2019年06月17日-06月21日
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「5Gの放射能は4Gよりも強く健康被害を引き起こす」は本当か

2019年06月19日

 中国でこのほど5Gの営業許可証が発行されると、「5G基地局は密度が高く放射能も強いので、健康被害が生じる」といった説が次々に伝えられ、5Gよりも速いペースで広がりをみせる。人々は「5Gは本当に半分は天使で半分は悪魔のようなものなのか」と問いかけざるを得ない。「科技日報」が伝えた。

▽5Gネットワーク速度が上がれば、基地局の放射能も強くなるのか?

 5Gネットワークの速度向上は、5G基地局の仕事率を強めて得られたものではなく、帯域幅(伝送帯域)の拡大、電波干渉への抑制力と受信感度の向上によって総合的に得られたものだ。2G基地局から5G基地局へと発展する中で、放射能は実はますます弱くなっている。

 5Gは4Gよりネットワーク速度が速いので、5G基地局の電波の強度も4G基地局より高いに違いない、よって5G基地局の放射能は4G基地局よりも強くなると考える人もいる。事実ははたしてそうなのだろうか。

 貴州移動ビッグデータ分公司の李文華社長は、「実際には、そういった考え方は誤解であり、2G基地局から5G基地局に至る間に、実は放射能はますます弱くなっている。中国移動(チャイナモバイル)の場合、4G時代には、大型基地局の仕事率は40ワット、小型基地局なら20ワットだったが、5G技術に基づくミクロセル型基地局はわずか10ワット、ピコセル型基地局はさらに小さく250ミリワットにとどまる。ビームフォーミングを経て、5G基地局がアンテナ出力ポートに分配する時の仕事率は4ワットしかないのに対して、家庭用照明器具1台あたりの仕事率は15-40ワットになる」と説明する。

 李社長によると、「5Gネットワークの速度向上は、5G基地局の発射の仕事率を強めて得られたものではなく、帯域幅の拡大、電波干渉への抑制力と受信感度の向上によって総合的に得られたものだ」という。

 もちろん、基地局の放射能は客観的に存在している。しかし5G基地局と4G基地局と発射の仕事率の標準は同じで、国家標準は「1平方センチメートルあたり40ミリワット以下」だ。この放射能は家電に比べれば微々たるものであり、ドライヤーや電磁調理器の使用時の放射能にも及ばない。加えて、通信キャリアは基地局を設置する際、電波の重ね合わせの問題を考慮しており、実際の発射の周波数は国家基準を大幅に下回る。

▽5G基地局は密度がより高いので、放射能もより強いのか?

 電波の状態がよくないと、携帯電話は自分側の発射の仕事率を持続的に引き上げるので、この時は強度が高くなる。5G基地局が密集していれば、携帯電話はよりスムーズに基地局から発射された電波を受信できるようになり、電波の状態がよければよいほど、ユーザーが実際に浴びる放射能は弱くなる。

 5Gネットワークは周波数帯が高い一方、基地局のカバー範囲が相対的に小さいため、5Gの高速とカバー範囲の広さというニーズを保証しようとすれば、基地局の数は4Gよりもかなり多くなる。今後、5G電波は遠く隔たった信号塔ではなく、身近にある街路灯や電柱に設置された超小型基地局が伝えることになる。

▽5G電波は健康被害を引き起こすか?

 5G電波は非電離放射線で、そのエネルギーは物質の分子中の原子をわずかに移動させるか振動させるだけで、原子を電離させることはできないので、DNAを破壊してがんを引き起こすことはない。中国の国家標準は厳格で、放射能の健康被害を心配する必要はまったくない。

 ネットには「5G電波は人体に影響がある」との声があふれる。「5Gは心臓のリズムを乱し、遺伝子発現が変化し、ひどい場合はDNAを損ない、がんを引き起こす」というのだ。

 しかし実際はこうだ。無線エネルギーが電磁波となって空間を伝わると、電磁放射が起こる。電磁波には天然のものと人工のものと2種類あり、大きなものでは稲妻や落雷、太陽活動など、小さなものでは電子レンジやテレビなどで電磁波が発生する。現代人は毎日いろいろな電磁波にさらされた環境の中にいるのであり、基地局と携帯電話の電波はその中の一部に過ぎない。

 1996年に世界保健機関(WHO)は「国際電磁界(EMF)プロジェクト」を制定し、人体が長らく超低周波の電場・磁場にさらされた場合に健康被害があるかどうかの調査をスタートし、中国も調査に参加した。2008年に発表された最終的な評価の結果と提言によると、これまでの研究では、組織の発熱を引き起こす限界値よりも強度が低い電場・磁場に接触して、健康被害を起こすことを証明する一致した証拠の存在は確認されなかったという。

 米国食品医薬品局(FDA)は18年に出した声明の中で、「現在、携帯電話の無線周波数は安全制限内にあり、人々の健康にそれほど大きな影響はない」と指摘した。

 現在、中国の通信基地局で使用する周波数は基本的に500MHzから5GHzの範囲内にあり、海外でキャリアに割り当てる周波数はすでにミリ波レベルに達しつつあり、30GHzを超えている。500MHzでも30GHzでも、マイクロ波の範囲内で、放射能の健康への影響を懸念する必要はまったくない。李社長は、「人々が注意するべきなのは有害な放射能であって、放射能それ自体ではない」と指摘する。

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