2023年04月10日-04月14日
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中国初のブルーカーボン競売、浙江省で実施

2023年04月10日

 植物の光合成で二酸化炭素(CO2)が吸収されて形成されるカーボンシンクを「グリーンカーボン」というが、海洋生物由来の「ブルーカーボン」についてはあまり知られていない。渤海湾の葦生から珠江河口のマングローブまで、中国は大量のブルーカーボン資源を秘めている。1月1日に「海洋カーボンシンク計算方法」業界標準が始まり、中国初の総合海洋カーボンシンク計算標準となった。2月28日には中国で初めてブルーカーボンの競売が浙江省寧波市で成立した。人民日報海外版が伝えた。

 ブルーカーボンは海洋カーボンシンクとも呼ばれ、炭素排出権取引の重要な対象だ。自然資源部(省)が発表した「海洋カーボンシンク計算方法」業界標準によると、海洋カーボンシンクとは「マングローブ、塩沼(塩分を含んだ沼地)、海草藻場、植物プランクトン、大型藻類、貝類などが大気または海水からCO2を吸収し、大気中に貯留するプロセス、活動、メカニズム」を指す。

 ブルーカーボン取引とは何か。自然資源部の関係者は「国内のブルーカーボン取引は現在、主に気候変動に関する政府間パネル(IPCC)で認められた3種のブルーカーボン生態系、すなわちマングローブ、海草藻場、塩沼に集中している」と説明した。

 今回、取引が成立した寧波市象山県には、省内で最も長い海岸線と2番目に広い海域面積があり、ブルーカーボン資源量が豊富だ。同県は昨年7月からブルーカーボン競売取引を開始し、寧波海洋研究院がカーボンシンク量の計算を担当した。試算によると、同県の塩沼生態系のカーボンシンク量は年間10万2800トン、のりや昆布を中心とする大型藻類養殖のカーボンシンク量は年間約2万1700トン、牡蠣を中心とする貝類養殖のカーボンシンク量は年間約3万2200トンにのぼる。

 今回、競売にかけられたブルーカーボンは、象山西滬港の「西滬三宝」と呼ばれる昆布、のり、青のりで、いずれも藻類に属する。販売側の一社、象山旭文海藻開発有限公司の朱文栄会長は養殖する青のりについて、「青のり1キロの苗が1000キロに成長するが、その成長プロセスで海水と大気中の窒素やリン、炭素を吸収し、窒素・炭素固定の役割を果たす。企業が競売にかけるのは青のりそのものではなく、2022年の青のりカーボンシンク量246.1トン。つまり、青のりが光合成によって固定・貯留した海洋生態系におけるCO2だ」と説明した。

 ブルーカーボンはCO2を取り込む「達人」で、CO2を貯蔵する貴重な資源でもある。ブルーカーボンはグリーンカーボンなど他のカーボンシンクに比べて炭素固定量が多く、高効率で貯留期間が長いという特長を持つ。森や草原などの陸地生態系カーボンシンクは貯留期間が最長で約数十年だが、海洋カーボンシンクは数百年にものぼる。温室効果ガスの排出を効果的に減らし、カーボンニュートラルの目標達成を後押しする上で、効果が際立っている。

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