2025年07月14日-07月18日
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「機械の翼」にAIの頭脳 次世代型ドローンが進化中

2025年07月15日

 山間の空き地で、1機の消火用ドローンが空へ舞い上がり、瞬時に高度100メートルに到達した。機体の下には球状の消火弾が吊り下げられ、気流に揺られて左右に動く。火元の真上まで飛行すると、消火弾が正確に投下され、「ボン」という音とともに白い霧状の消火剤が広がり、火は瞬時に鎮火した。人民網が伝えた。

 この訓練で使われた消火用ドローンは、複数機による協調作業やマルチタスクの同時遂行が可能で、一度の投下で30~40平方メートルの範囲を消火できるという。開発元である湖南中電金駿科技集団の劉賽総経理によると、機体にはマルチスペクトルセンサーが搭載されており、濃い煙が立ち込めている場所でも、正確に燃えている場所を検出できるという。劉氏は「AIアルゴリズムにより火災現場の3D動態モデルを生成し、火勢の拡大経路を予測する。精度は92%以上に達し、最適な投下位置を自動的に判断できる」と語った。

「機械の翼」に「知恵の脳」を与え、単なる飛行から「思考する飛行」へと発展させる。それが「95後(1995年以降生まれ)」の若手起業家である劉氏の考える未来像だ。「私たちはドローンを中核とするIoTエコシステムの構築を通じて、産業用民間ドローン分野でのリーダーを目指している」と話す。

 同社が開発した「ドローン搭載型スマート巡検車」は、電力線の巡視や除雪・除氷作業にも対応している。車両上部に設けられた昇降式ヘリポートから、点検用の小型多旋翼ドローンが自動で発進し、あらかじめ設定された航路に従って3キロの電線ルートを点検。その後、大型ドローンが電線に付着した氷雪を除去するという。これらの作業は、リアルタイムでデータを収集・送信・分析・処理するハード・ソフト一体のシステムで行われる。

 劉氏によると、こうした作業において「通信と航続距離は生命線だ」という。巡検車は山間部など通信環境が不安定な地域でも稼働するため、専用の二重通信システムを搭載。無信号や弱信号の環境でも、自律飛行やリアルタイム映像伝送が可能だという。また、ドローンのセンサーはモジュール化されており、タスクポッドの交換により用途を即座に切り替えることができる。

 劉氏は「これまで3~4日かかっていた総合点検が、今では2~3時間で診断レポートまで出せるようになった」と説明。ドローンのスマート化は時代の流れと捉えているが、「これほどのスピードで進化するとは予想外だった。空飛ぶトラックや空中バスも、そう遠くない未来に現実になるはず」と将来の展望を語った。

(画像提供:人民網)

 
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