第183号
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上海市、中国国内初の「基礎研究特区」を設置へ

2021年12月06日 候樹文、王春(科技日報記者)

基礎研究の「0から1へ」の独創的なブレイクスルーを促す

 基礎研究は科学技術システム全体の源であり、コア技術の課題におけるブレイクスルーの根源でもある。「0から1へ」の独創的なブレイクスルーがなければ、科学技術イノベーションは水源のない水、根のない木のようなものだ。上海市政府は10月19日に記者発表会を開き、「基礎研究の質の高い発展の推進加速に関する若干の意見」(以下、「若干の意見」)に関する状況を説明した。上海市が基礎研究に特化した政策を打ち出すのは今回が初めてだ。

「若干の意見」は、基礎研究分野の配置、基礎研究能力の強化、基礎研究人材の強化、基礎研究環境の支援強化、基礎研究の発展環境の最適化などを中心に、20項目の措置を打ち出している。

「若干の意見」によると、2025年までに上海の基礎研究費が社会全体の研究開発(R&D)費に占める割合を約12%にまで高める。上海市政府の陳鳴波副秘書長は「基礎研究の重視と発展への各方面の積極性を引き出すことを重視する必要がある。基礎研究に対する市の財政投資を増やす必要がある。また、基礎研究の支援拡大へと企業を導く必要がある。現在、製造業をはじめとするハイテク企業のイノベーション関連投資はいずれも2%足らずで、基礎研究への割合はさらに低い。社会は、寄付やファンド設立など様々なルートでの投資を社会に促し、持続的で安定した資金投入メカニズムを形成する必要がある」と指摘する。

 上海が全国に先駆けて試験的に「基礎研究特区」を設置することは特筆に値する。基礎研究で大きな強みを持つ市内の大学や研究機関に長期的・安定的な資金援助を行い、研究テーマ選択の自由、研究実施や経費使用における自主性を支持し、「10の穴を掘るよりも1つの井戸を掘る」姿勢で研究に専念できるよう研究者を導く。

「長い間、研究者は基礎研究分野で長期安定的な支援を強化し、研究に専念できる雰囲気を醸成することが差し迫って必要であることを一様に訴えてきた」。上海市科学技術委員会の朱啓高副主任は「『基礎研究特区計画』は、上海の基礎研究支援配置システムを整備するために重要であり、市内の際立った強みを持つ大学や研究機関の積極性と主導性を十分に発揮させ、重点分野、重点チームのために、基礎研究に適した『小環境』を整え、独創的、先導的な科学研究の推進を強化する狙いがある」と指摘する。

「若干の意見」によると、「基礎研究特区」は基礎研究に際立った強みを持つ大学や研究機関を選定して試験的に設置し、重点分野、重点チームに対して長期的、安定的、集中的な支援を行う。「基礎研究特区」には研究における十分な自主権を与え、テーマの自由選択、研究実施や経費使用における自主性などを支持し、研究の組織形態や管理体制において改革と模索の余地を十分に与える。

「基礎研究特区計画」は、長期的で安定した実施サイクルを強調。領域横断・統合的な研究方向を際立たせ、規制を緩和し、権限を与える管理システムを模索する。研究者やチームに十分な探索と研究の時間を保証するため、「特区計画」では資金援助のサイクルを5年とするとともに、特区に十分な自主権を与え、研究テーマ選択の自由、研究実施や経費使用における自主性を認め、研究者が研究に専念できるよう後押しし、各種申告に要する時間とエネルギーを軽減する。

 また、世界レベルの大型科学施設クラスターを建設する。中国、さらには世界で最も規模が大きく、最も種類が揃い、最も機能の高い光子大科学施設群、マイクロ・ナノ、生命、海洋、エネルギーなどの科学技術インフラの建設を加速する。

 現時点で上海には上海光源、蛋白質センター、超高強度レーザー実験装置など国の大型科学施設が集まっており、重要な国際的科学プロジェクトの始動・参加をリードしている。


※本稿は、科技日報「上海在全国率先試点設立"基礎研究特区"」(2021年10月20日付2面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。