第178号
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肇慶ハイテク産業開発区:イノベーション・起業を強力にサポート

2021年07月30日 龍躍梅(科技日報記者)、方 斌、呉 君(科技日報特派員)

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肇慶ハイテク産業開発区に入居する企業で実験を行う研究者 撮影・王振宇

 中国に帰国した華僑の蘇春定氏は「電気自動車(EV)用の電池メーカー『寧徳時代』(CATL)が、広東省肇慶市の『大旺』に入居した後の第一期投資額は120億元(約2,050億円)だった。EVメーカーの小鵬汽車も、宝龍現金輸送車もみな『大旺』で生産している」と胸を張る。蘇氏が話す「大旺」とは肇慶ハイテク産業開発区のことだ。

 肇慶ハイテク産業開発区が2020年に大旺総合経済開発区に移転して以降、大旺華僑農場と合同で事業を進めるようになり、工業化発展の急成長の段階に入っている。同開発区は2010年、国家級ハイテク産業開発区に認定された。

 2005年に肇慶ハイテク産業開発区で起業し、現在までに4社を立ち上げている経営者の蘇氏は、「ここは僕の夢が始まった場所。自分が多くの人にとっての手本となり同開発区の建設という大事業にわずかでも貢献したい」と話す。

産業が開花して実を結び新たな活力を生み出す

「テクノロジーを山や川に溶け込ませ、ニュータウンと産業が共に飛躍する」というのが、肇慶ハイテクパークの発展理念だ。

「80後(1980年代生まれ)」の留学帰国者許錦輝氏は、肇慶ハイテク産業開発区が「国家ハイテク産業開発区」に昇格したことにチャンスを見出し、仕事を辞めて、他地域から肇慶ハイテク産業開発区の投資誘致部門に入社した。ここ数年、許氏は同僚と共に、中国全土を飛び回ってPRし、医薬物流産業パークや保利集団、海印集団など、数多くのプロジェクトが肇慶ハイテク産業開発区で実施されるよう仲介し、誘致した投資額は100億元(約1,710億円)を超えている。

 新エネルギー自動車産業というブルー・オーシャンは、肇慶ハイテク産業開発区の投資誘致において注目される重点だ。同開発区はこれまでに、小鵬や宝龍、愛龍威などの、完成車や自動車部品企業50社余りの誘致に成功してきた。うち、小鵬汽車の生産拠点は2017年に同開発区に設立され、一、二期の投資総額は100億元(約1,710億円)に達している。2020年の時点で、同開発区の新エネ車産業の売上高は189億1800万元(約3,240億円)に迫り、1千億元級の産業クラスターを作り上げるという目標達成に向けて、着実に前進している。

 2020年の時点で、100平方キロ足らずのこの土地に、各種工業企業を累計で400社以上誘致してきた。新エネルギーのほか、建材・家具、バイオ医薬品、食品・飲料などの産業も同開発区に入居して根を下ろしている。2020年、同開発区の域内総生産(GRP)は、2010年と比べて354.17%増の200億700万元(約3,430億円)に達した。一定規模以上の工業企業(年売上高2,000万元以上の企業)225社の工業生産額は753億5,700万元(約1兆2,890億円)に達した。

 今年第一四半期(1-3月)、肇慶ハイテク産業開発区の域内総生産は前年同期比32.1%増の47億元(約804億円)に達した。増加ペースは肇慶市でトップだ。一定規模以上の工業企業の付加価値額は同46.3%増の40億500万元(約693億円)、社会消費財小売総額は同40.3%増の53億3,100万元(約912億円)、固定資産投資は同10.5%増の29億2,700万元(約912億円)、一般公共予算収入は同22.05%増、総税収は同35.5%増、工業電気使用量は同44.85%増の3億8,841万7,400キロワット時に達した。

 産業クラスターが出来上がるにつれて、「新人」の許氏も肇慶ハイテク産業開発区にゆっくりと根を下ろすようになり、今では自身が誘致して入居した宝龍汽車公司の副社長を務めている。

イノベーション資源が集まり「発酵」

「企業の競争力と将来はイノベーションで決まる」と確信をもって語る瑪西爾電動科技有限公司(以下「瑪西爾」)の董李会長が立ち上げた理士国際技術有限公司は現時点で、1,000件以上の特許を有しており、国、業界基準40項目以上の起草を取り仕切ったり、参加して来た。2011年、董会長率いる瑪西爾は肇慶ハイテク産業開発区に入居し、理士の電池技術のための応用シーンを創出してきた。

 瑪西爾の工場内で、作業員は取材に対して、「当社はゴルフ場で使うゴルフカートや道路で作業する清掃車、団地の中を走る高齢者用の四輪電動車などを生産することができる」と胸を張り、「それらの製品は全て当社が独自に研究開発したものだ」と話す。独自に研究開発することで、同社は国際的競争力の面で優位性を誇るようになった。2020年、同社の生産額は20億元(約342億円)を超えた。うち輸出が約70%を占め、東南アジアや欧州などで、瑪西爾の製品を見ることができる。

 肇慶ハイテク産業開発区には、瑪西爾のようなハイテク企業が164社ある。その生産額は同パークの域内総生産のかなりの部分を占めている。

 同開発区には、数多くの研究院やインキュベーターもあり、技術開発成果の実用化までの「ラストワンマイルを埋める」ことに力点を置いている。そして、技術イノベーションが一層良い形で企業に寄与し、技術開発成果の実用化は難しいことではなくなっている。

 同開発区が2016年に創設したイノベーション起業プラットフォームの一つである華南師範大学国際光電産業研究院はこれまでに、インキュベーター企業28社を誘致してきた。同研究院は、科学技術研究成果の実用化の面で、大きな成果を収めている。例えば、現地の火丁智能照明公司は同研究院と緊密に連携し、自動車照明のスマート化応用や光学・散熱などでカギとなる技術における重要なブレイクスルーを実現し、製品の性能が目に見えて向上し、すぐに大量の注文が入るようになった。

 同開発区には現時点で、省級以上の工学センターや重点実験室、企業技術センターなどのイノベーションプラットフォームが63機関あるほか、ハイレベルのテクノロジー企業・インキュベーターが7社、新型研究開発機関が6機関あり、中国内外の院士などのハイレベル人材は60人を超え、人材は合計で4万6,000人を超えている。

 董会長は、「肇慶ハイテク産業開発区はイノベーションの環境がますます整備され、人材もますます増えている。強大なイノベーションの力が企業と産業発展の重要な下支えとなり、同パークは活力に溢れ、日に日に繁栄している」と語る。


※本稿は、科技日報「肇慶高新区 為創新創業"架梯搭台"」(2021年6月11日付7面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。