第185号
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「伏羲」の裏で加速するテクノロジー・イノベーション----世界初のデジタルグリッド研究院を訪ねて

2022年02月07日 何星輝(科技日報記者)

 無人当直の発電所から、ドローンによる巡回、ロボートによる勤務が常態化することに至り、中国初の国産電力チップ「伏羲」の登場から、「送電網マップ」を通じた南方地域5省の物理送電網のデジタルツインまで、テクノロジー・イノベーションが現在、デジタルグリッドの建設を牽引し、従来の送電網が華麗なる変化を遂げている。

 世界初のデジタルグリッド研究院としての南方電網デジタルグリッド研究院は近年、体制・メカニズムの改革を突破口として、テクノロジー型企業を対象に市場化改革を深く推進し、中国の独自のイノベーション能力向上を展開する特別措置「科学改革モデル行動」や選出した中央企業(中央政府直属の国有企業)子会社などを対象に総合的な改革を深く推進する「双百行動」といった政策の相乗効果を活用して、テクノロジー・イノベーションに生産力を求め、臨機応変な国有テクノロジー型企業改革モデルを構築しており、南方電網公司のデジタル化建設にテクノロジーの力を提供している。

「公募制」を採用してキーテクノロジーの研究開発

 マスターコントロールチップは、「電力工業をコントロールする『ブレイン』」と呼ばれている。しかし、中国のマスターコントロールチップは長年、海外の技術と製品に強く依存し、サイバーセキュリティや送電網の安定といった面で、常に潜在的リスクを抱えてきた。

 送電網はリアルタイムコントロールシステムで、発電や送電、電気利用は瞬間的なものであるだけでなく、データ量は膨大で、保存や、一時的な移動はできないため、送電網が故障したり、揺れ動いたりすると、「データが崩壊する」危険がある。そのような緊急時の送電網の安全を守るうえで、マスターコントロールチップは非常に大きな役割を果たす。独自のコントロールを実現するためには、キーテクノロジーの研究開発をするしかない。

 南方電網デジタルグリッド研究院の李鵬総経理は、「センサー、人工知能、グリーンエネルギーといった先端的方向性をめぐり、当研究院は『技術リーダーの公募』により、若手科学者がキャリアや職級などの足かせから解かれるようにし、独自のイノベーションチームを立ち上げられるようにした。そして、チームの発展をサポートする若干の措置を講じ、科学研究者が、独自のテクノロジー・ロードマップの決定権、雇用権、審査権を持つことができるようにした」と説明する。

 この「公募制」がイノベーションの活力を活性化している。南方電網デジタルグリッド研究院が牽引の下で、中国初の全面的な国産化を実現した電力専用マスターコントロールチップ「伏羲」の研究開発、量産に成功したのだ。

 南方電網デジタルグリッド研究院研究開発センターの副社長で、チップ・スマート端末チームの責任者を務める習偉氏は、「『伏羲』チップにより、送電網の複数分野におけるシーンに新設する設備のカバー率が大きく向上した。今後は、オールシリーズの製品ができるだろう」と説明する。

 習氏率いるチームは現時点で、スマートセンサーや5G通信、安全なモノのインターネット(IoT)、デジタルソフトウェアといった新世代デジタル技術の研究開発に取り組んでおり、南方電網公司の近代的なデジタルグリッド建設を力強くサポートしている。南方電網デジタルグリッド研究院が今年計画した技術リーダープロジェクト11件、公募プロジェクト2件は、新型電力システム、クラウドプラットフォーム、二酸化炭素(CO2)排出量ピークアウト、カーボンニュートラルといった分野の技術研究、応用のブレイクスルーに焦点を合わせている。

デジタルグリッド建設を「テクノロジー・イノベーションブレイン」がサポート

 デジタルグリッドの建設はある意味、従来の物理送電網のデジタル化、スマート化、オンライン化の過程と言うことができる。クラウドコンピューティングや人工知能、ビッグデータ、IoTといった、先端技術の活用により、デジタルグリッドが新型電力システムを支えるベストな形態となっている。

 南方電網は現在、多くの発電所で、無人当直やリモート集中コントロールシステム、少人数による運営・メンテナンスを実現している。ドローンによる巡回、ロボットによる勤務、デジタル技術の大量応用などにより、送配電の効率は大幅に向上している。

 その裏で、南方電網デジタルグリッド研究院は「テクノロジー・イノベーションブレイン」としての役割を果たし、アプリ「南網智瞰」を通して、「送電網マップ」を作り上げ、南方地域5省の物理送電網のデジタルツインを実現した。また、アプリ「南網在線」を通して、5500万のクライアントが、一度も外出することなくオンラインで電気関連の手続きが行えるようにサポートし、世界初のチップ化保護装置や世界初の小型センサーといった、複数のコアテクノロジーの研究開発を、先頭に立って担っている。

 では、南方電網デジタルグリッド研究院は、どうやって発足からわずか2年で、テクノロジー型企業の研究開発は通常、孵化周期が長く、効率がなかなか向上しないというかねてからの難題をどのように解決し、次々とイノベーション成果を誕生させ、デジタルグリッド建設をサポートし、デジタル化モデル転換の段階的ブレイクスルーを実現したのだろう?

 南方電網デジタルグリッド研究院の林火華会長は、「体制・メカニズムのイノベーションを突破口にして、国有企業の党組織建設の優位性を存分に発揮し、力を合わせて、人材を幅広く集め、国有テクノロジー型企業の改革発展の新スタイルを構築している」と語る。

 南方電網デジタルグリッド研究院は、スタートダッシュを成功させることに全力を尽くしている。特色技術委員会を立ち上げ、テクノロジー・ロードマップや投資管理を統一して行い、研究開発の方向性をしっかりと定めている一方で、特色あるテクノロジー・イノベーションメカニズムに着眼し、「科学技術改革3カ年行動」を体系的に推進し、改革措置81項目を通して、テクノロジー・イノベーションの活力を活性化している。

 人材誘致の面でも、南方電網デジタルグリッド研究院は、市場の3倍の報酬を出して、優秀な業界のリーダー的人材を呼び込み、契約・報酬制度を結びつけ、世界に向けてハイレベル人材、リーダー的専門家、チームそのものを誘致している。また、「審査3年+年度評議」というフレキシブルな評価スタイルを採用している。こうして、ハイレベル人材のストック不足という苦境を打破すると同時に、臨機応変なメカニズムを通して、人材が出入りできるようにしている。南方電網デジタルグリッド研究院は既に、科学技術者が85%以上を占める研究開発チームを作り上げ、名実相伴う「テクノロジー・イノベーションブレイン」を構築し、南方電網のデジタル化建設を確実にサポートしている。


※本稿は、科技日報「"伏羲"背後的科創"加速度"2021年12月01日第03版」(2021年12月1日付3面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。