国際宇宙探査フォーラム(ISEF)が9日、ワシントンの米国務省で開かれ、中米の宇宙事業提携の推進を見守る専門家らは、再びほっと胸をなでおろした。中国国家航天局の許達哲局長はワシントンで9日、「米国は中国をISEFに招待し、積極的なシグナルを発した」と語った。このほか年末にも宇宙業界に朗報がもたらされた。中米の宇宙事業提携を阻止してきたフランク・ウルフ議員が、12月17日に引退を発表したのだ。中米の宇宙事業提携には、積極的な兆しが見えている。しかしアナリストは、「米国の関連する法律の障害が残されており、一部の米国人は冷戦思考を捨て去っていない。中米の宇宙事業提携の先行きは、依然として楽観視できない」と指摘した。中国青年報が伝えた。
◆太陽系のようにビッグなチャンス
今年のISEFは、米国務省と国際宇宙航行アカデミー(IAA)が共催し、中国、ロシア、日本を含む30数カ国の宇宙機関の代表団と特別ゲストが出席した。同会議のテーマには、宇宙飛行における人的要素、ロボットプロジェクトの科学目標、技術要素、民間企業の地位と役割、グローバル提携、宇宙ステーションなどが含まれた。ホワイトハウスの科学技術政策局(OSTP)のジョン・ホルドレン長官、ウィリアム・バーンズ国務副長官が、それぞれスピーチを行った。
バーンズ氏は、「宇宙探査は経済成長を促進し、科学技術の革新を刺激し、若い世代を啓発し、人類の生活の各分野に直接的・現実的・持続的な利益をもたらす。現在の宇宙事業は、新しい重要な発展のすう勢を示している。参加国が増加を続け、主権国の独占的地位が絶えず脅かされ、商業企業の進出が相次いでいる。こうした状況の中、国際宇宙提携はこれまでよりも重要になっている。各国が勇気と政治的意志を示し、宇宙探査の提携チャンスをつかみ、共に挑戦を迎えれば、我々のチャンスは太陽系のようにビッグになるだろう」と指摘した。
バーンズ氏はスピーチの中で、米国の宇宙事業提携に対する強い意向を示した。
◆米国の法律、提携の障害に
米国務省は今回、米国政府の新たな考えを示したが、アナリストは「中米の宇宙事業提携を着実に推進するためには、多くの障害を乗り切らなければならず、道はまだ遠い」と指摘した。まずは米国で制定されている、中米の宇宙事業提携を妨害する法律だ。中米の軍事交流を制限するため、米国は批判を浴びている「2000会計年度国防授権法」およびその「修正案」を発表し、10数項目の中米軍事提携を制限した。宇宙事業において、このような禁止令はさらに多くなっている。
◆中米宇宙事業、悪循環に陥る
米ソという二つの超大国は20世紀に、半世紀に渡る冷戦を展開した。冷戦ピーク時に、両国関係は一触即発の状態に陥り、開戦ムードが漂ったが、両国の宇宙事業提携は進められていた。一方の現在、中米の多くの分野の経済交流が緊密になる中、中米の宇宙事業提携は悪循環に陥っているとする声がある。中米の提携が少なかった前世紀末にはチャンスが訪れたが、今やゼロ接触・ゼロ交流・ゼロ提携の局面を迎えているというのだ。
関連法・禁令の裏側には、一部の米国人の冷戦よりさらに冷たい思考が存在しており、この思考は容易に失われるものではない。中国の月探査機「嫦娥3号」が12月上旬に月上陸を実現すると、米国メディアはこれがNASAに厄介事をもたらすと伝えた。これは嫦娥3号が着陸時に、月面で大きな砂塵を巻き起こし、米国が実施中の「月大気・ダスト環境探査機(LADEE)」の研究結果に誤差を生じさせ、「政治的砂塵」を巻き起こす可能性があるからだ。オバマ大統領は12月下旬に「2014会計年度国防授権法」に署名し、米国防総省に対して法律の発効から180日内に、米国の宇宙制御システムと他国の間に存在する開き、およびそのリスクについて分析するよう求めた。米宇宙政策アナリストのアレックス氏は、「中国の月探査の成果が示した世界を指揮・支配する能力が、熟睡していた米国議会と国防総省を揺り起こしたことは、紛れもない事実だ」と指摘した。また「2014会計年度国防授権法」は、これまでの中国を対象とする禁令を取り消さなかったばかりか、さらに条項を一つ追加した。同法の936条は、「当該法の拠出するいかなる資金も、中国および中国が支配するすべての機構による、すべてのネット安全に関する提携に用いることができない」と規定した。
どうやらウルフ議員の引退後に、多くの「ウルフ(狼)」が出現しそうな様子だ。