2014年03月10日-03月14日
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グラフェンの研究に進展、海水の急速な淡水化を現実に

2014年03月14日

 中国科技大学工程科学学院近代力学学部の呉恒安教授、王奉超博士は、英マンチェスター大学のノーベル賞受賞者、アンドレ・ガイム教授の研究チームと協力し、グラフェン機能材料の研究で重要な進展を実現し、酸化グラフェン膜にイオンを高速選別する機能があることを発見した。光明日報が伝えた。
 グラフェンはその独特な力学・電気学の特徴により、「神秘的な材料」と呼ばれている。しかしグラフェンと水の相互作用のメカニズムについては、まだよく知られていない。グラフェンの表面は水を遮断できるが、水中に入れられたグラフェン膜の毛管路は水の高速浸透を起こす。呉教授はマンチェスター大学で客員研究員であった時に、酸化グラフェン膜の空気を遮断し水を浸透させる独特な機能について、同校の科学者らと共同研究を進めており、今回の重要な進展の基礎を築いた。
 最新の共同研究によると、水環境中の酸化グラフェン膜は水との相互作用後、約0.9ナノメートル幅の毛管路を形成し、直径0.9ナノメートル以下のイオンや分子の急速な通過を起こす。直径が0.9ナノメートルを上回るイオンは、完全に遮断される。この選別効果はイオンのサイズを正確に見分け、伝統的な濃度拡散より何千倍も速い。呉教授の研究チームは理論分析と分子シミュレーションの方法により、グラフェンのナノ級毛管路によるイオンの高速濾過の原理を研究した。コンピュータによるシミュレーションによると、グラフェンとイオンの間の相互作用により、イオンがナノ級毛管路に集中し、イオンの高速拡散を促す。この発見は実験結果を合理的に説明し、「イオンスポンジ効果」と呼ばれている。
 専門家は、「ロボットアームにより膜の中の毛管路のサイズを圧縮できれば、海水に含まれる塩分を効率的に濾過できる」と指摘した。数分間で1杯の海水を飲用水に変える濾過装置が、SF小説の中から飛び出すことになる。
 同研究成果を発表した世界的に有名な科学雑誌「サイエンス」は、「同発見は酸化グラフェン膜のさまざまな分離活用の中で重要な意義を持ち、海水淡水化・浄化、センサー技術、エネルギー変換などの分野で、幅広い応用の将来性を持つ」と指摘した。

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