中国の繊維シルク業界で唯一の国家工学実験室である蘇州大学現代シルク国家工程実験室は、シルクタンパク医療機器の研究開発のほか、年間10トンの大分子シルクタンパクの大量生産も行っている。科技日報が伝えた。
注射や飲み薬ではなく、肌に貼るだけで皮下血管を通じて薬が患部に直接届く。シルクタンパクのマイクロニードル経皮吸収システムは驚異的と言える。
同大学の盧神州教授は「シルク製のマイクロニードルは、精製、分解しやすく、天然由来かつ無毒で免疫原性がないというシルクタンパクの特徴を生かし、経皮吸収を実現している。シルクは主にセリシンとシルクタンパクからなり、人体にやさしいので、マイクロニードルを作るのに理想的な材料だ」と説明した。製造法については「まずシルクタンパクを溶液にし、マイクロスケールの型に注いで乾燥させるとマイクロニードルができる。0.5平方センチのパッチには225本のマイクロニードルがあり、1ミリグラム以上の医薬品を投薬でき、絆創膏を貼るように簡単だ。マイクロニードルが短く細く、神経と血管に触れることがないから、痛みを伴わずに投薬できる。またシルクタンパクの凝集状態を効果的にコントロールすることで、薬の効果が長く続くようにした」と明らかにした。
シルクは軽さ、柔らかさ、細さを備えた天然繊維だが、ヘルスケアやスマート感知などの分野で幅広い応用の見通しを示している。
同実験室の方剣教授が開発したスマート繊維材料は、柔軟性繊維とセンサーを組み合わせ、人の呼吸や心拍数、運動範囲を正確にモニタリングできる。李剛教授が開発した医療用シルク縫合線にはシルクタンパクの薬物送達技術が使われており、長期的かつ効果的な抗菌・抗炎症が可能で、各種外科手術に幅広く応用されている。
先進的な機能性繊維は、国際競争の重点分野として繊維材料産業の中核的地位を占めており、重要な価値がある。バイオ繊維は循環利用できるグリーンな繊維で、繊維産業の今後の発展方向でもある。バイオPTT繊維技術はこれまで海外に独占されていたが、同実験室などが開発した独自の知的財産権を持つ総合的生産技術により、中国は完全な産業チェーンを持つバイオ繊維生産国となった。PTT繊維と複合繊維の生産能力はすでに50万トンに達している。
同実験室はここ数年、世界の科学技術の最先端に目を向け、繊維材料分野で10件以上の重要な技術的難題を克服し、50件の技術成果と200件以上の特許を取得。中国のシルク産業における重要な技術開発プラットフォームとイノベーション拠点の一つになった。