第176号
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中国発展の新たな黄金時代を切り開く

2021年05月27日 胥大偉/『中国新聞週刊』記者江瑞/翻訳

第13期全国人民代表大会第4回会議で李克強総理は政府活動報告をおこない、第14次五カ年計画の主要目標と任務について言及した。新たな発展に向けて舵を切る最初の5年がいよいよ始まる。中国は発展の新たな黄金時代を切り開くべく、30年先の発展を見据えた第一歩を踏み出した

 小康社会〔ややゆとりのある社会〕の全面的完成という百年目標の歴史的な達成をみた後、中国は2つ目の百年に向け新たな航海に乗り出そうとしている。

 今後30年の中国の国家発展戦略は、2035年までに社会主義現代化をほぼ実現し、今世紀半ばまでに社会主義現代化強国を建設するという2段構えになっている。

 30年にわたる社会主義現代化建設の新たな始まりである五カ年計画として、第14次五カ年計画には特別な意義がある。中国共産党中央党校(国家行政学院)教授の辛鳴(シン・ミン)氏によると、中国の全面的現代化は、小康社会の全面的完成というハイレベルなスタートラインから始まるものであり、全面的小康社会から全面的現代化へという中国社会の重要な転換点となるのが正にこの第14次五カ年計画であるという。

「発展」という理念が変化するにつれ、中国の五カ年計画は、経済の発展計画から総合的な国家発展計画へと変化しており、計画の制定プロセスも急速に科学化、民主化、規範化され、一連の規範的段取りが形成されるようになった。中国人民大学国家発展・戦略研究院研究員で公共管理学院教授の馬亮(マー・リアン)氏は、次のように感じている。中国の長期計画は、計画を立てたら必ず実行するという有言実行の精神を堅持しており、羅針盤および指揮棒としての計画の役割がますます明確に打ち出されている。

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新疆ウイグル自治区ハミ市の風力発電設備製造基地で溶接作業中の労働者。写真/IC

五カ年計画は国家目標を実現するための成長促進ツール

 香港中文大学(深圳)グローバル・当代中国高等研究院院長の鄭永年(ジョン・ヨンニエン)氏は次のように言う。「中国共産党は使命を持った政党であり、人民に公約した使命を実現することで政権を行使してきた。中国共産党は果たすべき使命の実現に向けて、5年ひいてはそれ以上の長期計画を通じ、長期的な利益を考慮することのできる政党である」

 1953年5月14日、中国は第1次五カ年計画をスタートさせた。主な目標は中国工業化の基礎を築くことだった。

 1957年末、第1次五カ年計画は予定よりも早く目標数値を大幅に超えて達成され、飛行機製造、自動車、トラクター、発電設備、鉱山設備、重機・精密機器、国防工業などの産業部門が新たに設立された。中央党史・文献研究院研究員の石建国(シー・ジエングオ)氏は、第1次五カ年計画は実際には策定と実行が同時進行で進められた五カ年計画で、同期間中に、計画は5回も変更されたと指摘する。

 しかし、第1次五カ年計画の終了後、五カ年計画の策定および実施は紆余曲折の道をたどることになる。中国社会科学院当代中国研究所研究員の武力(ウー・リー)氏によると、1956年に社会主義的改造が完了した後、中国は単一公有制の計画経済の時代に突入し、五カ年計画は指令的性格を持つ計画へと変化した。まだ工業化の前期段階にあった中国は、計画策定の根拠となっていた各種資源調査や統計情報がリアルタイムで取得できなかったために、計画の策定は困難を極めるようになった。

 五カ年計画を用いて経済・社会の発展を指導するというのは、中国共産党の重要な国政運営手段であるが、問題はいかに科学的に国の発展目標を設定するかという点にある。第6次五カ年計画からは、過去の教訓を生かし、科学的かつ合理的な目標設定をするようになった。特に第9次五カ年計画以降は、計画策定プロセスの科学化、民主化、規範化が加速している。

 清華大学国情研究院副院長の鄢一龍(イエン・イーロン)氏は、五カ年計画に基づく中央政府の政策決定プロセスを、各方面の知恵を結集し、民主に科学的思考を取り込む意見集積型の政策決定モデルだと評価する。鄢一龍氏によると、五カ年計画の政策決定は3層に分かれている。政策決定層は文書の起草を指導し、全体の方向性を把握し、意見を出し、チェックをおこなうとともに、最終的な決定を下す。計画起草層は各方面の意見をまとめ、文書の起草作業の責務を負う。参与層は関連部門および地方、全国人民代表大会常務委員会、専門委員会メンバー、全国政治協商会議、シンクタンクの他、一般大衆までをも含み、問題提起をおこなう。

 辛鳴氏は「五カ年計画は、党が計画案を提出し、人民代表大会が審議をおこなったものが、国家発展計画となる。これは、党・政府・大衆の三者が互いに力を合わせ、それぞれの役割を果たした成果だと言える」と言う。

 また馬亮氏曰く、「現在の五カ年計画は、多方面の人々が参与することで、科学性と民主性を確保して策定されている。まず、専門家が深く関わっている。科学技術分野の専門家のみならず、政府部門の実務専門家も含まれ、専門家の参与によって計画の科学性が確保されている。次に、大衆が深く参与している。さらに、計画の策定および意見募集のプロセスにおいては、各級政府部門や関連団体の意見および提案をできるだけ幅広く汲み取り、何度も報告・下達を繰り返して意見を一致させ共通認識を形成し、計画が順調に実施されるための基盤をつくっている。最後に、計画の起草、査読、審議、討論において比較的規範化された段取りが形成されている」

 五カ年計画策定時の科学性・規範性が強化されたことで、中国は極めて高い国家目標実現力を発揮している。例えば第11次五カ年計画では、22の指標のうち20が、第12次五カ年計画では24の指標のうち23が達成された。また、2018年末に国家発展改革委員会が発表した第13次五カ年計画の中間評価報告書では、綱要で提示された25の主要指標が順調に進展し、2指標は早期達成を実現し、19指標は所期の進度を達成していることが示されている。

 五カ年計画は、中国が国家目標を実現するための成長促進ツールとして目標の管理体制を整備し、計画で提示された大量の量的指標も、国家目標の実現ルート明確化を促している、と鄢一龍氏はみている。

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重慶市全域をカバーするデジタル交通IoTビッグデータサービス。市内全域の交通状況に対し、全天候型でデータ収集・クラウド分析をおこなう。写真/中国新聞社

計画と市場との関係調整

 国家計画は複雑な経済・社会のシステム工学であり、いかに計画と市場との関係を調整するかが肝要になってくる。

 1990年代に入り、一時「国家計画失敗論」が取り沙汰された。その論点は、市場経済において国家計画は果たして可能かということだった。世界銀行が毎年発表している世界開発報告の1996年版「計画経済から市場経済へ」では、国家計画体制に対し、その深層における効率の低さから、本質的には実行可能性がない、との歴史的「判決」が下された。旧社会主義国の一部は国家計画を廃止し、西側の資本主義制度に方向転換するようになった。しかし、これらの「転向国家」は、長く苦しい「ショック療法」を経験したにもかかわらず、1人当たりのGDPは20年経っても方向転換当時の水準まで回復していない。

 中国が選んだのは、市場経済に転換しつつ、中長期計画を通じて国の発展を推進するという全く異なる道筋だった。英ケンブリッジ大学教授のピーター・ノーラン氏は、旧ソ連の方向転換失敗の教訓は、指令経済と国家計画を混同し、指令経済を廃止すると同時に計画も取り消してしまったこと、中国の成功要因は両者を分離したことだと分析している。

 1980年代末から90年代初頭にかけての「計画」か「市場」かの論争においては、中国共産党第13回全国代表大会で提案された「国が市場を調節し、市場が企業を誘導する」路線を断念し、改革における計画経済の割合を拡大すべきだという主張や、市場化とは社会主義制度を変更し資本主義制度を実施することに他ならないという批判もあった。

 1992年初頭、鄧小平は南巡講話を発表し、再度「計画の割合が多いか市場の割合が多いかというのは、社会主義と資本主義との本質的区別ではない。計画も市場も全て経済的手段である」旨を強調した。鄧小平の南巡講話精神の指導の下、中国共産党第14回全国代表大会では、社会主義市場経済体制の改革目標が確立された、と石建国氏は解説する。

 中国が計画と市場との関係を解決した方法とは、「それぞれがそれぞれの役割を果たし、2本足で進む。活性化が必要な地方では、市場の役割を十分に発揮させ、市場の混乱と無秩序は計画によって克服する」というものであると辛鳴氏は認識している。

 国家計画の推進プロセスにおけるもう1つの肝要なメカニズムは、いかにして政府と市場との境界線を明確化するかということだ。鄭永年氏は、市場に決定権を与えることは、政府が経済から手を引くこととイコールではないと考える。「現在の中国市場は混合経済の多元的なインタラクティブ市場で、市場の頂点は国有資本から成る国有企業、末端は大量の中小零細企業から成る民間資本、両者の間は国有資本と民間資本が提携する中間層で構成されている」。鄭永年氏は「制内市場」という概念で中国モデルを総括する。「制内市場」とは、国家主導型の市場経済という意味だ。「この市場は無政府市場ではなく、ある一定の規則に従って形成されている」。この規則の下、3層の資本はそれぞれがそれぞれの役割を果たしているというわけだ。

 武力氏によると、経済発展において政府が役割を果たすためには、五カ年計画は不可欠な方法であり手段であるという。五カ年計画は一定の指導性を有しており、目標はスクロール式に調整がなされる。政府の経済面での役割は決して権力の大小の問題でも、単に機能を強めるか弱めるかという問題でもなく、政府と市場がいかに正しく役割分担し、各自が役割を果たすかという問題なのである。

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2020年7月23日、火星探査機「天問1号」の打ち上げをながめる人々。写真/人民視覚

執政目標は大国から強国へ

 第14次五カ年計画の「提案」稿の内容は、経済・社会の発展のみにとどまらず、科学技術イノベーション、改革の深化、農村振興、地域発展、文化事業、グリーン発展、さらには国防建設事業など多方面にわたる。中国社会にとって五カ年計画は、決して単なる経済・社会発展の計画ではなく、システム的角度から全体的に中国社会の発展を計画するものだ、と辛鳴氏は認識している。

 第6次五カ年計画以降、中国の五カ年計画には社会発展に関する内容が加わり、計画指標は経済類主体から非経済類主体へと変化した。第6次五カ年計画では経済類指標が70.7%、非経済類指標が39.3%だったのに対し、第12次五カ年計画では、経済類指標はわずか12.5%、第13次五カ年計画ではわずか16%にまで減少し、指標の大部分は教育・科学技術、資源・環境などの非経済類指標が占めるようになった。

 第11次から、五カ年「計画」は五カ年「規画」へと改められた〔中国語での表記。本稿では「計画」で統一表記する〕。わずか一文字の変化ではあるが、そこには社会主義市場経済体制における中長期計画の機能と位置づけ、そして中国の発展理念、政府機能、発展方式などに関する改革が反映されている、と石建国氏は解説する。

 新たな発展段階に突入した中国は、発展要求、発展目標、発展方式もこれまでとは違うものになった。このことは、第14次五カ年計画が全く新しい、開拓的意義を有する五カ年計画となることを意味している、と辛鳴氏は言う。「単に今後5年間の道標となるだけでなく、15年、ひいては30年先の発展を見据えた一歩を踏み出し、基盤を築くものとなるだろう」

 鄭永年氏の見立てでは、第14次五カ年計画は人民の全面的発展ニーズを満たし得る総合計画となっている。鄭永年氏は言う。中国は既に単純で粗放な量的発展から質的発展へと転換を遂げており、「質の高い発展」〔中国共産党第19回全国代表大会で提起された概念で、中国経済は高速の発展から質の高い発展の段階に入ったとした〕は中国共産党全体の共通認識となっている。しかし、かつて五カ年計画で最も重要だった経済成長目標は急速に存在感が薄れており、第14次五カ年計画「提案」稿では以前のような中・高度成長やGDP倍増といった具体的な成長速度指標は示されておらず、代わりに全方位的発展目標が掲げられている。これは、方向性を模索する第14次五カ年計画が、より高い柔軟性を持つものであることを意味している。

 中国の各地域、各分野、各部門間のバランスを欠いた発展は、将来的に必ず克服すべき課題であり、中国共産党にとって今後長きにわたり執政の要点となる、と馬亮氏はみている。特に貧困脱却の難関に取り組んだ上で農村の振興を加速させ、地域間および都市・農村間の格差を引き続き縮小し、共に豊かにすることを目指すことが、今後の執政綱領の重点中の重点となる。一方、発展モデルとしては、イノベーション駆動型が将来的に最も重要な選択になる。中国共産党の執政目標は、大国から強国へと進んでおり、今後各方面・各分野において大きな発展の局面を迎えることが予想される。これらの目標は、現代化社会主義国家がまもなく誕生すること、執政理念においてはこれまで以上に人民中心を際立たせていくことを意味している。

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物流業界で活躍中のAI仕分けロボット。写真/中国新聞社

「双循環」が解決しなければならないのは中国内外の課題

 第14次五カ年計画「提案」稿には、「国内大循環を主体に、国内・国際の双循環〔2つの循環〕が相互に発展を促進し合う新たな枠組み」の確立を加速させる必要性が示されている。

「双循環」は国内の大循環を主体とする、と鄢一龍氏は言う。

 国内に大市場を構築するためには、有効需要の不足がネックであり、内需拡大がスムーズな国内大循環を実現する上での戦略基点となる。内需拡大とは、主に国内の投資と消費を拡大することにより、国民経済の成長を牽引することである。中国の消費市場は規模こそ大きいものの、成長の潜在能力は掘り起こしてみないとわからない。中国の2020年の1人あたり消費支出は2万1,210元で、先進国とはまだ大きな開きがある。2013~2019年における最終消費支出の経済成長率に対する寄与度は平均して60%前後で、先進経済体の70%~80%という水準に比べると、これもなお向上の余地は大いにある。

 需要と供給の関係からみると、現在および今後一定期間、中国経済が直面する課題は依然として供給サイドにあり、供給構造が需要構造の変化に対応しきれておらず、製品およびサービスの種類・品質が多層化・多様化した市場の需要を満たせていないことが問題だ。2020年11月、国務院副総理の劉鶴(リウ・ホー)氏は「国内大循環を主体に、国内・国際の双循環が相互に発展を促進し合う新たな枠組みの構築を加速させよ」という文章を発表し、新たな発展の枠組み構築のカギは、経済循環の流れと産業連関のスムーズ化の実現にあること、また、根本的要求は供給体系のイノベーション力と連関性の向上、各種ボトルネックの解決、国民経済循環のスムーズ化であることを指摘した。

 学術界は第14次五カ年計画の実施期間を、中国にとっての戦略的チャンスとみなしている。しかし、中国が持続的に対外開放を深化させ、新たな国際的枠組みの構築に参与していくには、依然大きな課題に挑まなければならないことも事実である。鄭永年氏は、「双循環」が解決しなければならないのは中国内外の課題、そして内部と外部のルールをいかに調整していくかという問題であると指摘する。

 中国社会科学院金融研究所所長の張暁晶(ジャン・シアオジン)氏は文章を発表し次のように指摘している。近年、国連、WTO、世銀、IMF、APECやG20のような主要国際組織において、中国の影響力は拡大の一途をたどっているが、全体的に言ってこれらの国際組織や政府間組織は、いまだ欧米などの先進経済体主導であり、それに対する中国の融合度や発言権は明らかに不足している。それゆえ、開放を拡大することで世界経済への中国の融合度を高めることは、正に第14次五カ年計画期間の重要な任務なのである。

 鄭永年氏は言う。「内循環」では、中国という巨大な国内市場を利用するだけでなく、中国内部のルールを統一しなければならない。中国は世界の合法的かつ合理的な先進ルールを学習し消化する必要がある一方で、新たなルールの制定においては多国間主義と開放的態度を堅持しつつ、「中国自身の利益はもちろん、他国の利益をも考慮する必要がある」

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MWC2021に出展されたマトリックス式のモバイルライブストリーミングシステム。写真/中国新聞社

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安徽省合肥市で自動運転バスの5Gモデルコースで試乗する人々。写真/新華社


※本稿は『月刊中国ニュース』2021年6月号(Vol.110)より転載したものである。