広州・清遠一体化の再アップグレード、全面的な融合発展の新段階に
2021年10月29日 龍躍梅(科技日報記者)、陳国飛(科技日報通信員)
広東省初の中・低速リニア線「清遠リニア観光専用線」。横には鉄道京広(北京‐広州)線が走る。撮影:劉大偉(新華社記者)
このほど開催された「広州--清遠ペアリング支援党政連席会議並びに国家都市部・農村部融合発展試験エリア広州・清遠接合エリア、広州・清遠経済特別合作区建設推進会議」で、広州市と清遠市は、都市部・農村部融合発展重要プロジェクトリストと重要改革事項を発表した。うち、重要プロジェクトでは、都市部・農村部のインフラ、都市部・農村部の産業、社会民生、グリーン発展、「城中村(都市郊外の村落が都市開発の進行により拡大した市街区に取り囲まれたエリア)」(三旧:旧都市、旧工房、旧村落)再開発など、5項目のプロジェクト計560件以上に投資総額1兆2,000億元(約20兆2,800億円)以上を投じる計画だ。また、重要改革事項は、国の都市部・農村部融合発展試験エリアの試験任務11項目と緊密に連携させながら展開される。
2012年に広州・清遠一体化構想が打ち出されて以降、両市の交通、産業、ビジネス環境の一体化が加速し続け、広州・清遠接合エリア、広州・清遠経済特別合作区の関連案が打ち出され、医療教育などの民生事業が、共同で建設し、共同でその利益を享受する形で推進されている。
広州・清遠の一体化構想が打ち出されて10年目を迎えるのを機に、再び両市共同で新段階の広州・清遠一体化「ルートマップ」を打ち出した。
互いになくてはならない
広州と清遠の一体化をどのように実現するのか?
実際には、広州と清遠は、山や川が繋がる、親せきのような間柄だ。清遠に長年住んでいる高齢者なら、まだ、清遠が「県」だったころ、長期間にわたり広州市の管轄下にあったことを覚えているだろう。地図を開いて見ると、清遠の多くのエリアが広州や仏山と隣り合っていて、広州の中心エリアとの距離は、広州の一部の区よりも近い。
静かに変化が起き始めたのは2012年。清遠党政代表団が、「南部との融合」の旅でまず訪れたのが広州で、「広州・清遠市協力枠組み協定」に調印、広州・清遠一体化の基礎を築いた。
広州・清遠一体化は持続的に進展し、2013年から全面的なペアリング支援が始まり、2018年には広州と清遠は共同で「広州・清遠一体化発展の質の高い推進活動案」を通達し、「清遠を広州の一部として計画を制定し、質の高い発展を実現する」という目標を明確に掲げた。
近年、広州・清遠接合エリアは、広東省で唯一の国家都市部・農村部融合発展試験エリアとなり、同エリアと広州・清遠経済特別合作区の実施案、建設全体案が相次いで発表され、広州・清遠一体化が一歩踏み込んで推進されるようになっている。
かつての「家族」は、今後も「家族」で、広州・清遠の連携に対する注目度も高まるばかりだ。
2021年第7回中国広州国際投資年次総会の広州・清遠サブ会場イベントで、ある業界ウォッチャーは、「清遠は『広州の裏庭』として広く知られている。『裏庭』、つまり、広州の後ろにあるということだ。最近、清遠は『広州の北』、『湾区の北』という見方がある。つまり、清遠と広州はすでに一体となっているということだ」と語った。
互いになくてはならないというのは、広州・清遠の発展のリアルな姿を反映している。清遠市の最近の統計によると、約20--30万人が、生活、居住、勉学などのために広州と清遠を往来する生活を送っており、1日当たり延べ10万もの人が行き来している。
交通機関は一体化の「先導役」となる。京珠高速道路、広楽高速道路、広清高速道路、二広高速道路は両市を繋ぐ高速道路で、広連高速道路と仏清高速道路の建設も全面的に始まり、広清都市間鉄道、広清永高速鉄道、広州東―花都天貴都市間鉄道を清遠までの延伸プロジェクトなども実施されており、特に南部エリアの「広州30分通勤圏」への融合が加速している。
産業を見ると、両市はさらに融合し、補完し合うようになり、「広州研究開発+清遠製造」のスタイルが日に日に成熟している。広州・清遠経済特別合作区の三大産業パークは、いずれも黄埔区(広州開発区)が開発・建設を主導し、一部のパークは、広州の企業が占める割合が8割に達している。
広州・清遠が共に進む「ファスト&スロー」
9年の取り組みを経て、広州と清遠は、一体化推進の面で多くの成果を挙げている。
広州・清遠接合エリアは、広州3区、清遠2区1県1モデルエリアを含み、両市は勇敢に使命を担い、人口の移動、都市部・農村部の産業協同発展などの面で改革を展開している。
うち、広州・清遠接合エリアの広州側エリアでは、都市部・農村部融合発展「5+3」試験任務を推進し、両市の居住証の期限を相互承認し、広州・清遠都市間鉄道一期や広仏中環(香港)都市間鉄道(花都--白雲空港北区間)などを新たに開通させた。今年上半期、広州エリアの花都、従化、增城の3区の経済成長は合計14.8%増と、同市平均の13.7%を上回った。
一方、清遠側エリアは、主線1本を改革するなど「1221」の活動アプローチをはっきりと際立たせ、重点任務リストや重点プロジェクトリストを制定し、農村の「農用地・住宅用地・集合建設用地」の改革の展開を模索し、「金土地(土地整理)」、「宅地ローン」、「土地下請け経営権」などの革新的な金融商品を打ち出し、6カ所の省級現代農業産業パークの建設を高い品質で推進し、広州と粤港澳大湾区(広州、仏山、肇慶、深圳、東莞、恵州、珠海、中山、江門の9市と香港、澳門<マカオ>両特別行政区によって構成される都市圏)北部に生態文化観光協力エリアなどを共同建設している。
広州・清遠経済特別合作区は、広東省で唯一「経済特別合作区」と命名された地域発展プラットフォームで、広州が開発、建設、管理、運営を主導し、一方の清遠が社会管理事務を主に担当している。双方は約定に基づいて、開発の収益を配分する。
両市が力を合わせて一体化に取り組んだ結果、今年6月の時点で、合作区が呼び込んだプロジェクトは累計で533に達し、投資総額は1,500億元(約2兆5,400億円)を超えた。うち、広州・清遠産業パークは、年間売上高100億元級の省級先進的工業パークに成長している。
広州・清遠一体化は飛躍的に進展しているが、さらなる勢いと加速が必要である。
著名な経済学者である広東省社会科学院の丁力氏は、「広州・清遠経済特別合作区の発展のためには、行政の積極性が中核問題となる。また、関連する公共サービスも必要で、両市の居住証の相互承認を試験的に導入するにも、双方が一層具体的な措置を打ち出して、利益の共有を実現する必要がある」との見方を示す。
清遠の中心市街地に目を向けると、省の職業教育タウン、燕湖ニュータウン、広清空港現代物流産業ニュータウン公司の「三大ニュータウン」が新勢力として目立つ存在になっており、都市部・農村部の協調した発展を牽引している。
調査研究のために何度も清遠を訪れている華南都市研究会の会長を務める曁南大学の胡剛教授は、「省の職業教育タウンは、大学を中心としており、エリア機能は単一的。燕湖ニュータウンと連携して融合することができれば、その2つのニュータウンの機能をさらにうまく発揮させることができるだろう。また、清遠は、広州白雲空港からも近いため、空港経済の発展の優位性をさらに活性化させることができるだろう」と指摘する。
「一歩踏み込んだ一体化」のために奮闘
今回の会議や最近広州で開催された「広州・清遠一体化の質の高い発展促進記者発表会」では、「広州・清遠の一体化は、『交通インフラの一体化』が頭一つ抜け出ている先導段階から、交通、産業、ビジネス環境など、全面的に一体化する発展段階に上昇している」というシグナルが出されている。
では、新たな段階を、どのように歩めば良いのだろう?
その答えはますますはっきりしてきている。広州市と清遠市は近年、党政連席会議を何度も開催して、共に話し合いを進めてきた。今年は既に下半期に入っており、両市は推進会議を開催して、これまでの活動をまとめ、都市部・農村部融合発展の方向性をはっきりさせた。
清遠は、「広州・清遠接合エリア、広州・清遠経済特別合作区の建設を通して、広州・清遠一体化は『一歩踏み込んだ一体化』の全く新しい段階に入っている。当市は広州の足並みにしっかりとついて行き、市を挙げて、全力で両エリアを建設し、交通、産業、ビジネス環境の3分野の一体化に全力で取り組み、積極的に広州に溶け込んでいく」とした。
また、清遠の長所を一歩踏み込んで発掘し、広清永高速鉄道、広州東‐花都天貴都市間鉄道清遠延伸プロジェクト、大湾区日用食品清遠配送センター、南部物流ターミナル、大湾区北部生態観光合作区などの重点プロジェクトの推進を加速させ、大湾区の食糧・野菜・果物・茶葉などの生産拠点や水源地、「裏庭」、療養場所を高水準で構築する計画だ。
一方の広州は、数多くの政策の相乗効果を生かし、新段階のペアリング支援・協力の成果として「広州・清遠モデル」を構築する計画だ。「体制・メカニズム改革」というポイントを押さえ、広州・清遠接合エリアの全面的なイノベーションを推進し、大湾区発展の利益が波及する重点エリア、広州・清遠一体化主戦場、地域間都市部・農村部融合発展の先行エリアという位置付けとしての目標達成に全力で取り組み、清遠英徳連樟モデルエリアを都市部・農村部融合発展のモデルケースとしたい計画だ。
また、産業を先導として、広州ビジネス環境「4.0」改革の成果が、広州・清遠経済特別合作区のパークで応用されるよう推進し、投資誘致を強化し、合作区を広州主導産業の延伸エリア、関連エリア、珠江デルタ企業のモデル転換・高度化クラスターとし、工業付加価値額100億元超えの目標達成のために全力を尽くす計画だ。
広州と清遠は、合作区を産業の「メインエンジン」として、地域の協調、都市部・農村部融合発展を牽引し、2035年をめどに、合作区の清遠の経済成長に対する貢献を大幅に向上させ、清遠地区の域内総生産の割合を10%以上に引き上げ、清遠の一人当たり域内総生産が省の平均水準に達するよう取り組む計画だ。
※本稿は、科技日報「広清一体化再昇級 歩入全方位融合発展新階段」(2021年09月10日付7面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。