界首ハイテク区―「都市鉱山」を掘り進め循環型経済モデルを構築
2021年11月30日 呉長鋒(科技日報記者)
画像提供:視覚中国
特許申請数3,680件
現在、界首ハイテク区では1つの科創城(科学技術イノベーション街)、5つのサイエンスパークと9つの双創パークの「1・5・9」からなる段階的な発展の構図が形成されている。100社あまりの企業と北京大学、清華大学等の60あまりの著名な大学・研究機関により産学研協力が行われ、産学研協力に関する合意が累計で350件以上締結されており、特許3,680件が申請され、特許の実用化率は70%以上に達し、安徽省の中でも上位に位置する。
このほど、中国(界首)循環型経済発展指数の研究開発プロジェクトが正式に始動した。安徽省阜陽市の界首ハイテク産業開発区(以下、「界首ハイテク区」)は、この指数に関する研究開発業務に参加している。
「この指数が循環型経済の建設のための『気圧計』と『風向計』としての役割を果たすことで、界首が全国的な循環型経済のブランドとなるよう導かれ、循環型経済の発展とエコ文明の建設に『界首モデル』を提供するようになるだろう」と、界首ハイテク区管理委員会の副主任で、界首市科技局の局長を務める劉涛氏は語る。界首における循環型経済の発展に向け、科学的な評価体系で発展の成果を判断し、未来の業務を指導することで、界首が循環型経済の発展の先駆者となるよう促すことが求められている。
市場論理で事業を計画
界首市は安徽省と河南省の境に位置し、人口は80万2,000人で、安徽省の6つの県級市の一つである。界首市は山もなく、海にも面しておらず、まさに「地上に資源はなく、地下にも鉱物はない」という情勢にある。
産業革命以降、世界の80%以上の産業化利用が可能な鉱物資源が採掘され、地下から地上へと移動させられた。その一部は、使用された後に「ゴミ」の形態で人々の周囲に堆積され、総量は数千億トンに達する。産業化と都市化の過程で残されたこのような廃棄鉱物製品は、「都市鉱山」と呼ばれるようになった。
2016年に、界首市が全市を挙げて国家ハイテク区を創設することを発表した際、多くの人は、「いくつもの指標で立ち後れ、科学イノベーションの資源に欠ける省級貧困県で、どうやって国家ハイテク区を建設するというのだ」と理解に苦しんだ。
界首市はその鋭い視線を「都市鉱山」に向け、「工業で市を興し、工業で市を強化する」戦略を提示し、「都市鉱山」の資源を開発し、循環型経済産業を発展させようとしたのだ。そのために、問題を一つ一つリストアップし、ロードマップを一つ一つ明らかにし、一つ一つ攻略していく。
2005年以降、界首市では循環型経済産業の発展に向け、開発区化による開発と管理を実施している。2016年7月に、安徽省の界首経済開発区は界首ハイテク区に改称された。その傘下には5つのサイエンスパークがあり、このうち田営、西城、光武、北城の4つのサイエンスパークは再生資源循環利用サイエンスパークである。
「現時点で、各サイエンスパークの全国の回収拠点は4,000カ所に達し、一年間に廃棄バッテリー100万トン、再生プラスチック200万トン、再生アルミニウム30万トンを回収利用している」と、劉氏は話す。ハイテク区の循環型経済産業は、すでに界首市で工業強市戦略の実現と成功するための奮闘における主戦力となっており、全国の資源循環利用産業の発展プロセスにおいて良好なモデルの役割と牽引作用を発揮している。
界首ハイテク区西城サイエンスパークでは、さまざまな場所から集められた廃棄アルミニウム資源が建築用のアルミニウム型材に精細加工されるだけでなく、発泡アルミニウム製品に加工されて航空宇宙、軍事産業、高速鉄道等のハイテク分野に応用されている。
「界首の循環型経済産業は規模が大きく、効率が良く、産業チェーンが長く、イノベーション能力が高い等の優れた特色がある」と劉氏は語った。循環型経済産業に関しては、界首ハイテク区は特色ある専門的なパークの建設を目標に、主導産業が鮮明で、ハイテク企業が集約されたサイエンスパークを創設した。パークの駆動用バッテリー循環利用産業、再生プラスチック産業、再生アルミニウム産業は国内をリードする水準にあり、昨年の一定規模以上工業企業の利益総額は505億5,000万元(約8,700億円)に達した。
劉氏の話によると、最近認可された阜陽界首ハイテク区のアルミニウム基複合材料イノベーション型産業群に加え、界首ハイテク区では国家火炬(たいまつ)計画の界首高分子材料循環利用特色産業基地や、国家駆動用バッテリー循環利用ハイテク産業化基地等の「国字頭」(国家の名を冠する)称号を取得している。この数年で、界首市はネットワーク化買収やパーク化開発、グループ化経営、産業化誘致、統一的な汚染対策、高付加価値化利用によって「都市鉱山」を開発し、エコ化による台頭を実現する県域経済の発展の道を歩み始めている。
資本の力で事業を実施
9月初旬のある日、安徽吉祥三宝高科の副総経理を務める馬暁飛氏は、早朝から同社のスマート化プロジェクトの現場に現れた。このプロジェクトを彼と同じ位に気にかける人物は、安徽融城高新技術産業発展集団(以下、融城集団)の責任者だ。吉祥三宝高科は界首の新材料産業のリーディングカンパニーであり、院士(中国科学院および中国工程院の会員)と協力して新製品の研究開発を行い、総投資額7億元(約120億円)超の技術移転・技術改良プロジェクトを実施している。投資規模が大きく、牽引力が強く、先行きが良好なこのプロジェクトに、界首ハイテク区の完全融資企業である融城集団が関心を寄せた。そして、このほど、面積200ムー(約13.3ヘクタール)あまりの土地等の固定資産を使った資本投資によって、融城集団は同社株式の3割を持つまでになった。
「融城集団は、界首ハイテク区で『管理委員会+企業』改革が行われた後に設立された国有プラットフォーム企業で、投資の面で非常に慎重だ」と、融城集団の董事長を務める武建強は説明する。彼らは吉祥三宝高科に投資を行う前に多くの面で調査研究を行い、専門機関に委託して企業の発展やプロジェクトの先行き、投資リスク等に関して全面的な分析・評価を行った上で、董事会での検討を経て株式参加の決定を行ったのだ。
「新規にスタートしたプロジェクトの先行きは良好だったが、建設期間には資金が至急入用になった。融城集団の資本参加のおかげでプロジェクトの建設が加速され、来年には全ラインで操業開始できる予定である。設計生産能力に達した後の年間販売収入は16億元(約270億円)超の見込みだ」と馬氏は話す。今回の株式参加方式がプロジェクト収益後の利益分配であることで、企業の資金圧力は大いに軽減された。
融城集団は現在、界首の企業15社に資本参加している。融城集団は界首融城ハイテク株式投資基金、界首国元ハイテク産業基金を設立し、両基金によって払い込まれた資金はすでに4億元(約70億円)あまりに達している。
「科学技術のイノベーションは投資規模が大きく、リスクも大きいため、企業にとっては懸念が多い。金融的サポートを確実にしさえすれば、企業は充分な意欲を持てる」と劉氏は述べた。融城集団等の投資会社は優良プロジェクトを直接投資でサポートする上に、界首ハイテク区に融資担保会社を設立し、1件につき500万元(約8,600万円)の純信用融資担保が提供可能とすることで、テクノロジー型の中小企業の融資過程における抵当不足等の課題を解決している。2021年上半期には、融資担保会社だけで企業の8,000万元(約13億8,000万円)の融資ニーズを解決している。
プラットフォームを利用して事業を成立
界首ハイテク区では、パーク管理委員会の「支持するが指導はせず、支援するが面倒は増やさない」というサービス理念に対し、パーク入居企業からの賛同が集まっている。企業の発展方針に政府は干渉せず、法律や規則に合致しさえすれば、企業のやりたいこと全てを政府はサポートする方針だ。
「われわれは常に『3つの惜しまず』を貫く。つまり、プラットフォーム建設への投資を惜しまず、企業育成への投資を惜しまず、企業インセンティブへの投資を惜しまないことだ」と劉氏は説く。企業の発展は科学技術イノベーションに依存するものであるから、イノベーション資源が不足する状況に対して科学技術イノベーション活動のプラットフォームを構築することは、管理委員会が全力で成すべきことだ。
また、「われわれは『4つの訪問』アクションを実施した。国家級の科学研究機関を訪問して企業の発展のための技術を模索し、重点産業投資機関を訪問して企業の発展のために資金を融資し、各業界の著名な企業家を訪問してマネジメントを学び、国家級の業界団体を訪問して企業の発展に向けた戦略を模索した」と劉氏は説明した。界首市は「院士・専門家による界首訪問」や「エコ工業プロセス国際サミット」等のイベントを行い、四川大学、北京化工大学、浙江大学等の20あまりの大学への企業の視察・マッチングを計画し、企業と科学技術イノベーションの資源との「対面」を実現した。
現時点で、界首ハイテク区には院士作業ステーション8カ所、ポスドク科学研究作業ステーション10カ所、省級以上の科学研究プラットフォーム70カ所以上が設立され、12のハイレベルなイノベーション・創業チームが入居している。
2019年12月3日には、界首(上海)オフショア・イノベーション・センターの開設式・全面マッチング上海交流大会が上海で行われた。これも、安徽省が始めて上海で設立したオフショアの科学技術イノベーションプラットフォームである。
「今後は、さらに大きなプラットフォームを通じて資本、人材、技術等のイノベーション資源を集め、異要素間のインタラクションを喚起する。界首ハイテク区では産業チェーンの誘致を行い、発展のかけ算で価値の倍増効果を実現する」と劉氏は語った。現在、界首ハイテク区は北京、深圳、合肥、南京等でオフショア・イノベーション・センターを建設しており、アルミニウム基の新材料、高分子材料等の産業の強みを生かしてイノベーション型産業群を形成し、全産業チェーンのエコシステムを育成しようとしている。
界首ハイテク区では経済規模全体の拡大を続けると同時に、科学技術イノベーション能力も著しい向上を示す。現時点で、1つの科創城(科学技術イノベーション街)、5つのサイエンスパークと9つの双創(大衆の起業、万人のイノベーション)パークの「1・5・9」からなる段階的な発展の構図が形成されている。100社あまりの企業と北京大学、清華大学、中国科学技術大学、中国環境科学院、中国農科院等の60あまりの著名な大学・研究機関により産学研協力が行われ、産学研協力に関する合意が累計で350件以上締結されており、特許3,680件が申請され、特許の実用化率は70%以上に達し、安徽省の中でも上位に位置する。
※本稿は、科技日報「深挖"城市鉱産" 這箇園区探索循環経済"界首様板"」(2021年9月30日付7面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。