2023年10月23日-10月31日
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次世代旅客機C929、炭素排出量を60%削減へ

2023年10月26日

 中国安徽省合肥市で22~24日、第25回中国科学技術協会年次総会が開かれた。期間中に開かれた国際グリーン航空発展フォーラムでは、中国商用飛機有限責任公司(中国商飛)のチーフデザイナーで中国工程院院士(アカデミー会員)の呉光輝氏が、中国初の国産大型旅客機「C919」のグリーン航空分野における実践の成果と、設計が始まった「C929」の設計理念を明らかにした。科技日報が伝えた。

 中国商飛は開発中のARJ21やC919などで、複数の排出削減技術を応用している。軽量化は航空機の省エネルギーや炭素排出削減における重要手段だ。呉氏は「ARJ21-700は重量を600キロ以上減らした。現在は最も軽い座席で7キロしかなく、世界の平均水準である12~14キロを大きく下回っている」と説明。ARJ21-700の全体的な炭素排出量がすでに5.9%削減されたことを明らかにした。C919の設計当初、呉氏とチームは軽量化、空気抵抗低減、排出削減の設計理念を掲げ、先進的な空力設計を採用して空力効率を高め、先進複合材料を広く応用することで機体の重量を減らし、新世代航空エンジンを調達した。呉氏は「C919は世界で初めて排出削減の理念をトップレベルデザインに組み込んだ大型機と言える」と胸を張った。

 C929は現在、最初の設計段階に入っている。呉氏によると、C929は低燃費、低騒音、低排出のグリーン設計理念を採用し、一連の手段により炭素排出を削減する。総合モジュール化アビオニクス技術を採用して設備の軽量化を図り、次世代超臨界翼や可変キャンバー翼などの先進的な空力技術を採用し、空力効率を高める。先進複合材料の使用量を50%以上に高め、旅客機の構造重量を減らす。高バイパス比・低騒音のターボファンエンジンを採用し、バイオマス燃料を広く使うことで、さらなる低燃費を実現する。

 持続可能な航空燃料(SAF)は、現在の航空業にとって炭素排出削減の最も即効性が高い技術手段だ。呉氏は「中国商飛はボーイングと事業提携しSAFの研究を行い、下水油などの廃棄油脂を利用したバイオマス燃料の複数の試験で良好な効果を得た」と述べた。

 呉氏はまた「SAFの模索範囲をさらに拡大する必要があり、バイオマス燃料だけに限定すべきではない」と指摘。「すべての人が油を摂取しなくなったとしても、それで節約されるバイオマス燃料は航空業の需要の50%しか満たさない。メタノールやアンモニア・水素を含む複数の再生可能燃料を重視し、技術の研究開発を強化し、航空業の炭素排出削減のためにより多くの可能性を切り開くべきだ」と提案した。

写真はC919試験機

 
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