グーグルがこのほど発表した2023年の環境報告によると、同社では22年の水使用量が前年比20%増の56億ガロンとなった。増えた分のほとんどはデータセンターの冷却に使われたという。
これはグーグルだけの現象ではない。23年初めに米OpenAI が開発した対話型AI(人工知能)「ChatGPT」が世界的な注目を集め、AI 分野に社会現象をもたらすと、世界中のインターネット企業の間でAIGC(AI 生成コンテンツ)開発競争が起こった。
大規模なAI トレーニングを行おうとすれば、より強力な計算能力センターとこれに対応する冷却能力が必要となる。こうしてAI が急速に進歩する中で、水資源の消費量も大幅に増え続けてきた。
今年に入り、AIGCの大人気によって科学技術企業の競争がさらに激化し、中国国内の大規模モデルのスタートアップ競争も激しさを増している。AI 企業や大手ネット企業などの起業派と、大学や研究機関などの学問派が、「大規模モデル競争」に次々と参入した。科学技術部(省)の次世代人工知能発展研究センターが発表した「中国人工知能大規模モデルマップ研究報告」によると、5月末現在、パラメータ数が10億を超える大規模モデルはすでに中国で79種類発表されている。
中国通信工業協会データセンター委員会常務副理事長の黄超氏は、「全体的に見ると、データセンターの水消費量がセンターの急速な発展を制約する要因の一つになっている。中国の多くの場所で水消費量はデータセンターの重要な評価指標になっている」と語った。
北京市発展・改革委員会はこのほど「データセンタープロジェクトの省エネルギー審査のさらなる強化に関するいくつかの規定」(改正版)を発表した。その中で、データセンターが再生水を十分利用するよう促す内容を新たに付け加え、再生水輸送パイプラインのカバー範囲にあるデータセンターでは、設備の冷却水や機械室の加湿などの非生活用水に再生水を使用すべきだとした。
中国データセンター省エネルギー技術委員会の呂天文秘書長は「貴重な水道水資源を節約するため、多くの企業がさまざまな方法によるデータセンターの冷却を試みてきた。たとえばマイクロソフトはかつて海底データセンターを試験的に設置し、Facebook(現在のMeta)は北極圏の近くにデータセンターを建設。浙江省千島湖にあるアリババクラウドのデータセンターは深層湖水冷却方式を採用した。しかし、こうした方法では新たな問題も常に生じていた。今でも中国国内のデータセンターは主に水道水を使用しており、政府はここ数年、データセンターを運営する企業に対して、もっと中水(雑用水)を使うよう呼びかけている」と説明した。
密度が高く、エネルギー消費量も大きいデータセンターには巨大な冷却ニーズがある。このニーズを受けて冷却分野の技術革新が行われるようになった。その進化の一つとして液冷(水冷)が登場し、今後徐々に冷却分野の中心となる見込みだ。
液冷技術とは空気の代わりに液体を冷媒として使い、CPUやチップセット、RAM、拡張カードなど発熱する部品との間で熱交換を行い、熱を放出する技術を指す。従来の空冷技術と比べて冷却の効率が高く、冷却システムの運営におけるエネルギー消費を効果的に削減し、データセンターのPUE(データセンターのエネルギー利用効率指標)を1.3以下に低減できる。
呂氏は「中国は国土面積が広く、各地の気候条件が大きく異なるので、各地のデータセンターの冷却ニーズにも違いがある。そのため、冷却技術の汎用性がとても重要になる。液冷技術なら標高や地域差を考慮する必要がなく、余熱によって経済的価値も生み出される」と語った。