2023年12月01日-12月08日
トップ  > 科学技術ニュース >  2023年12月01日-12月08日 >  スマホへのAI大規模モデル搭載が加速

スマホへのAI大規模モデル搭載が加速

2023年12月08日

 中国では複数の携帯電話メーカーがスマートフォンへの人工知能(AI)大規模モデル搭載を進め、AIスマホを発表している。複数の専門家はこれに対し、「スマホへのAI大規模モデル搭載の道筋がはっきりしてきたが、課題もいくつかある」との見方を示している。

 AI大規模モデルはスマホメーカーの競争における重要な手段になるとみられている。最近は華為(ファーウェイ)やvivo、OPPO、小米(シャオミ)などのメーカーが大規模モデルを搭載したスマホ端末を発売し、中国の大手スマホメーカーがすべてAI大規模モデルの事業展開に乗り出した。

 OPPOはこのほど開かれた開発者大会で、基本ソフト(OS)「ColorOS」の次世代バージョン「ColorOS14」をリリースし、初めて大規模モデル「Andes GPT」をスマホに搭載した。同モデルにはパラメータ10億~1000億の複数モデルが含まれ、バージョンアップ後はアシスタント「小布助手(Breeno)」が大規模モデルの能力を備えるようになる。

 vivoは10月に独自開発したAI大規模モデルのラインナップを発表した。それには10億、100億、1000億の異なるクラスのパラメータを持つ5種類の独自開発大規模モデルが含まれ、中心となる応用シーンをカバーしている。11月には初のAI大規模モデル搭載スマホ「X100」も発表した。これは業界で初めて100億パラメータ級大規模モデルを端末上で利用できる。

 小米集団の雷軍董事長は「小米はAI大規模モデルに取り組んでいる。現在、スマホ端末側の大規模モデルはほぼ使えるようになった」と明らかにした。ファーウェイは、スマホのシステムがマルチモーダル大規模モデル「盤古Chat」に接続するようになり、搭載される大規模モデルの音声アシスタント「小芸」がクラウドテスティングを開始したことを明らかにした。栄耀(HONOR)は、まもなく独自開発の70億パラメータ級端末側AI大規模モデルと新たなクラウドサービスを打ち出すとしている。

 北京博瑞恒潤科技諮詢有限公司の張揚コンサルティングディレクターは、「現時点でスマホ端末でのAI大規模モデル応用は画像識別、音声識別、自然言語処理などの分野に集中しており、消費者により正確な言語識別や情報提示、よりスムーズな音声のやりとりといった体験を提供できる」と述べた。

 OPPOデジタルインテリジェントプロジェクト事業部の劉海鋒総裁は「生成AI技術に支えられて、スマホはより正確にユーザーの意図を理解したり感情を読み取ったりするようになる」と述べた。

 スマホへのAI大規模モデル搭載は、技術的には、計算力を提供する半導体や放熱、電池などの影響を受ける。シンクタンクである賽迪智庫の未来産業研究センターAI研究室の鍾新竜主任は「最近はソフトウェア・ハードウェアの技術が高度化し、スマホにAI大規模モデルを深いレベルで搭載するための道筋が徐々に明らかになっている」と説明した。

 10月26日に発表されたクアルコムの新モバイル半導体「スナップドラゴン8Gen3」は、オフライン端末でパラメータ数100億の大規模モデルを操作できることが目玉の1つだ。メディアテックが今月発表したスマホ向け新プロセッサー「天璣(Dimensity)8300」は、100億級AI大規模モデルに対応し、より快適なゲーム・音響・映像、マルチメディア娯楽体験を提供する。また専用のAI半導体とハードウェアアクセラレータにより、モデル操作の効率と速度が著しく向上している。

 スマホメーカーとソフト開発会社は非常に複雑な方法を用いてスマホへのAI大規模モデル搭載を実現させる必要がある。鍾氏は「端末とクラウドの結合はスマホでの大規模モデル応用を実現する際によく用いられる方法だ。計算の仕事をクラウドのサーバーに振り分け、スマホはその場で一部の簡単な計算を処理し、より複雑な計算をクラウドに任せる。これは小規模の最適されたモデルやハードウェアの進歩によって実現ができる」と語った。

 AI大規模モデルをスマホに搭載する場合、自動車やパソコンに搭載する場合と異なり、より多くの課題に直面することになる。張氏は「スマホの連続使用時間を保証することを前提とし、大規模モデル操作の効果あるいは能力を保証するにはどうすればいいか。ユーザーのデータの安全性とプライバシーをどうやって保証するか。こうしたことすべてが課題だ」と指摘した。

 さらに「現在、スマホ端末でのAI大規模モデル応用シーンには限界があり、これから十分な市場ニーズがこの技術の普及応用を下支えするかどうか、しばらく様子を見る必要がある」と述べた。

 vivoの周囲副総裁は「スマホメーカーが大規模モデルを手がけるにはデータ、アルゴリズム、計算能力という難点が存在する。特に計算能力の分野では、計算能力大型クラスターの建設自体が挑戦と言える。vivoのここ数年間のAI関連投資はすでに200億元(1元=約21円)を超えた」と述べた。

 
※掲載された記事、写真の無断転載を禁じます