第178号
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黄石の電子情報産業―武漢光谷科創大回廊のサポートを得て「離陸」

2021年07月15日 劉志偉(科技日報記者)、李幹勝、董浩(科技日報特派員)

108社:
 黄石開発区・鉄山区は近年、武漢のイノベーション資源の優位性を利用しながら、武漢とは異なる発展を遂げ、区の全域でハイテク企業が倍増し、108社に達した。

「ここは(武漢の)光谷から最も近い国家級経済技術開発区だ」。筆者は5月27日、黄石経済技術開発区・鉄山区(以下「同区」)を取材した。黄石市党委員会常務委員で、開発区党活動委員会書記を務める鉄山区委員会書記の呉之凌氏は、湖北省党委員会・省政府が光谷科創(科学技術イノベーション)大回廊の建設を加速させることを決定したことを喜んだ。

 同区は近年、武漢のイノベーション資源の優位性を利用し、武漢とは異なる発展遂げ、区の全域でハイテク企業が倍増し、108社に達した。

 呉氏は「同区は光谷科創大回廊の拡大のチャンスをつかみ、武漢のプラットフォーム、技術、プロジェクト、人材、資金などのイノベーション資源と全面的に結びつき、産業にエネルギーを与える」と述べた。

電子情報産業の発展に力を入れる

 筆者が同区の天璣智谷情報技術有限公司の生産現場を訪れたところ、現場ではディスプレイの組立、検査、包装が行われており、これらの製品は間もなく世界各地に販売されようとしていた。

 同社の会長補佐の袁小亮氏は「新型コロナウイルス感染症の流行の影響で、テレワーク、リモート教育、動画会議で使用するディスプレイの需要が急増しており、業界は大きなチャンスを迎えた。当社の輸出製品は1年で4種から14種に増加し、生産高が前年同期比で266.61%増となった」と説明した。

 同区は近年、電子情報産業の発展に力を入れるとともに、光谷科創大回廊と積極的に融合し、区内の企業が武漢「光芯屏端網」[1]のリーディングカンパニーおよびスマート製造産業と共に発展し、その原動力を引き出すよう推進している。

 同区初のプリント基板(PCB)企業である滬士電子黄石公司が2013年末に完成し、稼働開始した。その後、定穎電子、欣興電子、上達電子などのPCB業界大手が次々と入居した。黄石は中国3位のPCB産業集約地になった。

 これをスタートラインとし、光電子製品、電子基礎材料などの関連プロジェクトが次々とスタートした。ガラス繊維材料、銅張積層板(CCL)、ハイエンドPCB、表示モジュールから半導体気密検査やウエハ再生に至るまで、黄石電子情報産業は10年にわたり無から有、OEMから付加価値向上に移るようになり、産業集約の質の高い発展の道を歩んだ。

ビジネス環境を持続的に改善

 ゼロから出発して後に優位性を得た電子情報産業の裏側には、同区のビジネス環境の持続的な改善があった。

 台光電子材料有限公司は世界ランキング5位のCCL(銅張積層板)メーカーだ。同区でゼロから始まり売上高4億6,000万元(約78.7億円)に達するまで1年しかかからなかった。同社は昨年の年初、(従来型の「認可後に建設」ではなく)「建設後に検収」の手続きの準備を進めていたが、感染症に見舞われた。サードパーティ企業や海外専門家などの人々が現場に入れなくなり、プロジェクトが停滞した。パーク内の企業の苦境を知った同区は、行政審査・手続きの「4つのゼロ」改革を行った。これは着工と建設の「ゼロ審査・承認」、仲介サービスの「ゼロ料金」、監督管理サービスの「ゼロギャップ」、完成・検収の「ゼロ移動」のことだ。「審査・承認が非常にスピーディで、自ら行う必要がなく、書類を提出するだけで良かった」。同社の副社長である趙可可氏によると、同社1期プロジェクトの竣工に関する登録が昨年10月、順調に完了した。「4つのゼロ」改革は今年さらに「4つの1」改革に高度化し、審査・承認がよりスピードアップした。

 光谷科創大回廊は湖北省の省レベル戦略になった。武漢、鄂州、黄石、黄岡という長江沿岸に広がる都市ベルトは、世界レベルのイノベーション発展の地になる。光谷科創大回廊と連結するため、黄石(武漢)オフショア科創センターが誕生した。

 このプラットフォームを借り、上達電子、定穎電子、天璣智谷などの企業が、華中科技大学や湖北工業大学などの大学と産学研協力を展開した。恵晶電子は武漢光迅科技、華星光電などのリーディングカンパニーと産業チェーン協同メカニズムを構築した。このオフショア科創センターを通じ、黄石は「武漢で研究開発、黄石で生産▽武漢でインキュベーション、黄石でアクセラレーション▽武漢で人材誘致、黄石で人材登用」という発展の新モデルを模索した。

 黄石(武漢)オフショア科創センターを光谷科創大回廊への「橋頭堡」とするならば、同区にある黄石科技城(サイエンスシティ)はマッチングの「主戦場」だ。

 投資総額100億元(約1,710億円)の黄石科技城は5−10年で、生活・仕事・イノベーション適応型モデルパーク、光谷科創大回廊産学研共同イノベーションモデルエリア、ハイテク産業・ハイレベル人材集中エリアを建設する。黄石科技城は現在すでに浙江大学技術移転センターなどの8機関と入居枠組み協定に署名しており、黄石光電工業研究院、湖北技術交易大市場黄石分市場などの入居が決まっている。


※本稿は、科技日報「借力光穀科創大走廊 電子信息産業在這裏"起飛"」(2021年6月4日付7面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。


1.「光芯屏端網」・・・光:光ファイバー・光ケーブル、光エレクトロニクス機器、光通信システム、レーザー等 芯:メモリー、チップ等 屏:ディスプレイ、パネル等 端:スマートフォン、タブレットPC、スマートテレビ、ウェアラブルデバイス等の端末製品 網:固定・移動ネットワーク、5Gをはじめとする新世代モバイル通信、次世代インターネット、クラウドコンピューティング、モノのインターネット等。(編集部)