中国科学院古脊椎動物・古人類研究所によると、同研究所の蓋志琨氏、林翔鴻氏、山顕任氏が英ブリストル大学と協力し、広西チワン族自治区にある約4億1000万年前(デボン紀前期)の古魚類特異埋蔵生物群から、甲冑魚類の新属種「九尾狐甲魚」の化石を発見した。尾びれが完全に保存された甲冑魚類の化石が見つかったのは、今回が初めてとなる。
蓋氏によると、同種は尾びれが指のように9つに分かれているため、九尾狐甲魚と名付けられた。
中国で甲冑魚類の化石が最も早く発見されたのは1913年だったが、同類の体は主に軟骨や散在する鱗でできており、化石として完全に保存されることがほとんどなく、頭部から体にかけての解剖学的課題が100年以上にわたり未解決のままだった。2022年に「重慶特異埋蔵化石バンク」で見つかった「霊動土家魚」は初めて甲冑魚類の全身像を明らかにしたが、尾びれについては詳細な情報が不足していた。今回見つかった九尾狐甲魚により、パズルの最後のピースがはまり、甲冑魚類の謎が解明された。
今回発見された九尾狐甲魚は長さ約10センチで、体と頭殻の長さはいずれも約5センチ。全身が規則的に傾斜した細かい菱形の鱗で覆われている。
尾びれの面積と形状は、魚類の遊泳能力を検証する重要な指標となる。この化石は尾びれの収縮・拡張の2つの状態を完全に留めており、甲冑魚類の尾びれの形態を細部まで最大限明らかにしている。蓋氏は「これは甲冑魚類が優れた遊泳者で、筋肉の収縮を利用して尾びれと水流の接触面積を制御し、異なる推進力を発生させていたことを示している」と述べた。
研究チームは今回の成果を踏まえ、九尾狐甲魚の幾何学的形状について分析を行い、その結果、甲冑魚類の遊泳能力が高かったことが判明した。遊泳速度はより進化した一部の顎口類を上回っており、「積極的な捕食傾向により顎口類が生まれた」という従来の仮説を否定した。