第182号
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南昌ハイテクパーク―航空産業の夢を追う

2021年11月17日 魏依晨(科技日報記者)

製造技術を背景に産業チェーンを構築

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2020年10月31日、2020南昌飛行大会で飛行パフォーマンスを披露する中国国産旅客機「C919」。(撮影:新華社記者周密)

60.6%
今年1--6月、南昌ハイテクパークの航空産業の成長率は前年同期比60.6%増だった。特に、航空機製造メーカー・中国商用飛機有限責任公司(COMAC)江西生産・試験飛行センターのプロジェクトが完了し、第1弾として完成した小型ジェット機「ARJ21」2機が、成都航空と江西航空に引き渡されたことは注目に値する。同センターは、航空機の生産、試験飛行、引き渡し能力を既に備えていることを示しており、COMACの別の地域で航空機を生産して、引き渡すという新たなスタイルが確立された。

 10月4日、第13回中国国際航空宇宙博覧会のパフォーマンス・展示を終え、航空工業江西洪都航空工業集団が開発したジェット練習機JL-8、JL-10、アクロバットチーム「紅鷹」などが続々と江西南昌瑶湖空港に戻り、同月末に開催される2021南昌飛行大会に備えていた。

 江西省南昌市の東の郊外にある瑶湖の湖畔にある南昌ハイテクパークは、同省民の「航空の夢」を背負い、航空産業の夢を追いかける道を先頭を切って歩んでいる。

「5つのチェーンの融合」により資源の集約が加速

 南昌市は、「5つのチェーンの融合」、「2つの核・1つのプラットフォーム」式の産業展開を通して、航空産業の発展に力を入れている。「ダブルコア」の一つとしての南昌ハイテクパーク南昌航空シティは、航空製造をメインに、生産・製造業を発展させている。そして、公共サービスプラットフォームの航空資源を活用し、産業チェーン、イノベーションチェーン、資金チェーン、政策チェーン、人材チェーンの「5つのチェーンの融合」のスタイルを通して、それを大きく強くしようとしている。南昌航空シティの計画面積は50平方キロメートルで、航空産業エリア、空港試験飛行エリア、総合関連エリア、航空特色ビレッジエリアなど、6大機能エリアが設置され、中国で最大の航空産業クラスターエリアとなっている。

 南昌ハイテクパーク航空シティ管理委員会の関係責任者は、「ハイテクパークでは現在、航空製造技術を頼りにした航空産業チェーンが形成されつつあり、中国国内一流の航空研究開発製造センターがほぼ完成している。瑶湖空港の資源を十分に活用し、南昌航空シティが、国際航空製品分解、メンテナンス、取引、展示、引き渡しの拠点になるよう取り組んでいる」と説明する。

政策が人材の供給確保を促進

 ハイテク産業としての航空産業の人材ニーズは高い。南昌ハイテクパークは、南昌「人材10カ条」新政策や「瑶湖英才」計画を徹底的に実施するほか、「1+5+X」人材政策体制を構築している。例えば、プロジェクトを携えてハイテクパークで起業する人材は、「瑶湖先端人材牽引プログラム」に認定されれば、起業・プロジェクト補助金として最高で1億元(約17.9億円)を支給される可能性があるほか、最高で1億元の株式投資、または1億元貸付3年全額利子補給の提供を受けることができる可能性がある。

 人材を引き留めるために、南昌ハイテクパークは、多額の資金を投入している。例えば、同パークは1,000軒以上の人材マンション、グローバルコミュニティを高い水準で建設し、中国国内外の専門家や人材に、優良で、快適な住居環境を提供している。また、COMACの関連の産業チェーンが南昌航空シティに集まるようにと、同パークは、COMACの国産大型機の研究開発の必要に合わせて、家電家具付きのホテル型マンション350軒を積極的に建設し、専門家などの人材が身軽に入居できる環境を整えた。また、そのような人材を対象に、財産権を取得できる住宅を提供するために、南昌航空シティだけでも、分譲住宅2,000軒を建設する計画だ。関係施設の面を見ると、同パークは、優良な医療、教育資源を呼び込み、「地下では地下鉄、路上では路線バス、空中ではモノレール」が走る立体交通ネットワークを建設する計画であるほか、調和的で住みやすい高品質な生活環境を構築している。

魅力が増すイノベーション環境

 C919の専門展示、飛行機5機編隊による中国トップクラスの飛行技術の披露、飛行機100機近くの至近距離展示などが開催された南昌飛行大会2020では、各種飛行機のエンジン音が青空をこだました。南昌飛行大会やリーディングカンパニーサプライヤー大会の開催をきっかけに、南昌ハイテクパークには、数多くの関連企業が入居するようになり、航空製造技術を背景に、設計、研究開発、製造、テスト、運営、関連設備を一体化した、「1時間圏内」の航空産業チェーンが形成されつつある。

 さらに整ったビジネス環境作りをするために、南昌ハイテクパークは、大々的な取り組みを行っているといえよう。

 南昌ハイテクパークは、市場化を運営の方向性として堅持している。空港利用という難題を解決し、体制・メカニズムの障壁を打破するために、同パークは、瑶湖空港管理公司を立ち上げ、空港の使用効率を確実に向上させ、南昌航空シティに入居する全ての航空企業に、網羅的な飛行保障サービスを提供している。

 いくら商品が良くても、知られていなければ意味がないのと同じように、製造した飛行機には、販売ルートが必要だ。その際、南昌ハイテクパークはいっそのこと、飛行機の仲介役を買って出ている。そして、ゼネラル・アビエーション消費市場の育成を加速し、「航空+観光」、「航空+スポーツ」、「航空+博覧」といった新業態構築に取り組んでいる。また、ゼネラル・アビエーション市場を積極的に育成するために、3年連続でエリア内のゼネラル・アビエーション運営企業から、年間300時間分のゼネラル・アビエーション飛行サービスを購入し、ゼネラル・アビエーション運営企業の発展を効果的に促進した。

産業の発展が加速

 全国3位の規模を誇る江西省の航空製造は、その40%を南昌ハイテクパークが占めている。国産大型機、ゼネラル・アビエーション産業の発展のチャンスを掴むために、同パークは、航空産業を最重要産業として推進している。第3世代高級練習機「獵鷹L15」は、南昌航空シティで飛躍し、中国初の民間企業が独自の知的財産権の持つ、上海冠一通用飛機の「GA20」がここで開発、製造され、引き渡しも行われた。航空工業江西洪都航空工業集団は、ワイドボディ機「CR929」のプロジェクトのうち、胴体・尾部のワークパッケージのサプライヤーに確定した。同パークは中国の航空産業の勢力図において重要な地位を占めている。今年1--6月期、同パークの航空産業の成長率は前年同期比60.6%増だった。特に、COMAC江西生産・試験飛行センターのプロジェクトが完了し、第1弾として完成した小型ジェット機「ARJ21」2機がそれぞれ、成都航空と江西航空に引き渡されたことは注目に値する。同センターは、航空機の生産、試験飛行、引き渡し能力を既に備えていることを示しており、COMACの別の地域で航空機を生産して、引き渡すという新たなスタイルが確立された。

 南昌航空シティ管理委員会の劉益副会長は、「今後は、ARJ21を当シティで完成させて、引き渡すのを基礎に、C919も南昌で完成させ、引き渡し、さらには、C919を当シティで組み立てることができるよう取り組む」としている。

 南昌テクノロジー・イノベーションシティは南昌航空シティを基礎にした、飛行機の研究開発、航空部品の研究開発、本社・オフィスが一体となったテクノロジー・イノベーションクラスターとなっている。南昌航空産業チェーンにおいて中心的な役割を果たす、南昌市党委員会常務委員、副市長の肖雲氏によると、第14次五カ年計画(2021‐25年)期間中、南昌市は、「2つの核・1つのプラットフォーム」を中心にして、優位性を持つ資源に的を絞り、南昌航空テクノロジー・イノベーションシティの本部研究開発拠点建設推進を加速させ、テクノロジー・イノベーションプラットフォームとしての役割を積極的に果たす計画だ。


※本稿は、科技日報「依託制造技術打造産業鏈南昌高新区逐夢航空産業」(2021年10月14日付7面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。