アフリカ豚コレラの蔓延防止は世界的な難題で、関連ウイルスを効果的に予防・治療する薬品もしくはワクチンが切実な需要になっている。中国の科学者はこのほど、アフリカ豚コレラウイルスの詳細な3次元構造の解析に初めて成功したと発表した。これはより効果の優れた、安全性の高い新型ワクチン開発に向け確かな基礎を固めた。経済日報が伝えた。
科学者がアフリカ豚コレラウイルスの様子を完全に捉えたのは今回が初めて。関連研究により、アフリカ豚コレラウイルスの各種の潜在的な保護抗原と重要抗原のエピトープ情報が明らかになり、4つの潜在的なワクチンターゲットが見つかった。研究チームの責任者で、中国科学院院士の饒子和氏は「これはより効果の優れた、安全性の高い新型ワクチン開発に向け確かな基礎を固めた」と述べた。
中国科学院生物物理研究所研究員の王祥喜氏は、アフリカ豚コレラについて「これは世界的な難問だ」と述べた。
古いウイルスとしてのアフリカ豚コレラウイルスは1921年、アフリカのケニアで初めて発見され、現在まで約100年の流行の歴史を持つ。アフリカ豚コレラは、アフリカ豚コレラウイルスによる家畜もしくは野生の豚に感染する、急性・熱性・高度接触性の動物伝染病だ。どの品種と年齢の豚であっても感染し、発症率と死亡率は100%にものぼる。高い殺傷力を持つことから、国際獣疫事務局(OIE)は法定報告動物疾患に指定している。
アフリカ豚コレラウイルスは過去100年近くにわたり、欧州、南米、アジアなど複数の国に広がった。過去1年で蔓延のペースが明らかに上がり、激化の傾向を示している。OIEが発表したデータによると、今年1-10月にアフリカ豚コレラが発生した、もしくは発生中の国は26カ国で、欧州が13カ国、アジアが10カ国、アフリカが3カ国。うちアジアの状況が特に深刻だ。
一方で、感染が拡大するにもかかわらず、厳しい現実に直面せざるを得ない。これはアフリカ豚コレラウイルスへの認識が非常に限定的で、科学者は現在も効果的なワクチンを開発できていないからだ。殺処分は現在最も効果的な蔓延防止の手段だ。
中国科学院生物物理研究所の饒子和氏と王祥喜氏のチーム、ハルビン獣医研究所の步志高氏のチームは上海科技大学などと協力し、2018年12月にアフリカ豚コレラウイルスの基礎科学研究から臨床検査測定、及び高効率ワクチンに至る各方面の共同研究開発を展開した。
研究チームは国内で流行中のアフリカ豚コレラウイルス流行株の分離に成功し、上海科技大学の電子顕微鏡によって4カ月連続の高品質データ収集を行い、100TB以上のデータを取得した。近原子分解能のアフリカ豚コレラウイルス構造を初めて取得した。
彼らは研究により、アフリカ豚コレラウイルスがゲノム、コアシェル、二層内膜、カプシド、外膜の5層からなり、正二十面体の「大物」であることを発見した。このややマトリョーシカに似た「大物」には、3万個以上のサブユニットが入っており、これの組み合わせにより直径約260ナノメートルの球形粒子ができあがる。これは饒氏らが現在解析している、近原子分解能構造の最大のウイルスだ。
歩氏によると、アフリカ豚コレラのウイルス構造の解析はこれが世界初で、科学者にウイルスの全貌を示し、これまでの一部の間違った判断を修正した。これにより今後のワクチン開発によりターゲットを絞りやすくなる。