3月1日夜に昆明駅で発生した深刻なテロ事件が、社会に深刻な影響をもたらした。公安機関などの部門による40数時間にわたる奮戦により、同事件は3月3日午後に解決された。駅内の閉回路ビデオ監視システムのデータ分析が、事件の解決において重要な力を発揮した。しかし専門家は、「中国は海外と比べ、テロ事件に対するビッグデータ技術の利用を強化する必要がある」と指摘した。中国科学報が伝えた。
安徽科学技術大学訊飛情報科技股フェン有限公司董事長(会長)の劉慶峰氏は取材に応じた際に、「大量のデータを分析・比較することで、国家および地域の安全に対して非常に重要な力を発揮できる」と語った。
劉氏は、「世界では、ビッグデータ技術によるテロ対策の流れが形成されている。中国はビッグデータ発展の流れと改良を続ける技術を利用し、テロ対策の中でより大きな力を発揮させるべきだ。政府モニタリングから公共の場の些細な異常に至るまで、いつでも緊急体制を取れるようにするべきだ」と提案した。
それでは、ビッグデータはテロ対策の中でどのような力を発揮するのだろうか?
中国工程院院士の鄔賀銓氏は、「ビッグデータはテロ対策の中で、確かに一定の力を発揮できる。テロ事件の発生には法則がある。例えば昆明市のテロ事件は両会(全国人民代表大会・全国政治協商会議)の前日に発生し、かつ人の多い駅が選ばれた。これは社会に影響を及ぼすための行動だ。歴史上発生したテロ事件の発生法則により、いつどこで発生するかを大まかに判断し、警戒を強める必要がある」と説明した。
ボストン爆破事件で、テロリストのリュックには爆薬の詰まった圧力鍋が入っていた。事件発生後、ニューヨークである人物がネット上で高圧鍋とリュックを同時に検索した。米国のテロ対策部隊はこの情報を迅速にキャッチし、検索をする人物の目的を調査した。
鄔氏は、「ここからも、関連データの収集と分析は、今後のテロ対策の注意と参考になることが分かる」と語った。
劉氏も、「インターネットの時代において、人々の一挙手一投足はすべて跡を残す。テロリストの平時の各情報、通話、交通、買い物、交友、Eメール、チャット記録、動画などを利用することで、テロ行為発生前に警戒を強め、事件後に分析を進めることが可能だ」と話した。
鄔氏は、「テロリストは行動前に、かすかな手がかりを残すはずだ。すべての人の記録を作成することはまだ出来ないかもしれないが、データを絶えず収集・蓄積することで、すべての人の行動・生活から活動の痕跡を見出せるようになる。テロリストは社会に不満を持っており、微博(ウェイボー、中国版ツイッター)や微信(WeChat、中国版LINE)などでそれを示すだろう」と指摘した。
専門家は、「データの迅速な分析と利用により、政府はテロ発生後にすべての力を動員し、対策を講じ事後処理を進め、被害を最小限に留めることができる。しかし中国はビッグデータのこのような利用をさらに強化するべきだ」と分析した。
鄔氏は、「ターゲットを絞ることは困難だが、一定の法則を見出すことができる。これはビッグデータをより良く利用する必要がある」と述べた。
ビッグデータを研究する専門家にとっては、テロ対策のみならず、日常生活でもいかにビッグデータの価値をより良く発掘するかが、解決が待たれる難題となっている。専門家は、ビッグデータの利用に関する研究を強化するよう提案している。
劉氏は、「これは、政府がさらに力を注ぐ必要がある。政府がビッグデータにより、国民により良い安全保障を提供することに期待する。国家はこの面の研究と投資を拡大するべきだ。バックグラウンドデータを有効にし、情報の孤島を消滅させる。例えば音声識別やキーワードの検索により、その人物の地域、身分、交流の内容を分析できる」と語った。
中国人民大学情報学院教授の孟小峰氏は、「現在重要なのは、現実的な需要から着手し、ビッグデータの計算・応用モデルを構築することだ」と指摘した。
中国工程院院士の汪懋華氏は、「ビッグデータ科学は幅広い応用が可能なサービスであり、戦略的にビッグデータの開発と利用を重視し、これを経済発展や社会公共管理などを推進する有力な足がかりとするべきだ。ビッグデータで何ができ、それをどのように実現するかを研究する必要がある」と述べた。