2023年05月22日-05月26日
トップ  > 科学技術ニュース>  2023年05月22日-05月26日 >  中国の専門家、「血糖値を測定できる服」の材料開発に成功

中国の専門家、「血糖値を測定できる服」の材料開発に成功

2023年05月23日

 中国湖北省の武漢紡績大学は17日、王棟教授のプロジェクトチームが2年間の研究を経て、初めて熱電繊維(電源)とバイオセンシング繊維(センサー)を有機的に結び付け、人体と外部環境の温度差を利用して発電し、ブドウ糖センサーを作動させることに成功した。これによりスマートウェアラブルテキスタイル(織物)による「ワンストップ」のセンシングサービスが実現した。長江日報が伝えた。

 チームの主要メンバーである同大学の李沐芳教授は「スマートウェアラブルテキスタイルを身に着けることで、人体の生理学的データをモニタリングする研究は、すでに一般的となっている。しかしセンサーを作動させる電力は、大半が電源プラグに挿すかバッテリーを取り付けることによって供給されている。これは見た目も悪く、持ち運びにも不便だ。私たちは発電できる柔軟性を備えた織物を材料にできないかと考えた」と説明した。

 李氏と卿星博士は2年前の学際学科会議で、この問題について踏み込んだ意見交換を行った。卿氏の研究分野は繊維ベースの有機電気化学トランジスターバイオセンサーだった。李氏は「チームメンバーは人体と外部環境の温度差を利用することでエネルギーを提供して発電できないかと考えた。熱電テキスタイルは温度差の効果を利用してバイオセンサーにエネルギーを持続的に供給する。人体と環境の温度差は大きくないが、卿博士が研究する繊維ベースの有機電気化学トランジスターバイオセンサーは電圧が低く、信号の増幅効率が高いので、微小な生理学的信号の変化を顕著な電気信号の変化に変換できる」と語った。

 人体は恒温であり、通常は人体と外部環境の温度差は約2.2度となる。その正確性を検証し、例外が生じるのを避けるため、チームはさらに10数人の学生を被験者とした。熱電とセンサーを一体化させたスマートウェアラブルテキスタイルを学生の手に装着したところ、温度差が一致した。卿氏は「男性、女性、着席時、起立時とさまざまな試験を行ったが、私たちの予測と一致する結果になった」と振り返った。

 このスマートウェアラブルテキスタイルは現在、汗を測定することで血糖値などの一部データが提供できるようになっている。李氏は、将来的には血中脂質や高血圧など人体の他のデータも、このスマートウェアラブルテキスタイルで測定したいとの大胆な構想を立てている。またスマートフォンに、Bluetooth接続することで、健康データをリアルタイムで確認できるようにもなる。

※掲載された記事、写真の無断転載を禁じます