ブドウ糖(グルコース)は大多数の動物細胞の主なエネルギー源だ。細胞によるブドウ糖の摂取を抑制する「飢餓療法」は、一部の疾病を治療できる。中国の科学研究者はこのほど米セル誌で、マラリア原虫のグルコーストランスポーターの活性を抑制することで、悪性マラリア原虫を「餓死」させるのに成功したと報告した。これは新型抗マラリア薬の開発にプラスだ。新華社が伝えた。
悪性マラリア原虫は人類の健康を大きく脅かし、深刻なマラリア症状を引き起こし、さらには死に至らしめる。悪性マラリア原虫の体内では、ヘキソーストランスポーターが主なグルコーストランスポーターで、同タンパク質のトランスポートの活性を抑制することで、マラリア原虫のエネルギー摂取を効果的に抑制し、成長と繁殖を抑制できる可能性がある。しかしこのプランには、人体細胞に影響を及ぼさずマラリア原虫のみの糖摂取を抑制するという難点がある。
清華大学生命科学院及び医学院の元教授で、米プリンストン大学分子生物学科の教授である顔寧氏と、清華大学薬学部教授の尹航氏のチームは、マラリア原虫の耐薬品性が絶えず強化される現状に対し、ヘキソーストランスポーターの構造解析を通じ、新たな抗マラリア薬ターゲットを確定した。これを踏まえた上でチームは選択性抑制剤を開発した。実験でこれが効果的にマラリア原虫を死滅させるが、人の細胞に対しては無害であることを確認した。次世代抗マラリア薬の開発の道を切り開いた。
尹氏は取材に「チームは今後、その早期転化を実現し、さらなる動物モデルと薬学面の作業を臨床に向け推し進める。マラリアの耐薬品性は現在、世界的な大きな課題となっている。我々は次世代のアーテミシニンを開発し、既存の薬品の耐薬問題の解消に役立ちたい」と述べた。
清華大学薬学院で院長を務める世界健康薬品研究開発センター長の丁勝氏は「耐薬マラリアの出現、治療薬の失効は、抗マラリア新薬の研究開発を急ぐ必要性を示している。顔氏と尹氏などのチームは国内外の複数の科学者と緊密に連携し、マラリア原虫のブドウ糖の摂取を抑制し餓死させ、さらに効果的かつ安全な抑制剤を革新的に発見した。これは抗マラリア新薬の研究開発における新たなアプローチを示している」と話した。