第177号
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中英科学技術イノベーション協力で世界的課題に対処

2021年06月07日 張佳欣(科技日報実習記者)

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シティ・オブ・ロンドンと、中国、英国の商工界が共同で開催した公益イベント「中英が手を携え、愛を伝える」は、「新型コロナウイルスと共に闘い、運命を共にする」をテーマに、中英が手を携え、共に新型コロナウイルスと闘う決意をPR。画像は、ロンドンのシティ・ホールで、ベルギーと中国、英国のアーティストが共同で製作した曲「CHIME OF THE DAWN BELLS」を歌う学生ら。(資料画像)。撮影:新華社記者 韓岩

英国ビジネス・エネルギー・産業戦略省のアマンダ・ソロウェイ科学研究イノベーション大臣への独占単独インタビュー

科学技術イノベーションが世界的トレンドに

 近年、中国と英国の科学技術イノベーション分野における協力が一層緊密になっている。

 2018年にロンドンで開かれた中英科学技術イノベーション協力ジョイントコミッション第9回会議で、双方は、中英共同科学イノベーション基金(英国側の名称「ニュートン基金」)、中英フラッグシップチャレンジプログラム、中英イノベーション・起業・人的交流協力などの面で複数のコンセンサスを達成した。

 今年5月12日、中英科学技術イノベーション協力ジョイントコミッション第10回会議が予定通り開かれた。

 世界が現在、新型コロナウイルス感染の拡大や気候変動、人類の健康、食料安全保障などの面で大きな課題に直面するという特殊な背景の下で、中英両国がどのように共により多くの貢献をするかというのが、中英の科学技術協力をめぐる重要課題となっている。英国のビジネス・エネルギー・ 産業戦略省のアマンダ・ソロウェイ科学研究イノベーション大臣はこのほど、筆者の単独インタビューに応じ、両国の科学技術イノベーションの分野における協力をめぐる新たなチャンスと可能性を探った。

フラッグシップチャレンジプログラムが大きく進展

 ソロウェイ氏は、「前回の会議以降、フラッグシップチャレンジプログラムは特に農業技術や健康・高齢化の面で大きく進展している。これは、中英両国の科学、技術・イノベーション共同戦略の一部だ」との見方を示す。

 1つ目のフラッグシップチャレンジは、農業技術の分野だ。ソロウェイ氏は、「同プロジェクトの一部としてのスマート農場プロジェクトテスト事業の一連の技術が、中英両国の食料生産量を最大限に増加させている。今年初め、英国は中英スマート農業プロジェクトを通して、共同研究プロジェクト8件を始動させた。農業の環境に対する影響を減らすと同時に、経済成長を実現させるのがその目的だ」と説明する。

 中国の第7回全国国勢調査の主要データ記者発表会で、中国国務院第7回全国国勢調査指導グループの副グループ長を務める国家統計局の寧吉喆局長は、「人口の高齢化が、中国の社会発展の重要な動向だ。英国も人口の深刻な高齢化の圧力に直面している。一方で、中英協力の2つ目のフラッグシップチャレンジはまさに人口の高齢化に焦点を合わせるものだ」と指摘した。

 ソロウェイ氏は、「共同プログラムの下、イノベーションのソリューションを開発して、両国が人口の高齢化の面で直面している現実的な問題を解決できるようサポートし、高齢者がさらに長い期間にわたって、積極的で自立した社会の一員としての地位を保てるように取り組んでいる」と説明する。

数多くの成果を挙げる産学研協力と新型コロナ連携

 中国はここ数年、科学研究人材の交流における協力を積極的に推進し、科学研究者に良い環境を提供している。中英両国も、両国の科学研究者の産学研協力の展開をさらにサポートし、科学研究者とイノベーション創出者、起業者の交流、育成、協力のプラットフォーム構築に取り組んでいる。

 ソロウェイ氏によると、中国トップの助成機関と協力パートナーシップを築くことで、英国研究・イノベーション機構(UKRI)中国事務所は、中国との共同研究開発プロジェクトを促進し、投資総額は3億6,000万ポンド(約560億円)、協力機関・企業は350機関・社を超えている。

 中国の新型コロナウイルス対策について、ソロウェイ氏は、「英国にとって、新型コロナウイルスに対処するための医療物資の重要な供給元となってきたのが中国。両国の新型コロナウイルスとの闘いにおける連携は、双方の国民に実際的なメリットをもたらしてきた」と高く評価する。

 そして、「オックスフォード大学と広東省疾病予防管理センターは、広東省の新型コロナウイルスのゲノム配列を共同で分析し、ウイルスの伝播の仕方を解明するのにプラスとなる。このほか、両国の企業は情報交換と協力を強化した。英国の製薬企業・アストラゼネカは、同社とオックスフォード大学が共同で開発したワクチンを、中国のバイオ医薬品メーカー・康泰生物が生産することで合意した」とし、「ボリス・ジョンソン首相と習近平主席が議論したように、国際協力を強化して新型コロナウイルスの感染拡大に対処する必要がある。これには、ワクチンの開発と分配が含まれる」との見方を示した。

科学技術イノベーションは、中英が共に世界的問題に対処するためのカギ

 中英両国の科学技術イノベーションの分野をめぐる協力の今後の発展について、ソロウェイ氏は、「新型コロナウイルスとの闘いにおいて、グローバルコミュニティをうまく再建するとともに、パンデミック防止、生物多様性、気候変動などをめぐる問題を解決するためには、科学、技術、イノベーションが極めて重要なポイントとなる。それらも、両国の協力の重点ポイントだ」と展望を語る。

 そして、「今年の中英科学技術イノベーション協力ジョイントコミッション第10回会議で、両国が共に努力し、総合保健プロジェクトを通して、パンデミックに対処することを約束できたことをとてもうれしく感じている」と語った。

 このほか、ソロウェイ氏は、「中英両国は長年、気候変動への対処の面でも協力している。今年は、第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議が英国で開催され、『生物多様性条約』第15回締約国会議が中国で開催されるという特別な年であり、気候変動や生物多様性に対処するために有意義なグローバル・コミットメントを共同で行うだろう」とした。

 同氏はさらに、「中英両国は相応のカーボンニュートラル目標を打ち出している。これらの重要な会議で、両国の一歩踏み込んだ協力を期待している」と語った。


※本稿は、科技日報「中英科創合作応対全球性挑戦大有可為」(2021年5月19日付4面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。