第184号
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微細藻類を採取して炭素排出量を削減

2022年01月31日 AsianScientist

 科学者たちは機械学習を利用した新しい手法を使い、微細藻類のセルファクトリーとその炭素循環機能を調べる方法をスピードアップしている。

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 AsianScientist 機械学習(ML)技術を活用した新しい方法を使うと、有用な微細藻類とその機能の発見を加速させ、 二酸化炭素を高価値の分子に変換することができる。中国科学院の青島バイオエネルギー・バイオプロセス技術研究所(QIBEBT、青島能源所)の研究者たちはこの方法をAnalytical Chemistry 誌で発表した。

 小さくても惑わされてはいけない。微細藻類は小さく、簡単な単細胞の微生物であるかもしれないが、様々な形を取り、それぞれが気候変動などの社会問題に対処する上で大きな影響を与えることのできる多様な働きをする。

 植物が二酸化炭素を吸収して糖を合成するのと同様に、微細藻類の代謝活動も自然の中で二酸化炭素を他の化合物に変換し、食品、燃料、医薬品の生産に役に立ってくれる。

 複数のコミュニティがカーボンニュートラルを達成する方法を模索している。そのような中で、微細藻類の機能を利用して、さまざまな化学プロセスや製造プロセスを通じて炭素排出量を削減できるかもしれない。しかし、地球には何百万もの微細藻類が生息しているため、科学者はどの種が最も効率的に炭素をリサイクルするのかまだ分かっていない。

 微細藻類の特徴と代謝活動を正確に特定しようと、多くの研究所が微細藻類の細胞培養を行い増殖させている。だが、このプロセスは時間がかかり、退屈なものである。QIBEBTのチームは、顕微ラマン分光法と呼ばれる化学分析技術とMLに基づくコンピューティングフレームワークを組み合わせて、微細藻類の研究を加速する方法を開発した。

 顕微ラマン分光法を使うと、微細藻類とその細胞内化合物は、化学構造と分子相互作用に応じて、入ってくる高強度の光を散乱させる。散乱したラマン光波は信号のスペクトルにまとめられ、それぞれのセルファクトリーの機能を明らかにし、2種類のイメージング画像が作成される。1つは色を出す分子からのもので、もう1つは他のすべての化合物からのものである。

 ほとんどの顕微ラマン分光法は2つのイメージング画像のうち1つだけを使うが、チームはラマン分光法の画像を組み合わせて微細藻類の代謝に関する詳細な情報を引き出し、9,000を超える細胞からラマンスペクトルのデータベースを構築した。

 システムはMLアルゴリズムを使用してデータからパターンを迅速に抽出し、この精度は過去に培養された微細藻類と比較して、種とその代謝活動を何と97%という精度で識別したことが確認された。

 一方、研究者たちは培養されていない微細藻類についてゲノム配列決定技術を使って戦略を補い、一度に1細胞ずつ種のDNAを分析した。高品質のシーケンスとMLの機能を活用して各微細藻類細胞の分子世界を分析し、多くのデータがシステムに入るにつれ、学習し改善することができた。

「この包括的アプローチは、培養されたものであってもされていないものであっても、単一細胞を迅速に同定して代謝プロファイリングすることができます。微細藻類セルファクトリーの採取とスクリーニングを大幅に加速してカーボンニュートラルを達成することができます」と、QIBEBTの責任著者である徐建(Xu Jian)博士は述べた。

 

発表論文等: Baladehi et al. (2021) Culture-Free Identification and Metabolic Profiling of Microalgal Single Cells via Ensemble Learning of Ramanomes.

原文記事(外部サイト):
●Asian Scientist
www.asianscientist.com/2021/11/in-the-lab/microalgae-metabolism-raman-carbon-cycling-emissions/

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Source: Chinese Academy of Sciences; Photo: Shutterstock.
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