第179号
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中韓科学技術イノベーション協力「2.0時代」の到来

2021年08月31日 邰 挙(科技日報韓国駐在記者)

在韓国中国大使館科学技術部参事官の富貴氏を訪ねて

 時が流れ、中韓科学技術イノベーション協力と交流は、全面的な発展の30年目を迎えた。長年にわたり現場で働く科学技術外交官である富貴参事官は、両国の科学技術関係がスタートと深化から、今日の運命を共にするまでに至る歴史的プロセスを経験した。

中韓科学技術イノベーション協力の深化

 富貴氏は、「中韓両国は1992年8月に国交を樹立。その1カ月後に政府間科学技術協力協定が署名された。この指導的文書は、二国間の科学技術交流と協力の確かな基礎を固めた」と振り返る。

 また「中韓科学技術イノベーション協力の歴史は30年にも満たないが、大きな成果をあげた」と述べた。

 平等、互恵、協力・ウィンウィンの理念のもと、両国の科学技術イノベーション協力と交流は無から有に、協力分野は絶えず拡大し、協力形式も絶えず模索とイノベーションを続けている。中韓双方は「切っても切れない」という言葉で、両国の科学技術イノベーション協力関係を形容することが多い。

 両国は現在すでに全主体、マルチチャンネル、多分野、「3つのチェーン」の深い融合という点での協力関係を構築している。基礎研究、産業技術、情報通信、原子力、環境、気象、地震、極地科学、砂漠化対策、民間航空技術、知的財産権、イノベーション・起業などの分野で13の閣僚級の政府間科学技術イノベーション協力メカニズムを構築している。

 完全なものではないが科学技術部の統計によると、過去29年にわたり中国政府が韓国に派遣した科学技術訪韓団は800回以上、双方で展開した共同研究課題は800件を超え、相互に派遣した若手科学者はおよそ370人、科学技術視察団は100回超にのぼる。

 この10年近くで、民間科学技術イノベーション協力と交流はより力強い発展の流れを示している。大学、研究機関、企業が徐々に協力の主体になり、二国間科学技術イノベーション協力と交流に持続的な発展の原動力を与えている。中国の華為(ファーウェイ)、吉利汽車、阿里巴巴(アリババ)、騰訊(テンセント)、大疆無人機(DJI)、韓国のサムスン、LG、SKなどのハイテク企業は相手国を自社の産業発展の戦略的空間とし、積極的に事業展開している。

大きな内在的原動力を持つ中韓の科学技術イノベーション協力

 富氏は「中韓科学技術イノベーション協力が大きな成果を上げたことには必然的な理由がある」と述べた。

 まず、両国の指導者が高度に重視している点だ。科学技術イノベーション協力はすでに両国首脳間の重要な議題の一つになっており、二国間協力に力強い政治の保証を提供している。中韓両国の産業技術やイノベーション・起業などの多くの協力協定が、両国の指導者が見守るなか署名された。

 次に、二国間科学技術イノベーション協力の深化は、両国の根本的な利益に合致する。両国の科学技術イノベーション協力は中国の革新的な発展、韓国の1人あたりGDPが3万ドルを突破という目標の達成に多大な貢献を果たした。これは両国の科学技術者の誇りだ。

 韓国は工業化の成功モデルだ。西側の先進国よりも、その発展の経験と教訓は中国の近代化建設にとって高い参考価値を持つ。韓国経済の対中依存度は25%にのぼる。従来産業のほか、両国は半導体、動力リチウム電池、水素エネルギー産業などの科学技術産業の協力の新モデルの形成が加速している上、両国の多くの中小企業が産業チェーンとサプライチェーンに融合し、運命共同体の形成を牽引している。

 さらに中韓両国は地理的に近く、人々が相親しみ、文化で通じ合っている。似ている文化と伝統は両国の持続的な科学技術イノベーション協力の展開に大きな内在的原動力を提供している。

 新型コロナウイルスの世界的流行前、両国を往復する航空便は毎週1,000便以上にのぼった。飛行時間は2時間弱で、それにビザ発給要件の緩和により、科学技術者の往来が非常に便利だ。両国の8割以上の大学と科学研究機関で、協力と交流の経験がある。

 似通った文化的背景により、双方の科学技術者は往々にしてたちまち意気投合し、協力や仕事について、また論語や三国志について語る。これは双方の科学技術イノベーション協力における独特な文化的現象だ。

「2.0時代」を迎えつつある中韓の科学技術イノベーション協力

 富氏は「科学技術イノベーション協力はすでに両国の友好関係の重要な構成部分になっており、両国の友好関係を深める歴史の歩みにおいて引き続き重要な役割を発揮する」と述べた。

 来年は中韓国交樹立30周年であり、中韓科学技術イノベーション協力と交流30周年でもある。この重要な歴史の節目に、両国の政府および科学技術界の関係者が大きな期待を寄せている。米国などの西側諸国が現在、覇権主義と一国主義を掲げ、世界の科学技術イノベーション協力に大きなマイナスで不確実な要素をもたらしており、さらには両国の科学技術関係にある程度の妨害をもたらしている。しかしグローバル化の流れは不可逆的で、協力とウィンウィンの理念が変わることはない。

 富氏は、「中韓の次の30年の科学技術イノベーション協力に大きな自信を持つ十分な理由がある」と述べた。

 中韓関係の深化は、両国の指導者の高度な共通認識になっている。またグローバル化の堅持、運命共同体の共同建設、一国主義反対の理念を何度も世界に説明している。

 中韓両国はいずれも革新的発展を根本的な発展理念としている。両国の発展方向、戦略計画および実現ルートが一致しつつある。中国の「新インフラ」計画と韓国の「韓国版ニューディール」は内容が似ており、両国の重点科学技術および産業発展分野が高度に重なっている。

 他方、公衆衛生などの分野では、両国は共に新型コロナウイルスなどの厳しい試練に直面している。

 富氏は「運命共同体の旗印のもと、新しい中韓科学技術イノベーション協力の『2.0時代』が間もなく到来する。次の30年の両国の科学技術イノベーション協力は見通しが明るく、無限の可能性を秘めている」と強調した。

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中韓(塩城)産業パークがこのほど、「中国(江蘇)自由貿易試験区連動革新発展区」に指定された。同産業パークは国家レベルの協力産業パークで、全国に先駆け「中韓クイックルート」により13機のチャーター便サービスを提供。韓国系プロジェクトの早期建設と成長を後押ししている。今年10月にはさらに第3回中韓貿易投資博覧会を開き、国際協力模範園の建設を急ぐ。(画像提供:新華網)


※本稿は、科技日報「中韓科創合作"2.0時代"呼之欲出」(2021年6月25付4面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。