ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンス(BNEF)がこのほど発表した2021年世界洋上風力発電報告によると、2021年、世界の洋上風力発電の新規設備容量は約13.4ギガワット(GW)だった。そのうち4分の3強に当たる約10.8GWを中国が供給し、最大の貢献国となった。科技日報が伝えた。
2021年末、中国国内の複数の洋上風力発電プロジェクトが次々と系統連系された。2021年12月25日、中国長江三峡集団有限公司(以下、「三峡集団」)の広東省の陽江と江蘇省(如東、大豊)の洋上風力発電プロジェクトのフル稼働が始まり、系統連系された。うち、広東省の陽江沙扒洋上風力発電プロジェクトは、中国初の100万kW級の洋上風力発電プロジェクトとなり、江蘇省の如東洋上風力発電プロジェクトはアジアで初めてフレキシブル直流送電を採用した洋上風力発電プロジェクトとなっている。また江蘇大豊洋上風力発電プロジェクトは、中国で陸から最も離れた位置にある洋上風力発電プロジェクトとなっている。このほか、12月21日、山東省の洋上風力発電モデルプロジェクトのフル稼働・系統連系セレモニーが同省海陽市で開かれ、同月10日には華能山東半島南4号もフル稼働が始まって系統連系され、さらに、同月16日には、国家電投山東半島南3号のフル稼働が始まり、系統連系された。これで、山東の第一陣の洋上風力発電60万kWモデルプロジェクトは、全てフル稼働し、系統連系が実現した。
黄海南部の海域では、陸から80キロ以上離れた江蘇大豊洋上風力発電プロジェクトの稼働が今後始まり、陸上へと送電され続け、送電網に接続されることになっている。これは、中国で陸から最も離れた洋上風力発電プロジェクトで、使用されている海底ケーブルの長さは86.6キロに達する。
中国のクリーンエネルギーの構図では、水力発電が重要な位置を占めており、1993年には三峡ダムの建設が着工し、金沙江下流では4大発電所である向家壩発電所、渓洛渡発電所、白鶴灘発電所、烏東徳発電所が開発されたが、中国の1000万kW級の水力発電所の開発と利用はすでに頭打ちしている状態であるため、新たな道を探す必要に迫られている。
ここ20年近くにわたり、中国のクリーンエネルギーは、「風・太陽光」の時代に入り、洋上風力発電が発展するようになった。三峡集団の党組書記を務める雷鳴山会長は、「陸上の水力資源には限りがある一方、洋上の風力は極めて豊富で、洋上風力発電は最も質の高い風力発電資源でもある。中国の水深5--50メートル、高度70メートルの洋上風力発電の開発可能な資源量は、5億kWに達する見込みだ」と語る。
陸上の水力発電プロジェクトから、洋上風力発電プロジェクトへと舵を切るというのは、決して簡単なことではない。中国三峡新能源(集団)股份有限公司の党委員会書記を務める王武斌会長によると、海洋プロジェクトは難度が高く、非常にハードルが高い。海上にそびえ立つタービンは海面から数十メートルの深さに据える必要があり、海底にしっかりとした基礎を築かなければならない。洋上風力発電は、タワーの頂部にプロペラを取り付け、海の風によりプロペラが回転すると、ナセル内の発電機が稼働し、電流がタワー内と海底に埋められたケーブルを通って、海上の変電所に送られ、高圧方式で陸上の送電網へと接続されて、各世帯へと送られる仕組みとなっている。
三峡集団は福建省でも風力を豊富に確保できる洋上風力発電施設を設置するのに適した福清興化湾を見つけた。このエリアには風力発電に利用可能な風が吹く時間の長さは年間4000時間以上に達する。ただ、このエリアには海溝があり、海底の地質条件は複雑で、作業の難度は高い。もし、ここに風力発電施設を建設することに成功できれば、他の海域での建設は容易になる。
福清興化湾風力発電所の建設により、中国の洋上風力発電装置はアップグレードし、国産タービンの発電量は3兆ワットから、世界最先端レベルの8兆ワットにまで増加。そしてこれにより、整った研究開発とイノベーション体系が確立され、プロペラや発電機の製造、大型の構造部品、鋳造部品、コントロールシステムといった産業チェーン全体の一段階レベルアップが促進された。
陽江沙扒洋上風力発電所には、洋上風力発電ユニット269台、海上ブースターステーション3ヶ所が設置され、総発電設備容量は170万kWに達している。ここには世界初の台風にも耐えるフローティング式洋上風力発電ユニットが採用されているほか、中国では単体として容量が最大の海上ブースターステーションや中国国内の同等容量で最も軽い海上ブースターステーションなど複数の「中国一」を備えている。
雷氏は取材に対して、「将来、中国の洋上風力発電は深く、遠い海をその方向性にして発展するだろう。そのためには、大型化とイノベーションの問題を解決しなければならない。大型化とは、タービンの大型化だ。タービン1基当たりの容量が大きいほど、1MW当たりのコストも安くなり、海域に占める面積も小さくなる。それを大量に採用することで、タービンのメンテナンス費や施工費などの単価も下がる」と説明する。
このほか、タービンの基礎の構造形式も大きく変革されるだろう。例えば、フローティング式の基礎や重力型の基礎、複合基礎、サクションバケット基礎といった斬新な基礎(技術)が登場している。「それら技術がコスト削減に最も直接的なソリューションを提供している」と雷氏。
今は1基ずつ組み立てているタービンの組み立て方も、大きな船を使って、一度に複数のタービンを組み立てる方法へと大きく変革する可能性がある。雷氏によると、効率向上はコスト削減におけるカギで、洋上風力発電の電気を通常価格で利用できるようにするためには、産業チェーン全体を整理し、メーカーと発電事業者は、連携というスタイルから共同体へと変わって、共に効率向上に取り組まなければならないとしている。