鄭州大学歴史文化遺産保護研究センターの研究チームが、前漢(紀元前206年~西暦8年)の海昏侯墓から出土した蒸留器の模造とシミュレーションを行い、当時酒を蒸留する技術を持っていたことを証明した。これにより中国の蒸留酒技術の実現可能性が1000年さかのぼった。新華社が伝えた。
江西省南昌市にある海昏侯墓の酒器倉庫からは「天鍋」「筒形器」「釜」の3部分からなる青銅の蒸留器が出土した。その使用方法と蒸留対象については、学術界でさまざまな見方が示されていた。
同センターの姚智輝教授は「蒸留器は蒸留酒の生産に使える上、辰沙や花露の蒸留と精製にも使える。器物の形状・素地や原料の反応の条件などに基づき、辰沙や花露の蒸留の可能性は排除できた。器物の出土位置や残留物の情報、(墓の主の)劉賀の身分や器物の構造・設計を総合し、装置を模造してさまざまな原料で実験を行い、十分な実験データを得たことで、これが早期の酒蒸留装置であることを確認できた」と説明した。
研究チームはさらに、海昏侯墓から出土した蒸留器の天鍋の正しい使用方法は、つまみが下向きであることを確認した。これを踏まえ、1:2のスケールで蒸留器を模造し、にごり酒やビール、黄酒などを原料として、釜の中での蒸留やスノコの上での蒸留をシミュレーションした。
姚氏は「実験結果によると、スノコの上でも釜の中でも、毎回、現代でいう蒸留酒が得られた。また蒸留の効率はいずれも70%を上回った。海昏侯墓から出土した蒸留器はサイズ、構造、使用方法、操作のすべてで蒸留酒生産の条件を満たしている。蒸留の効率と生産量を保証するとともに、酒の味わいと度数も兼ね備えている」と語った。