2021年12月13日-12月17日
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0.015mmの薄さ「手で裂けるスチール」はどうやってできたのか

2021年12月14日

 ここしばらく、鋼材価格変動が大きく、市場の供給にも波が見られるが、中国宝武太鋼集団山西太鋼ステンレス精密帯鋼有限公司にはほとんど影響を受けていない。同社の王天翔社長は、「今当社はフル稼働で生産を行っている。0.02ミリメートル以下の薄さの『手で裂けるスチール』の生産販売量は、昨年の1.6倍になった」と話した。新華社が伝えた。

 王氏は同社の「手で裂けるスチール」開発チームのリーダーでもあり、2016年から現在まで、チームを率いて開発上の難題を解決してきた。その結果、スチールの厚さは0.02mmから0.015mmに達し、同社は極薄ステンレス精密箔材の大量生産が可能な世界で唯一の企業へと一気に躍進した。

 王氏によると、「手で裂けるスチール」の厚さは普通のA4用紙の4分の1しかなく、材料として航空・宇宙、医療機器、精密機器、コンピューターなどの先端設備の製造業界に広く応用される。生産工法のコントロールが非常に難しく、製品の品質に対する要求が高いため、そのコア技術はこれまで少数の国に握られており、中国は世界市場のニーズの80%を占めながら、完全に輸入に頼る状況が長らく続いていた。

 王氏とそのチームのメンバーにとっては、「手で裂けるスチール」の開発は想像以上に困難だったという。王氏は、「まるでふっくらした小麦粉の生地をのばして薄くするようなものだった。生地をのばすには麺棒があればいいが、普通のスチール素材をのばして薄くするには、圧延ローラーが20本必要だ。厚さ0.8ミリの一般的な鋼材は、のばすたびに圧延ローラーを調整し直さなければならない。ローラーの配列や組み合わせは1万通りほどあり、勾配やバルジなどの変数も加わって、1万種類に上るローラーの配列から絶えず最適なものを探さなければならなかった」と例を挙げながら説明した。

 王氏はチームを率い、過去2年間で設備の難題175件と技術の難題452件を解決し、ついに「手で裂けるスチール」の質の高い大量生産にこぎ着けた。

 同チームは20年、既存の圧延技術についてさらに改良を進めた後、顧客のニーズを踏まえ、新たに極限のサイズに挑戦し、薄さ0.015mm、幅600mmのステンレス精密箔材を開発した。

 王氏は、「0.015mmの薄さは設備の設計の限界を超えており、圧延ローラーがステンレス精密箔材の存在を感じられず、圧延加工の過程でよく空回りしていた。チームが総括と技術改良を繰り返した結果、ついに幅600mm、厚さ0.015mmのステンレス精密箔材の大量生産を実現した。これは現在、世界で最も幅が広く、最も薄いステンレス精密箔材でもある」と述べた。

 また王氏は、「当社は引き続き投資を拡大して、先端のステンレス製品の開発に焦点を合わせ、市場の先端を行き、中国製造(メイド・イン・チャイナ)のために基礎材料の面で力強い保障を提供する」と述べた。

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