を261件出願し、発明特許授権数は77件に上る。2020年12月の時点で、合蕪蚌自創区には省実験室が計13カ所、省技術イノベーションセンターが10カ所ある。
安徽省科技庁成果実用化・区域イノベーション処の李林処長は取材に対し、「合蕪蚌自創区の研究開発投入強度は2008年の1.87%から2018年には2.9%に高まり、研究開発費投入は54億元(約902億円)から401億2,000万元(約6,700億円)に増え、省全体に占める割合は55.2%から61.8%に高まった」と述べた。李処長によると、合蕪蚌自創区の発明特許出願数は2008年の1,900万件から2019年には3万5,000件に増え、年平均で30.5%増加。また、発明特許授権数は346件から9,073件に増え、年平均で34.6%増加した。2008年以降、合蕪蚌自創区は109の国家級科学技術奨励を受けており、省全体の84.5%を占めるという。
産業クラスターが発展、イノベーション産業の新拠点が急速に台頭
2008年、安徽省は合蕪蚌自創区の建設をスタートさせ、合肥、蕪湖、蚌埠の各ハイテク産業開発区は、イノベーション型産業の高度化、イノベーション型企業の育成、イノベーション人材の誘致、イノベーションの担い手の育成、イノベーションプラットフォームの構築、イノベーション環境の最適化という「六大プロジェクト」を全面的に実施した。2016年、国務院は合蕪蚌自創区が正式に始動し、産業イノベーション・リーディングエリアを目指すことを承認した。
合肥ハイテク産業開発区では、スマート音声産業が成長しつつある。2020年、合肥「中国声谷(チャイナ・スピーチ・バレー)」の入居企業は1,024社に達し、生産額は1,060億元(約1兆7,700億円)に達した。蕪湖ハイテク産業開発区では、ロボットが市全体の産業を代表する新たな名刺的存在となっており、現在すでに川上から川下に至る重点ロボット企業128社が集まっている。2020年1-10月度、蕪湖のロボット生産拠点における一定規模以上企業の工業生産額は前年同期比で14.5%増加し、市全体における一定規模以上企業の工業生産額のうち4.6%を占めた。蚌埠ハイテク産業開発区では、シリカベース新材料産業が勢いよく発展している。0.12ミリメートル超薄型フロート電子タッチ制御ガラスが薄さの世界記録を更新し、8.5世代TFT-LCD超薄型フロートガラス基板が初の国産化を実現した。イノベーション駆動による力強い原動力をよりどころとして、合蕪蚌自創区産業イノベーション拠点が急速に台頭しつつある。
合蕪蚌自創区は総合的な国家科学センターと産業イノベーションセンターの建設をめぐり、新エネルギー車や新型ディスプレイ、ロボットなど複数の重大新興産業拠点の建設を加速し、テラヘルツチップやプレシジョンメディシン(精密医療)など複数の重大新興産業プロジェクトを着実に推進し、量子通信と量子計算、スマートカー、グラフェンなど複数の重大新興産業専門プロジェクトを組織・実施し、イノベーション型現代産業体系の構築を加速させている。
データによると、現在、合蕪蚌自創区のハイテク企業数は4,763社に達し、前年比で28.4%増加し、省全体に占める割合は55.6%に達している。合蕪蚌自創区のGDPは2008年の2,900億9,000万元(約4兆8,450億円)から2019年には1兆5,085億元(約25兆1,920億円)まで増加し、年平均で16.2%成長。省全体に占める割合は2008年の32.7%から2019年には40.6%まで上がり、省全体のGDPと財政収入の4割以上、科学技術成果の5割以上、輸出入額の6割以上に貢献し、省全体の経済・社会発展においてリードと牽引の役割を発揮した。
政策と資源の連動で、良好な産業環境を生み出す
昨年以来、合蕪蚌自創区の皖儀科技、科大国盾、科威爾電源、会通新材料、江航装備など企業7社が相次いでイノベーションボードに上場し、「第14次五カ年計画」の幸先のよいスタートを予見させるものとなった。
安徽省科学技術庁の程雪涛副庁長は、「第14次五カ年計画を前にして、合蕪蚌自創区の建設は『三城三区多園(3都市・3つの開発区・複数の産業パーク)』という空間的枠組みをベースに、レベルの高いイノベーション型産業エリアを作り上げ、成長性の高いイノベーション型企業を育成し、付加価値の高いイノベーション型産業を発展させ、合蕪蚌自創区を産業イノベーション・リーディングエリアと科学技術研究成果実用化モデルエリアにしていく」と述べた。程副庁長は、成長性の高いイノベーション型企業を育成し、付加価値の高いイノベーション型産業を発展させ、レベルの高いイノベーション型産業エリアを作り上げることが、第14次五カ年計画期間における合蕪蚌自創区の新たな発展目標になると考えている。
程副庁長は取材に対し、「リーダー型企業が『全体を背負って立つ』ことができるよう力を入れていく。独自の知的財産権を持ち、研究開発の基礎が良好で、技術イノベーション力が強く、業界をリードするイノベーション型トップ企業を選ぶことで、科学技術の難関突破、人材導入、環境型への改造、市場開拓などの面で的を絞った支援をしていく」と述べた。さらに、「こうしたことをベースにして、中小企業が『あらゆるところにある』ようにすることにも力を注いでいく。イノベーション型企業育成の『小昇高』計画(科学技術型中小企業をハイテク企業に育成する計画)をさらに実施し、小規模のハイテク企業が早急に一定規模に達することができるよう支援し、税収優遇措置、ストックインセンティブ、財政による事後補助などのインセンティブ効果を発揮し、業界の『隠れたトップ』や『小さな巨人』、『種目別チャンピオン』を育成していく」とした。
また程副庁長は、「現代化された重大新興産業拠点の建設、重大新興産業プロジェクト、重大新興産業専門プロジェクトを統一的に推進していくことで、『中国声谷』産業園、航空産業園などの建設推進を加速する。また、新型ディスプレイや人工知能(AI)、新エネルギー車、ロボット、シリコンベースの新材料など戦略的新興産業拠点の建設を支援し、川上から川下の関連企業の集中加速を促し、産業チェーンをさらに延伸し、国際的な競争力を持つ先進製造業クラスターを育成していきたい」と述べた。第14次五カ年計画期間中、条件を備えたパークに優先的に重点実験室や技術イノベーションセンターなど各種科学研究拠点を配置し、イノベーション資源を集中させ、イノベーションサービスのレベルを高めることを支援していく」という。
程副庁長はさらに、「産業発展のニーズに焦点を合わせて主導し、パークの機能を引き続き最適化・改善し、クラウドイノベーション空間や科学技術企業インキュベーターなど起業サービスプラットフォームを増やすことを奨励し、公共技術サービスプラットフォームを積極的に構築し、研究開発・設計、技術移転、起業インキュベーション、検査検測、知的財産権、科学技術コンサルティングなど科学技術サービスの新興業態を大いに発展させ、産業チェーンと金融チェーンの精確なリンクを促進し、良好な産業環境の育成と『イノベーションがしやすい』環境・雰囲気の醸成に努めていく」と述べた。
※本稿は、科技日報「合蕪蚌自創区: 発揮特色優勢,未来発展瞄准"三高"」(2021年3月25日付7面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。