中国内モンゴル自治区フフホト市は、「中国の酪農の都」と呼ばれ、酪農産業が発展している。市内にある大手乳製品メーカーの伊利集団などでは、産業チェーンの低炭素化が進んでいる。新華社が伝えた。
乳業は第1次産業、第2次産業、第3次産業のすべてにまたがり、飼育、加工、消費などの各段階に関わるため、炭素排出削減の難易度が非常に高い。
十数年前、伊利は産業チェーン全体のカーボンフットプリント調査を始め、上流の牧場など生産の前段階における炭素排出が全体の8~9割を占めることを突き止めた。乳牛1頭が1日に排出するガスには250~500リットルのメタンが含まれ、その温室効果は二酸化炭素の数十倍に達する。
中国乳業協会が発表した「中国乳業品質報告(2025)」によると、2024年には、中国の一定規模以上の乳製品加工企業の主要事業収入は5104億8000万元(1元=約21円)に達し、国内の牛乳生産量は4079万4000トンとなった。産業の質が急速に向上し、国産乳業の競争力は持続的に強化されている。同時に、世界的な気候変動対策という背景のもと、中国の乳業はグリーンで低炭素な発展へと歩みを進めている。
伊利の敕勒川エコ・スマート牧場では、乳牛1万2000頭が「低炭素な生活」を送っている。それを支えているのは「低炭素処方」と呼ばれるもので、海藻粉を混ぜた飼料やプロバイオティクスを配合することで牛の胃を「環境に優しく」する、遺伝子選別による「低炭素牛」を育成し、「げっぷ」由来のメタン排出を減らす、牛糞を回収・再利用して肥料や牛舎の敷料に変える......といった内容が含まれる。
どうしても避けられない炭素排出については、牧場周辺で草を多く植えることなどで相殺する。この方法は炭素クレジットの置き換えになるだけでなく、飼料としても活用でき、農業と畜産業が相互に支援し合い、増産と同時に炭素削減を実現している。
牧場から数キロ離れた場所には、伊利現代スマート健康バレーのメインビルがある。巨大な蝶が陽光の下で羽ばたこうとしているような姿で、「ゼロカーボン」への変革が進行中だ。
液体ミルクの生産工場では、殺菌、配合、包装などの工程が自動化されている。充填機は平均で毎秒11パックの牛乳を充填する。
伊利集団安全生産管理部の環境保護専門家である董暁玲氏は、「生産効率とエネルギー利用効率を高めることこそが、資源の無駄遣いとエネルギー消費を減らす最大の炭素削減策だ。同時に、乳業企業は産業チェーンの高度化を進め、スマート乳業エコシステムを構築し、高品質な製品で消費者の需要に応えている」と語った。
乳業が質の高い発展を目指す過程では、牧場から店舗の棚に至るまで、あらゆる細部で品質を追求し、炭素排出との「闘い」を続けている。
熱エネルギー回収技術で冷熱の循環利用を実現し、年間5000トン以上の標準炭を節約する。殺菌工程の改良によって、900世帯以上の4人家族が1年間に消費する電力に匹敵する電気を節約する。低炭素版の包装資材を導入して牛乳パックを「スリム化」し、炭素排出を20%削減する。こうした努力が積み重ねられている。
董氏は牛乳のパックを手に取り、「この『カーボンニュートラル牛乳』を例にすると、1ケース(10パック入り)で約8.5キログラムの炭素排出を削減できる。それはほぼ1本の木が1年間に吸収する炭素量に相当する」と説明した。
牛乳における「カーボンニュートラル」は、フフホト市の乳業企業が進めるグリーン・低炭素トランスフォーメーションの縮図となっている。
同市には現在、乳業全体のサプライチェーンがあり、伊利、蒙牛という大手乳製品加工企業2社が育つとともに、200社近い一定規模以上の乳製品関連企業が集まっている。

(画像提供:人民網)