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光で水素を生む「人工葉」技術 天津大学が研究

2025年06月23日

 天津大学の研究者がこのほど、効率的で安定した半透明の光電アノードデバイスを開発した。このデバイスは、水の酸化反応速度を大幅に向上させ、太陽光による水分解で得られる水素の生成効率を高めることができ、より効率的で耐久性のある「人工葉」の実現を推進すると見られる。新華社が伝えた。

 太陽エネルギーはクリーンで持続可能なエネルギー源として注目されているが、間欠性(日照の不安定さ)という課題が存在する。無バイアス太陽光水分解技術は、太陽エネルギーを直接利用して水分子を水素と酸素に分解し、間欠的な太陽エネルギーを貯蔵可能な水素エネルギーに変換する方法で、エネルギー危機や環境汚染への有望な対応策の一つとされている。

 しかし、光電アノードでの水の酸化反応速度が遅いため、水全体の分解効率が制限され、技術開発上のボトルネックの一つとなっている。

 この課題に対し、天津大学化工学院の新エネルギー化学工業チームは、「半透明硫化インジウム光アノード」という効率的で安定した半透明の光電アノードデバイスを開発した。このデバイスは独特な透明性により、水の酸化反応速度を大幅に向上させると同時に、一部の太陽光を光電カソード側まで通過させることで太陽光の無駄なエネルギー損失を減らす。これにより、金属層の不透明効果と光生成電子の界面を越える透過障壁との間の矛盾を効果的に解決できるという。研究成果はこのほど、国際的学術誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に掲載された。

 実験によると、この半透明性に優れたデバイスは、完全に太陽光のみで駆動する独立型システムにおいて、太陽エネルギーから水素エネルギーへの変換効率が5.10%に達し、同種システムの最高記録を更新したという。

 論文の責任著者である天津大学化工学院の王拓教授は、「この技術が持続的に最適化されれば、より高効率かつ低コストで耐久性のある『人工葉』が誕生する見込みだ。この技術が進化すれば、建築物の外壁や屋根に設置したリ、砂漠に大規模な『太陽光水素生成ステーション』を建設することも可能になる」と紹介した。

 さらに、「太陽エネルギー水分解技術は、水素エネルギー製造の重要な手段となる可能性があり、クリーンエネルギーの普及をさらに促進すると見られる。将来、自動車が太陽光と水による『人工光合成』から得たエネルギーで走るようになれば、真のグリーンな循環社会の実現につながる」と語った。

(画像提供:人民網)

天津大学
 
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