中国航空発動機集団北京航空材料研究院で8日、グラフェン航空電池開発パイロット生産ラインが稼働した。ここで製造されるグラフェン航空電池はハイブリッドドローンに使用される。科技日報が伝えた。
グラフェンは電熱変換効率が高く、加熱速度が速いといった性能を持つ。同研究院グラフェン新エネルギー材料センターの燕紹九主任は「グラフェンなどの新素材技術を応用して製造した航空電池は、従来の電池よりエネルギー密度が50%以上向上した」と説明した。
「低空経済」(低空域飛行活動による経済形態)は、新たな原動力の育成・発展の重要な方向性になっている。2024年、複数の地域では低空経済の具体的な支援策と行動計画が打ち出され、多くの計画では高性能動力電池の研究開発応用が言及された。
新エネルギー車と同じく、未来の低空経済の主役である電動垂直離着陸機(eVTOL)やドローンなどの大規模普及・応用には、高性能の動力電池が切り離せない。動力電池のコストは新エネルギー車全体の30~40%を占める。中国の航空動力電池市場には明るい見通しがあり、寧徳時代や億緯鋰能(EVEエナジー)など技術的優位性を持つ動力電池企業が現在、低空経済の「動力源」を構築するため続々と参入している。
新エネルギー車動力電池と比べ、航空動力電池は安全性やエネルギー密度、出力密度、急速充電性能、サイクル寿命などに対する要求がより厳しくなる。中でもエネルギー密度は電池の性能を図る重要指標で、電池の航続距離と使用効率に直接影響する。
新素材の導入は、電池の性能を改良するアプローチの一つだ。グラフェンは導電性が高く、比表面積が大きく、リチウム電池に加えることでそのエネルギー密度を大幅に上げることができる。燕氏は「エネルギー密度が600Wh/kgを超えそうなリチウム硫黄電池の研究開発には、グラフェンの高い導電性と大きな比表面積という特性を利用する必要がある」と述べた。
現在市場に出回っている航空電池のエネルギー密度は400~500Wh/kgという閾値にはまだ大きな開きがある。燕氏は「400Wh/kgは分水嶺で、一般的な新エネ車電池の2倍の動力に相当し、小型汎用機の飛行をサポートできる」と説明した。
中国の科学研究機関は08年にグラフェン素材の生産及び応用研究を開始した。16年に中国航空発動機集団が設立された後、グラフェンリチウム電池技術を主要な発展の方向性として、強力な支援を行っている。北京航空材料研究院はグラフェン新エネルギー材料研究センターを設立し、中国内外の優秀な科学技術者を誘致し、複数の基金プロジェクトにより関連研究を支援している。
同研究院は近年、複数の重要技術でブレイクスルーを果たし、独自の知的財産権を持つグラフェンの大量生産設備を開発した。燕氏は「チームはグラフェン高出力リチウム電池技術や、グラフェン超低温リチウム電池技術などを開発した。高出力リチウム電池技術は電力消費設備の大出力放電を実現でき、高い安全性を保証しながら、30C超高倍率放電(最速2分で放電完了)を実現する。一方で、超低温リチウム電池技術により電力消費設備が氷点下40℃の環境で正常に稼働でき、低空航空機の高標高離陸の需要を満たせる」と説明した。
北京航空材料研究院はさらに、超薄型リチウムマグネシウム合金負極材料などの代表的な成果を開発し、37件の関連特許を取得した。燕氏は「超薄型リチウムマグネシウム合金負極材料はグラフェンを3次元集電体とし、グラフェン表面改質技術を応用した。同素材で製造されたリチウム電池のエネルギー密度は400Wh/kgに達する」と語った。
同研究院の一部の関連技術成果はすでに実験室から応用市場に出て、低空経済を後押ししている。同研究院は取引先と協力し、グラフェン超低温電池技術の共同開発を行い、初めてグラフェン超低温リチウム電池技術の低空電動装置への応用を実現した。複数回の試験と最適化を経て、グラフェン超低温角形電池が氷点下40℃での3C放電を実現するとともに、複数の低空電動装置への応用に成功した。