バイオ医薬品産業のエコシステムを構築する無錫ハイテクパーク
2022年04月26日 過国忠(科技日報記者)徐逸卿(科技日報通信員)
(画像提供:視覚中国)
700億元超
無錫ハイテクパークには現在、バイオ医薬品やその関連企業が約270社以上あり、主に、先端化学薬品、バイオ製品、臨床診断、医療機器といった分野に集中している。昨年、同ハイテクパークのバイオ医薬品産業の規模は前年同期比18.4%増の700億元(1元は約18.5円)以上に達した。
迪哲(江蘇)医薬股份有限公司中国エリア研究開発生産本部及び世界バイオ医薬品イノベーション孵化センタープロジェクトの建設がこのほど、無錫ハイテクパークで始まった。これは無錫市で今年初めて着工した省級重要プロジェクトだ。
バイオ医薬品産業は、無錫ハイテクパークの第14次五カ年計画(2021‐25年)の発展において重要な産業の一つだ。「無錫ハイテクパーク(新呉区)現代産業『第14次五カ年』発展計画」は、2025年までに、同パークのバイオ医薬品産業の規模が1350億元に達するよう取り組むとの目標を明確に掲げている。
無錫ハイテクパークのバイオ医薬品産業はどのような現状なのだろう?今後、先端イノベーション資源と重要プロジェクトをどのように呼び込んで、産業クラスター構築を加速させるのだろう?3月1日、無錫ハイテクパーク管理委員会の関係責任者と重点企業を取材した。
計画・政策の牽引で産業が特色ある発展を
「第14次五カ年計画」期間中、長江デルタ一体化が推進されるにつれて、地域間の競争が産業間の競争へと変化している。どのように、産業の低レベルの重複式競争から抜け出して、先端の現代産業新体制を構築するのだろう?
無錫ハイテクパークは、全力で新発展の段階に立脚し、新たな発展理念を徹底し、発展の新たな好機をしっかりと掴み、テクノロジーの自立・自強を戦略の下支えとし、戦略的新興産業を重点的に発展させて、一流の産業発展の新たなエコシステムを構築し、質の高い発展の新たな原動力を育てて、特色ある発展の新たな構造を構築するという道を選んだ。
無錫ハイテクパーク共産党活動委員会書記で、新呉区共産党委員会書記を務める崔栄国氏は、「新たな発展の段階に立脚し、国の産業発展の方向性を全面的に目指し、自身の発展の基礎と結び合わせて、科学的に『6+2+X』産業構造を計画し、バイオ医薬品産業の整ったエコシステムを全力で構築し、バイオ医薬品産業の規模1000億元以上を目指し、ハイテクパークを中国一流のバイオ医薬品産業の新たな先進地へと成長させたい」と語る。
無錫ハイテクパークが制定した「無錫ハイテクパーク現代バイオ医薬品産業質の高い発展の推進を一歩踏み込んで加速させることに関する政策意見(試行)」(以下「政策意見」)は、12項目の内容からなる。うち、支援金の面では、薬剤イノベーションの分野が最高で累計2000万元、医療機器・体外診断の分野が年間最高500万元、ジェネリック医薬品の分野が年間最高500万元、特別医療目的用食品の分野が年間最高1000万元となっている。
薬品及び医療機器の市販承認取得者と受托生産企業に対する支援金を見ると、委託者は年間最高500万元、受託者は200万元となっている。薬品や医療機器1種類の領収書上の売上高や中心事業の領収書上の売上高が初めて1億元を超えた場合、最高500万元の奨励金が給付される。
また、公共サービスプラットフォーム構築の分野を見ると、支援金は最高で1000万元となっている。専門人材の面を見ると、新たに雇用した人材に対して、年間最高8万元の補助金が支給される。ハイレベル人材と認定された場合、年間最高300万元の補助金が支給される。ハイテクパークのバイオ医薬品企業で働く副社長以上の管理者や研究開発者には、年間最高10万元の補助金が給付される。
また、資本・金融の分野を見ると、奨励金は最高100万元となっている。企業が有名な大型展示会に出店した場合、年間最高20万元、建設業界の交流プラットフォームには最高で150万元の支援金が支給される。
パークの下支えの面を見ると、「三廃(生産で生じる廃液・廃ガス・固形廃棄物)」の処理といったプロジェクトを集中的に展開している場合、最高で500万元の支援金が支給される。土地保証の分野を見ると、合理的に約200ヘクタールの産業化用地を用意している。
計画・政策に牽引され、無錫ハイテクパークのバイオ医薬品産業は急成長の段階に入っている。同パークには現在、バイオ医薬品やその関連企業が270社余りあり、主に、先端化学薬品、バイオ製品、臨床診断、医療機器といった分野に集中している。昨年、同ハイテクパークのバイオ医薬品産業の規模は前年同期比18.4%増の700億元以上に達した。
イノベーション資源を呼び込んで産業の質の高い発展を誘導
無錫ハイテクパーク科技局の関係責任者によると、同パークのバイオ医薬品産業はある程度の規模まで成長したものの、産業全体の水準をより一層向上させ、チェーンの強化・補充・延長を加速させ、企業のイノベーション力や市場競争力をさらに向上させる必要がある。
では、どのようにブレイクスルーを実現すればいいだろう?無錫ハイテクパークは問題の方向性を際立たせ、テクノロジーイノベーションを質の高い発展の重要な下支えとし、「産業資本と金融資本の融合、優位性の相互補完」という用地計画に基づいて、協力体制のメカニズムを刷新し、特色あるライフサイエンステクノロジーパークを統一して建設し、バイオ医薬品企業や資金、技術、人材といった要素が集まり、特色ある発展を遂げるよう積極的に誘導している。
ここ3年、無錫ハイテクパークは、公共サービスプラットフォームの建設を加速させ、政産学研連携を強化し、北京や上海、深センといった都市、海外に設立した提携機関、研究開発拠点を設立し、世界から各種イノベーションチームと重要プロジェクトを呼び込み、ハイレベルイノベーション人材の不足、企業のイノベーション能力の不足といった難題を効果的に解決してきた。
無錫ハイテクパークがアストラゼネカと共同で建設した無錫国際ライフサイエンスイノベーションパークの入居率は現在、90%を超えている。昨年、同パークは中国工程院の院士である江南大学の陳堅氏が率いるチームと提携契約に調印し、プロバイオティクス・機能食品産業研究院を共同で建設し、多方面の資源を統合することで、プロバイオティクス・腸管健康の分野のカギとなる科学的問題の研究を展開するほか、プロバイオティクステクノロジー成果の産業化を推進し、食品、栄養、微生物、臨床医学といった学科の融合発展を実現していく考えだ。
こうした新たに構築されたイノベーションのキャリアーやプラットフォーム、モデル拠点は、無錫ハイテクパークがバイオ医薬品産業クラスターのイノベーション体制構築やクラスターブランド・ビルディングを推進する面で重要な役割を果たしている。
無錫ハイテクパークは発展の過程において、国際医薬産業競争に参入することを目標に、一連のイノベーション成果を収めてきた。例えば、近年、新たに研究開発した薬剤約20種類が、第1、2、3相の臨床試験に入っている。うち、3種類のジェネリック医薬品は同質性評価が終わり、10種類の薬剤は臨床前の研究段階に入っている。
最適な環境づくりをして産業の発展に活力を注入
崔氏は「今年、重要プロジェクトの建設に力を注ぎ、両級特別グループ協同連動、資源要素保障を強化し、全力で誘致に取り組み、『産業チェーン投資誘致』措置を実施し、重点中央企業(中央政府直属の国有企業)や民間企業、外資系企業と積極的にマッチングし、地域本部、二級企業、産業プロジェクトを全力で呼び込み、重要・超大プロジェクトや代表的なプロジェクトを最大限誘致したい」と意気込む。
牽引力の強い重要プロジェクトをどのように呼び込むのだろう?崔氏は、「当パークは、世界に目を向けて医薬産業の新たな構造を構築し、全力を注ぎ、サービスを最適化し、政策をニーズに合わせ、要素をプロジェクトに合わせる方向性を堅持し、ポイント・ツー・ポイント、至近距離サービスを強化し、企業の発展やプロジェクト建設のために、最適のエコシステムを作り出さなければならない」との見方を示す。
無錫ハイテクパークは近年、長江デルタ現代産業の先進地や対外開放の窓口として、行政審査の「バリアフリー」、全く手を抜かない政策実施、至近距離の「親切なサービス」を常に堅持し、ビジネス環境の高度化を促進し、「難しい問題をなくすように、全力で処理する」ビジネス環境づくりに取り組んできた。
無錫ハイテクパークは、「印章1つで管理・審査」する制度を率先して実施し、審査のプロセスをできるだけ簡素化した。また、重要プロジェクト専用の円滑化された審査サービスを推進し、審査の効率を向上させてきたほか、「同じサイト、同じ窓口」で一度に審査ができる改革を進め、行政サービスの円滑化を推進し、人的資源・社会保障部(省)、民政部、衛生・計画出産委員会、都市管理といった複数の当局の46事項が集まる「市民に便利な15分政務サービス圏」を構築し、重点パークや街道(エリア)に「ワンストップ式」の手続き権利を与え、多くの企業が土地を確保できればすぐに着工できる体制を整えている。
崔氏が話す通り、「企業にニーズがある限り、必ず対応しなければならない。地域間の競争という新たなレースが繰り広げられているのを背景に、ビジネス環境に対する要求も高くなっており、私たちも改革の足並みを早め、市場参入サービスを最適化し、各種のマーケットエンティティがさらに活発になり、イノベーション・起業の原動力がさらに強力になるようにしなければならない」。
特別基金を立ち上げて、中小・零細企業の融資確保が難しいという問題の解決が、無錫ハイテクパークが産業クラスター構築を加速させる面で成功したやり方となっている。無錫高新科技創業発展有限公司は昨年、メカニズムをイノベーションすることで、無錫産業発展集団有限公司とアストラゼネカと共同で、1億元の無錫国際ライフサイエンスイノベーションパーク基金を設立した。
世界から来たイノベーションチームが、技術や成果さえあれば、無錫ハイテクパークで、イノベーション、起業することができる。
さらに、無錫ハイテクパークは金融協力を非常に重視しており、複数の商業銀行を誘致し、銀行員や政府職員がペアとなって、企業やイノベーションチームを対象に、金融総合受理サービスを展開している。現在、申請者は銀行に行かなくても、口座を開設することができるようになっている。
無錫ハイテクパークは現在、口先だけで「最適のビジネス環境づくり」を語るのではなく、着実にそれを実行している。同パークの新規マーケットエンティティの増加幅は2年連続で無錫市トップとなっている。
※本稿は、科技日報「多措并挙強鏈、補鏈、延鏈 無錫高新区構建生物医薬産業生態圈」(2022年3月3日付7面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。