第187号
トップ  > 科学技術トピック>  第187号 >  空間の制限を打破する飛び地パークがウィンウィンの発展への助けに 貴陽市

空間の制限を打破する飛び地パークがウィンウィンの発展への助けに 貴陽市

2022年04月05日 何星輝(科技日報記者)

image

画像提供:視覚中国

「省都を強くする」五年計画は、(貴州省の省都である)貴陽市が貴州省の質の高い発展を牽引するために絶対に必要な取り組みだ。うち、地域融合発展と産業パークの質、効率向上が大きなカギとなる。一方で、飛び地パーク(飛地園区)が登場し、貴陽市が地域融合発展とパークの質、効率向上を成し遂げるための有力な足掛かりとなっている。

 産業が発展するうえで、産業パークは担い手である一方、飛び地パーク(飛地園区)というスタイルは、産業パークの発展のために時空の制限を打ち破った。貴州省貴陽市は最近、産業パーク共同建設業務推進会を開催し、協力の主体、スタイル、政策などの面で、飛び地パークの建設のために、明確な方針を打ち出した。

 デジタル経済シンクタンクのシニア研究員を務める中鋼経済研究院の首席研究員・胡麒牧氏は、「飛び地パークというスタイルは、近年の中国の地域経済発展の過程で生まれた『埋め込み式』の発展スタイルだ。それを採用すると、行政の境界の制限や不均衡性を打破するのを前提に、産業と関連する要素の移転を実現し、さらに、資源がより広い範囲に再配置されるよう推進する、積極的な模索だ」と説明する。

旧市街地が飛び地パークにより活気あふれる場所に

 南明スマート製造産業パークに位置する貴陽臻芯科技有限公司の生産工場は現在、繁忙を極めている。2020年12月に本格的に南明スマート製造産業パークに進出し、5月中旬に試験運営が始まるまでのわずか半年の間に、同社は、「契約」、「入居」、「試験運営」という大きな3ステップを行った。同社の責任者である楊進氏は「視察を経て、同パークは、環境が優れているだけでなく、家賃も減免されることが分かり、従業員の住むところも確保できた」と説明する。当社は、超高画質ディスプレイ技術や人工知能(AI)などの分野を深く研究し、生産した製品は、中国国内で販売されているほか、欧米諸国、東南アジア、日本などの国・地域にも輸出されている。

 飛び地パークの1つである南明スマート製造産業パークが位置する貴陽市の旧市街地は元々、土地資源に限りがあるため、南明区の産業発展の空間配置において足かせとなっていた。2016年、南明区は、時機を判断し、情勢を推し量り、貴州双竜航空港経済区を活用し、飛び地パークのスタイルを採用して、スマート製造産業パークを建設する計画を策定した。

 南明区パーク弁公室総合調整部の朱涛部長は、「双竜航空港経済区は約30ヘクタールの土地を無償で、産業パーク建設に提供した。ここはアクセスが便利で環境も優れており、南明区に先進地域の先端技術や優良企業を誘致する先決条件が整っていた。南明スマート製造産業パークは、三期に分けて、中鉄八局などの企業が建設を請け負った。現在、一期の南明医食同源産業パークと、二期の南明電子情報産業パークAグループが完成して、使用が始まっている。一期は主に、中医薬のイノベーションやバイオテクノロジーなどを重点とした医食同源産業の発展に、二期は主にミドル・ハイクラスのスマート製品を中心とした電子情報産業の発展に重きを置いている」と説明する。

 朱部長は、「南明スマート製造産業パークは、『ビジネス環境』という生命線をしっかりと掴み、『1プロジェクト当たり1専門グループ』をベースに、『1企業に1政策』、『1件につき1回検討会議』の方法を採用し、各部門が入居している企業に、至れり尽くせりのサービスを提供するよう取り組んでいる。また、同パーク内では学校や病院、商業サービスなども日増しに整備されており、パーク内の企業に限りのない生産の原動力を提供している」と説明する。

 南明スマート製造産業パークは現在、投資家の注目度が日に日に高まる場所となっており、スマートグリッド製造産業パークや貴州醤酒集団有限公司貴陽生産拠点・展示センター、貴州現代中医薬応用イノベーション産業モデル拠点といった多くの優良プロジェクトが相次いで実施され、既に調達された工業資金は累計で約5億3390万元(1元は約18.1円)に達している。中でも南明区の独特な発展の優位性及びハイレベル人材の追跡サービスなどの貢献と切り離せない。

飛び地パークスタイルが越境ECの新生態を拡大

 貴陽総合保税区は、貴州省初の総合保税区で、同省の「1+8」国家級開放イノベーションプラットフォームの1つでもある。だが、郊外に位置している貴陽総合保税区は、どのように貴陽市の市民に気軽に越境ECのサービスを体験してもらうことができるのだろう?飛び地パークスタイルとビッグデータを活用することで、時空上で貴陽総合保税区の越境EC産業パークを市内にまで伸ばし、同産業パークの新生態を再構築するというのが、その答えだ。

 貴陽市観山湖区の繁華街に位置する雲上方舟は、貴陽総合保税区が力を入れて建設した貴州初のスマートビジネス複合体だ。ここで「勤務」しているロボット「小雲」は、消費者と音声コミュニケーションを取り、案内サービスを提供しているほか、顔認証を駆使して消費者に自ら挨拶したり、消費者が会員登録したり、ポイント交換したりするのをサポートしている。

 顔認証やAI、ビッグデータといった技術を通して、「雲上方舟」は、客のイメージをしっかりと描き出し、業者はそれに基づいて、客のニーズを確実に把握している。また、データ収集や結果分析を通して、消費者がオーダーメイドサービスを受けることができるようにしているほか、業者にサービスや商品の改善のための的確な根拠を提供している。そのために、貴陽総合保税区はビッグデータ専門人材を導入している。ビッグデータBI分析エンジン、公共WiFiシステム、商業施設管理事務システムといったAI技術12種類を駆使し、センサー300個近く、客の流れを把握する監視カメラ130台あまり、セキュリティ用監視カメラ330台あまりを設置して、業者と消費者に全く新しいスマート体験を提供している。

 貴州初の大規模越境ECプラットフォーム「G7保税広場」ができたことで、「雲上方舟」には、日用品、コスメ、マタニティ・ベビー用品、食品、酒、家具などの世界中の高品質ブランド、現在の人気ブランドが集まっていることは注目に値する。「オンライン+オフライン」の融合発展、一般貿易と越境ECを組み合わせた「二重制度」経営スタイルなどを採用しているため、消費者がG7保税広場のオンラインプラットフォームで注文すると、購入された輸入商品が貴陽総合保税区から直接発送され、物流時間が大幅に短縮し、市民は自宅にいながら世界中の商品を便利に購入することができるようになっている。

 貴陽総保集団公司の李珂・副社長は、「『雲上方舟』スマートビジネス複合体は、イノベーション駆動を目標に、従来型の実体ビジネスのウィークポイントに目を向け、AIやビッグデータ技術と従来型のビジネスを一歩踏み込んで融合させ、中国初の感知、分析、交流、進化、推進・拡大が可能なスマートビジネス複合体となった」と胸を張る。

 南明区が元々あった経済区を活用して活気を生んだのに対して、貴陽総合保税区は、貴州省のビッグデータ発展の歴史的チャンスを掴み、飛び地パークスタイルを活用して、貴陽越境EC産業パークに新たな活力を注入している。

飛び地パークが「省都を強くする」難題を解決

 協力して飛び地パークを共同建設するというのは、「飛び出す」側にとっては、プロジェクトが飛び出して、生産高が残り、限りある土地資源と発展のスペースという足かせを打ち破っている。一方、受け入れ側にとっては、産業が「飛び込んで来る」ため、注目が集まるほか、産業パークの重複建設を避けることができ、まさにウィンウィンの構造となっている。

 2020年初め、貴陽市雲岩区は、貴安新区と戦略的枠組協定に調印。飛び地パーク共同建設のスタイルを採用して、約42ヘクタールの雲岩貴安飛び地パークを建設した。計画では、双方は優位性を誇る産業に焦点を当て、共同で投資誘致、産業サービスを展開し、設備製造、航空製造、新型材料、高品質食品・薬品といった、際立つ業態の産業パークを構築するとともに、建築、商業貿易、サービス業といった産業の発展に共同で取り組むことになっている。協力が深化するにつれて、双方は、各自の産業や資源、政策、管理などの面の比較優位性を十分に生かし、産業パークの共同建設を協力発展のベースとし、共同で投資誘致を実施し、網羅的に、多分野にわたり、一歩踏み込んだ産業協力を展開する計画だ。また、雲岩貴安飛び地パークは、雲岩区の優良企業に対して、「都市部から産業パークへ移動」するよう奨励し、成長する見込みがあり、リーダー的役割を果たし、モデルとなる企業や人材チームのプロジェクトを積極的に呼び込んでいる。

 貴陽市雲岩区工業・情報局の陳亮局長は、「最初の段階で、今朝電気と愛康嘉の2社が雲岩貴安飛び地パークに入居するのを踏まえ、当区は貴安区との連携を積極的に推進し、『雲岩本部+貴安拠点』、『雲岩市場+貴安の製品』、『雲岩で研究開発+貴安で製造』、『雲岩企業+貴安資源』の産業協力の新スタイルを模索し、資源の相互補完、産業の相互接続、経済の互助、施設の共同建設、プロジェクトの共同誘致、ウィンウィンの発展を実現し、飛び地パークのスタイルを積極的に推進するとともに、現地の状況に合わせて貴陽総合保税区と協力して、飛び地パーク建設を模索する計画」と説明する。

「省都を強くする」五カ年計画は、貴陽市が貴州省の質の高い発展を牽引するために絶対に必要な取り組みだ。うち、地域融合発展と産業パークの質、効率向上が大きなカギとなる。また、飛び地パークが登場し、貴陽市が地域融合発展と産業パークの質、効率向上を成し遂げるための有力な足掛かりとなるなっている。

 貴陽市は、特別に政策を制定し、貴陽市の中心部の各区・市が貴安新区、貴陽総合保税区といった周辺地域と協力して飛び地パークを共同建設するよう推進することで、資源、要素の共有、機能の相互補完実現を模索している。現在、貴安雲岩産業パークのほか、貴安南明、貴安花溪協力産業パークが貴安新区で建設されている。「省都を強くする」計画のうち、飛び地パークは、地域と行政の足かせを打破し、貴陽市が地域発展の難関を攻略するための有力な足掛かりとなり、ウィンウィンの構造が形成されている。


※本稿は、科技日報「突破空間限制 飛地園区助貴陽走出多贏発展路」(2021年12月30日付7面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。