2013年05月06日-05月10日
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中国、「空中鉄道」導入で渋滞緩和へ 国産化率9割突破

2013年05月09日

 鉄道車両が空中にあるレールに吊り下げられ、都市のビル間を自由に行き交う様子を想像できるだろうか。この「空中鉄道」の構想は決して夢ではない。第1回中国(上海)国際技術輸出入交易会(以下、上交会)で空中鉄道を導入するプロジェクトが発表されると、たちまち注目を集めた。人民日報が伝えた。

 ▽省エネ・省スペース・低騒音

 空中鉄道こと、懸垂式モノレールの歴史はドイツで始まった。ドイツ・ヴッパータール空中鉄道の建設は1901年に始まり、すでに110年以上の歴史がある。日本やロシアなどでも懸垂式モノレールはすでに長年にわたり運行しており、近年の鉄道プロジェクトの重要形式の1つとなっている。

 地下鉄やライトレールと違い、空中鉄道は2両又は4両編成で、主に中レベルの旅客輸送に対応している。乗客を含めると空中鉄道の重量制限は1車両あたり13トンで、最大75人の乗客を輸送できる。4両編成の場合、乗客定員は約300人ということになる。設計速度は時速50キロ、旅行速度は時速25-40キロ。平均時速40キロ、発車間隔90秒として計算すると、輸送能力は1時間あたり1万2千人に達する。

 通常時、地下鉄の電力消費量は1両あたり5-6キロワット時に達するが、空中鉄道はわずか2.4キロワット時だ。また、空中鉄道の建造コスト(列車、レール、ホーム、信号制御システムなどを含む)は1キロあたり1億2千万元-1億5千万元で、路面電車とほぼ同じ、ライトレール・低速リニアの2分の1から3分の1、地下鉄と比べるとわずか5分の1となる。

 同済大学交通運輸学院の李曄教授は「懸垂式モノレールは、全く新たな理念と、成熟した技術を持つ都市交通モデルだ。主要幹線道路には適さないが、地域内や交通の要所・枢軸、主要施設などを結び、循環する交通手段には適している。懸垂式モノレールは、中レベルのスピード・輸送量を持つ軽量型・電力駆動式の交通手段で、▽安全かつ信頼性が高い▽敷地面積を節約できる▽建設期間が短い▽騒音が少ない▽排気ガスがゼロ――といったメリットを持ち、他の交通手段の補充とすることができる。市民の外出に新たな選択肢をもたらし、目的地にたどり着くまでの『最後の1キロ』問題を解決できる」と語る。

 このほか、空中鉄道のレールは車両の上方にあり、鋼鉄又はセメントの柱で支えられる。既存の交通施設を拡大せずとも交通渋滞を緩和できるため、取り壊し・立ち退きのコストもかからない。

 ▽空中鉄道の安全性

 「空中鉄道は下にレールが無いが、空中にぶら下がっている状態で安全なのか?」参観者の多くからこのような疑問が寄せられている。情報によると、「空中鉄道」は誕生以来、その安全率は100%で、1度も事故が起きたことがないという。

 空中鉄道は安全面で以下のような設計を取り入れている。▽防火のため、非可燃性物質で車両を建造▽停電を防ぐため、複数の電源システムを設置▽タイヤの破裂に備え、駆動ホイールとガイドホイールには全てスペアを準備▽車内と制御センター間に電話連絡システムを設置▽ドアは乗客が簡単に開けることができない構造になっている――

 もし車両が駅と駅の間を走行中に緊急事態が発生した場合、車内の職員が手動操作により列車を引き続き運行させることができ、1-2分以内に次の駅に到達することができる。列車が駅と駅の間で故障し、動かなくなった場合、救援列車を派遣し、故障した列車の乗客を救援列車に避難させることができる。2車線の場合、救援列車は故障列車の隣に、ドアの位置を合わせて停車し、ドアとドアの間に渡り板を敷き、乗客を避難させることができる。

 地上への脱出では主に、火災時のビルからの避難と同じ方法を使う。乗客は職員の指揮と協力の下、ロープ又は避難用すべり台で車両から地上へ避難する。はしご車で乗客を地上に降ろすこともできる。

 ▽国産化率はすでに90%を突破

 懸垂式モノレールの構想が公開されたのは、上交会が初めてではない。上海では昨年末にも「懸垂式モノレールシステム発展シンポジウム」が開催されている。現在、同プロジェクトは検討・論証段階から具体的な実施段階に進んでいる。上海の大虹橋地区では第12次五カ年計画期間(2011-2015)中、ピーク時の交通渋滞を緩和するため、この新たな交通手段を導入する計画だという。

 今回上交会で発表された、ドイツの懸垂型モノレール「H-Bahn」プロジェクトは、エアトレインインターナショナルグループ所属の上海空列軌道技術有限公司が運営を行う。プロジェクト責任者の鮑再通氏は、「H-Bahnは2011年に導入が始まり、現在は国産化に重心が置かれている。例えばドイツの車両は鋼材で製造されているが、中国では技術がすでに完備されているのでアルミ合金に変更することを計画している。これにより車両がより軽量化され、動力も増強される」と語る。車両・情報制御システムなどを含め、国産化率はすでに90%を突破しているという。

 中国における「空中鉄道」の実現はますます現実に近づいており、すでに20余りの区県ですでに予備研究が始まっている。中でも温州市は最も進展が速く、客運西駅から市街地を経由し、客運東駅へと到達するルートが初歩的に確定されている。上海でも多くの区がフィージビリティスタディを行っており、2区ではすでに線路計画段階に入っている。

 第12次五カ年計画期間、北京、上海、深センで新しく建設される鉄道の営業距離は1000キロあまりに上る。大都市の軌道交通を合わせると2500キロ以上にのぼり、投資総額は1兆元を上回る予定だ。もし空中鉄道を建設すれば建設資金は20%前後ですむため、コストを大幅に抑えられる。

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