第181号
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違法なコバタインコ取引を見つけるフォレンジック・アプローチ

2021年10月07日 AsianScientist

 野生生物の違法取引者は注意するように! 香港の生態学者たちは、絶滅の危機に瀕しているコバタインコの偽装取引を発見する新しいフォレンジック(法的証拠発見のための調査・解析)ツールを開発した。

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 AsianScientist 論より証拠ということわざがある。その通り、証拠は同位体で見つかる。香港大学(HKU) の生態学者たちは、同位体分析を使用して、ペット取引の鳥が人工飼育されたものか野生で捕獲されたものかを判断できる。彼らの調査結果はAnimal Conservation 誌に掲載された。

 香港では、コバタンインコその他エキゾチックな鳥がペットとして一般的に販売されている。これらの鳥は自家繁殖によって合法的に飼育された場合もあるが、海外から密貿易されたり、香港に入り込み自由に飛び回るコバタインコの群から捕獲されたものも少なからずある。

 しかし、野生で捕獲されたコバタインコを見ただけで区別することは困難である。つまり、違法に捕獲されたコバタインコであっても、飼育されたものだと主張して正規の市場の中でごまかすことが可能となっている。

 したがって、個々の鳥が野生のものであるか、それとも人工繁殖されたものであるかを判断する必要がある。何と言っても、それにより取引の合法性を判断する際の重要な証拠として役立つ可能性がある。

 HKUの保全フォレンジック研究所の所長であるキャロライン・ディングル(Caroline Dingle)博士が率いるチームは、香港の野生のコバタインコ個体群の羽と個人が所有するペットのコバタインコの羽について同位体分析技術を駆使して、食事の違いが炭素と窒素の値に反映されているかどうかを確認した。

 具体的には、この研究チームは2つの新しいフォレンジック・ツールを使用した。安定同位体分析(SIA)と、特定のアミノ酸に関連する同位体値を分析する化合物レベルの安定同位体比分析(CSIA)である。研究チームは、安定炭素と安定窒素の同位体という2つの値が、野生のコバタインコと飼育されたコバタインコの間で大幅に異なることを発見した。

 将来的には、コバタインコが野生のものか人口繁殖されたものかを最終的に判断するために、研究チームが使用した試験が法執行機関により採用されるかもしれない。

「合法的に取引できる生物と偽装して合法的に見せかけた生物の区別は難しいので、合法的な野生生物取引は違法に捕獲された野生生物取引の温床となっています。私たちの結果は[同位体分析]が野生生物取引を規制する政府当局の取り組みの中で、強力なツールとなることを示しています」と論文の筆頭著者であるアストリッド・アンダーソン(Astrid Andersson)博士は述べた。

 

発表論文等:Andersson et al. (2021) Stable Isotope Analysis as a Tool to Detect Illegal Trade in Critically Endangered Cockatoos.

原文記事(外部サイト):
●Asian Scientist
https://www.asianscientist.com/2021/08/in-the-lab/forensic-tool-illegal-cockatoo-trade/

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Source: The University of Hong Kong; Photo: Shutterstock.
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